誓う傭兵(11〜20)

(11)〜引き裂かれたパーティー(3)〜

・・・・・・ホワイトドラゴンの子供、シロちゃんの視点で・・・・・・
「ジュン・ケイさん、どうしてここに?」
「いや、なに最近仕事がないから久々にクエスト挑戦しようかな、って思ってここに来たんだが・・・・」
「そこに私達がいた」
「そういうことになるね」
「良かったデシ」
するとジュン・ケイしゃんがこっちに来て
「おおー、シロちゃんかー。相変わらず可愛いなー」
そう言ってボクをかかえたデシ。
「そっちこそ、なんでここに、いや、他の五人は・・・・・」
「それが・・・・・」
そうしてパステルおねーしゃんが、ここの洞窟に来て、トラップあんしゃんたちが
落とし穴に落ちたこと、そこに壁から手が出てきて、みんなを壁の中に
引きずり込んだことを話したデシ。
「へぇ、相変わらずあの六人と一匹で冒険やっているのかい?」
「はい・・・・ああでも一人増えました」
そうでし、サードさんの事デシ。
「誰なんだい」
「えっとー、サード・フェズクラインって言って・・・傭兵なんだけど・・・・・」
「サード・フェズクラインだって!!!」
いきなり大声だしたデシ。
「知っているんですか!?」
「知っているもなにも・・・・」
なんデシかねー。
「あまりにも有名だよ・・・・・・。彼は、この傭兵の世界の中では・・・・・・・・」
そうして話しだしたデシ、サードさんの事を・・・・。
・・・・・・運搬業、ノルの視点で・・・・・・
「あっまたここの角に来てしまった・・・・・」
キットンが嘆いた。
捜索始めて一時間、この迷宮を彷徨い続けている。
「とにかく、みんな、早く、見つけなくちゃ・・・・・」
「うーーーん」
キットンが頭を抱えだした。
「そうだ!!!!」
「しっしずかに、またさっきみたいにモンスターが・・・・・」
「こりゃまた失礼」
そう、さっきから最低十匹はモンスターが出てきている。
「左手の法則ですよ。あぁーー、なんでこんな簡単な事に気付かなかったんだ」
「とにかく試してみよう」
「そうですね・・・・」
そして左側の壁に手をつき、歩き始めた・・・・。
・・・・・・盗賊、トラップ(本名、ステア・ブーツ)の視点で・・・・・・
「これのどこが、複雑なダンジョンじゃあない、だー」
俺は叫んだ。
まったくもってこのダンジョン、難しい、難しすぎる。
こりゃあパステル達も苦労してるだろうなー。
「おい、トラップ、またモンスターだぞ」
「ちっ」
クレイの視線がモンスターのいる角の方に向けられている。
「ゴブリンだ!!!」
そう、姿を現したのはゴブリン、だがここは冷静に・・・。
「ギャ!!!」
俺の放ったパチンコが見事眉間に命中する。そこをすかさず、
「とどめだ!!!!」
喉元に剣を突き立てた。このチームワークで出てきたモンスター、全て倒している。
「ぎゃあーーーーー」
耳を覆いたくなるような断末魔。
「これでたぶん・・・・・」
「もう十五匹にはなるぜ」
まったくこのシナリオはデタラメだらけだぜ・・・・・。
「モンスターはワンサカ出てくるし、ダンジョンも複雑・・・・・、このシナリオ、
まるっきしウソだな」
「あぁ、まあ今更そんなこと言ったってどうしようもない」
「はやくあいつらと合流しなくっちゃ」
「なあに、あっちにはサードとノルがいるんだ、自分の心配しろって・・・・」
「上に登る階段を見つけなくては・・・・・」
「そしてこの事教えねえといけねえな」
俺達はまた歩き始めた。
(あぁ、しかしマッピングが・・・・・・・・)

(12)〜引き裂かれたパーティー(3)〜

・・・・・・傭兵、サード・フェズクラインの視点で・・・・・・
緑の森、小道、そこを歩いて行く、崖、そびえ立つ一軒家、あいつの姿、
後ろで聞こえる羽音、疾風、地面と天がまわる、下に広がる風景・・・・・・・。
「・・・・・・・・・・・!?」
階段を下りきったところ、いきなり目の前が真っ暗になる。
ポタカンの油がなくなったらしい。
まぁそのおかげで回想を打ち止めにできたからいいんだが・・・・・・。
予備の油は・・・・もうないか。
ふっと溜息。
「光よ、我が手中に一時の光を、ライト!!」
手の中にほのかな光が出来る。
とにかくあいつらを見つけなくては。
もう二度と、あんな思いはしたくはないから。
マッピング用紙を新しいページに変える。
「ぱーるぅー、ルーミィーおなかぺこぺこだ・・・・おう」
可愛い声が聞こえてくる。
起きたのか・・・・・・!?
後ろを見てみてまた溜息をつく。
寝言か・・・・・。
まってろよ、ルーミィー、今すぐ全員見つけてやるからな。
この階にいるのは・・・・・たぶんクレイとトラップだな。
決意をあらたに、一歩一歩、歩き始めた。
・・・・・・ファイター、クレイ・S・アンダーソンの視点で・・・・・・
「おい、階段だぞ」
トラップの声が聞こえてくる。
「これを上れば・・・・・パステル達に会えるな」
「おう、もうちょっとの辛抱だぜ」
「よし、行くぞ」
急いで階段を上ってみる・・・・・。
最初に見えたのは・・・・・・・・。
『パステル、クレイ、そして他のみんな、私達は→にいきました(左手の法則で)』
「おい、これキットンの字だ!!!」
「でもどういうことだ、この文!?」
「えっ?」
トラップをまじまじと見る。
「だってよ、落とし穴に落ちた俺達はともかくパステル、そして他のみんなだぜ」
「とすると・・・・・他のみんなもはぐれちまったってことか?」
「そう考えるのが妥当だな」
「とりあえず、キットン達だけとでも合流しなくっちゃ」
「よし、行こう」
俺達は歩き始めた。
・・・・・・詩人兼マッパー、パステル・G・キングの視点で・・・・・・
「これは私が知っているだけの話なんだが・・・・・・」
私達は歩きながら話している。
一刻も早くみんなと合流しなくっちゃってことだけど、やっぱサードさんの
話も興味あるからねー。
「順をおって話そう。まずサード・フェズクラインは傭兵界最強の名前だ」
「ええぇぇぇぇーーー!!!」
「静かに!!」
ジュン・ケイに言われて思わず口をふさいだ。
「でもサードさんまだ23だって言ってたし、それにレベルは6だって・・・・・」
「まぁ最後まで聞いてくれ、彼が・・・・いや彼の初代が傭兵界でかなり有名だったんだよ」
「えっ、初代って・・・・・」
「そう、最初のサード・フェズクラインは約150年前に傭兵としてあらわれた」
彼の話を要約するとこうなる(途中何匹もモンスターが出てきて、その分は省略して・・・・)
まず初代、サード・フェズクラインは、(今のサードさんは六代目らしいが・・・・・)
かなりの凄腕傭兵として名を馳せていた。
そんな彼がいきなり山にこもったそうだ。
そしてそれから五年後、二代目サード・フェズクラインと名乗る人が
傭兵界に姿を現したそうなんだ。最初は半信半疑だった人たちも、彼を
雇っているうちに、「彼は本物だ」と絶賛したそうだ。まったく先代のサード・フェズクライン
と同じような強さ、いやそれ以上と言われたそうだ。
そしてまた山にこもり、約五年後、三代目のサード・フェズクラインが
またもや傭兵界に現れたそうだ。
それが続き、四代目には『最強の傭兵』としての地位を固めたらしい。
かの『青の聖騎士』や『デュアン・サーク』と同じくらい、傭兵界では有名だそうだ。
そのうち、『彼の剣を見れることは最高の栄誉と思え、しかし彼と剣を交わせば
もう二度とその剣を見れないだろう』とまで言われたそうだ。
「そんなに凄いんですか・・・・・」
「あぁ、彼とパーティーをくめたことは、シロちゃんと君たちが同行しているくらい
凄いことだよ」
ホワイトドラゴンと同行しているぐらい凄いって・・・・・・。
「それに、サード・フェズクラインは代をおうごとにどんどん強くなっているらしい」
「でも・・・・・・なんで私達と同行してるんだろう・・・・・」
「それはわからない。でもそれなりの理由はあるんだろうね」
「ふぅぅぅぅぅーーん」
私にはますますわからなかった、サードさんが何故私達と同行しているのかを・・・・。
とにかく、みんなと早くあわなくては。
しかし、次にあったのはあの六人ではなく、別の人・・・・・・。
いや、人とは言えないモノだった。

(13)〜引き裂かれたパーティー(4)〜

・・・・・・農夫、キットンの視点で・・・・・・
「うっぎゃぎゃぎゃぎゃ、やめてくださーい」
私の声が洞窟に響く。
先程、階段を通り過ぎて左手の法則で歩き続けていた私達。
不意に前後からゾンビが襲ってきた。
必死にクワを振り回す私、あちこちにゾンビの肉片がとびちる。
「キットン、大丈夫か?」
背中越しにノルが話しかけてきた。
「大丈夫じゃありませ・・・・・・・・あぁぁーーーー」
向こうの角からまたゾンビが・・・・・・・・。
「!!!」
ノルの方からもゾンビが来たようだ。
斧を振り回す音と何かを斬る音が聞こえてくる。
ガシッ
「うぎゃぎゃーーーー」
ゾンビが私の手をつかんできた!!!
うぅ、きもちわるいですーー。
「キットン!!」
その手をノルがひっぺがす。
「ノル、危ない!!!」
こん棒を持ったゾンビの腕が振り上げられる。
次の瞬間!!
「ギャッ!?」
ゾンビが倒れた。
「ノル、キットン。大丈夫か?今行くからな」
声の主を見てみると・・・・・・・。
「クレイ、それにトラップ。ここに来れたんですね!!」
「話は後、そのゾンビどもを追い払うぞ」
二人が駆け寄ってきた・・・・・・。
・・・・・・傭兵、サード・フェズクラインの視点で・・・・・・
長い・・・・・・。この洞窟に果てはあるんだろうか・・・・・。
時間がどんどん過ぎていく・・・・・。
早くしなくては。
いったい何処にいるんだ、あの五人と一匹は。
焦ってくる・・・・・・。
あの時と同じ事がまた起こってしまうのか・・・・・・。
そんなことは絶対にさせねー。
ピタッ・・・・
足を止め、そしてライトの魔法を消す。
あたりが闇に吸い込まれ、何も見えなくなる。
明るさに目が慣れてしまったためだ。
「後は・・・・・感覚で勝負だな・・・・・」
小さく呟き、低くかまえ、柄に手をかけ、ルーミィーをおろす。
そして背中に仕込んである小太刀にも・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!!!!
「双剣舞!!!!!」
かけ声と共に二本の刀を抜き、回転しつつ斬りつける。
ザシュッ、ベタッ、ボタボタ、ビチャッ
何かスライムが落ちるような音がしてきた。
「光よ、我が手中に一時の光を、ライト!!」
闇を切り裂き、また明るさが戻ってくる。
そこには切り裂かれ倒れているゾンビ六匹の姿があった。
「後で埋葬しにきてやっから待ってろ」
そう言い残し、まだ寝ている(こいつはいつまで寝てるんだ?)ルーミィーを
背中にかかえた。
「あとちょっとだ・・・・あとちょっとで全員にあえるんだ」
そう自分に言い聞かせこの複雑すぎる迷宮を歩き始めた。

(14)〜引き裂かれたパーティー(5)〜

・・・・・・詩人兼マッパー、パステル・G・キングの視点で・・・・・・
「ひゃーーーー、そんなになってたんですか!!」
私の叫び声が響く。
ジュン・ケイさんに一応いままでとっていた分のマップを見せてもらったんだけど・・・・・。
これは迷って当然だ。
だってこれあの『王家の塔』(ミモザ姫と行ったところ)といい勝負しているもん。
しかも道しるべなんかないし・・・・。
「私もよく迷わなかったなーって思っていたところさ」
「でも・・・・これじゃあクレイ達も苦労しているだろうな・・・・」
「そうだね、マッパーの君がいないことだし・・・・」
「とりあえず他の六人と会ってないんですね?」
「うん、あってない」
「とりあえず・・・・・階段に行ってみましょうか」
「えっと・・・・・・」
私達は階段に向かって歩き始めた。
そして・・・・(途中何度もモンスターに会ったんだけどめんどくさいから・・・・省略!!)
階段についた。
「とりあえずここに・・・・・」
『クレイ達へ・・・・私達は階段を下りました。ジュン・ケイさんもいるから安心して下さい 
パステル&シロちゃん』
っと、こんなもんでいいかな?
「それじゃあ降りましょう」
「降りるデシ」
そして・・・・地下一階についたんだけど・・・・・。
「また階段デシ」
そう、また下に降りれる階段があったのだ。
「このシナリオはまるでデタラメだね」
そういってシナリオを手の上でおどらせた。
「ちょっと見せてくれませんか、私達のモノと同じかどうか見てみるので・・・」
「いいよ」
シナリオの方はクレイが持っているけど、私も一応読んでおいたからちょっと覚えてる。
「あれー!?」
「どうかしたデシか?」
「えっとね・・・・まったく私達のシナリオと同じなのよ、文も文字も・・・・・」
「なんだって!!?」
これにはジュン・ケイもおどろいたらしい。
「これって断然怪しいよね、まるで私達冒険者を罠にはめているような・・・・・」
「とにかくこの階段をおりてみよう、何もなかったらまた戻ればいいさ」
上の階で書いた文と同じ文を壁に書き、私達はまた、階段を降りていった・・・・。
・・・・・・盗賊、トラップ(本名ステア・ブーツ)の視点で・・・・・・
「あぶなかったなー」
「ええ、本当に助かりましたよ」
「なあに、おまえ達と会えてよかった」
先程のゾンビを追い払い、再会を喜んでる。こんな非常時に・・・・・。そういえば!!
「おい、何でおまえ達パステル達と一緒じゃないんだ?」
「それが・・・・・・・」
そして壁から手が出てきた事、それによってどこかにワープして、みんなとバラバラに
なったことを話した。
「私はちょうどノルと一緒ですからねー。しかし最悪の場合、ルーミィー一人って
場合もあります」
「なっ!!」
「早く探さねーと、あいつらが・・・・・」
「とりあえずこの階を・・・・」
「ちょっとまってください」
何だよ、キットン。こんな時に。
「私達はこの階をくまなく歩いていましたが、パステル達にあっていません。
いや、それどころか声すらも。もしここにいるとすれば私達がつけた目印を
追ってここにくるはずなんです。実際二人は私がつけた文字を見てこっちまで
これたんでしょう?」
「たしかに・・・・・」
「そうだな・・・・」
「で、キットン。どれなら一体どうだって言うんだ」
ノルが聞いてみると、
「たぶん、これは推測ですが、一階だけで最低でも二部屋あると思っているんですよ。
これならそれぞれの部屋にばらまかれる。しかし地下一階は一部屋あるんだと思います。
そして地下一階に通じる階段はそれぞれ一つずつあると思います。
それを偶然クレイ達がこの部屋の方に来た。そう考えればいままでパステル達とも
会えなかったことが説明できます」
「わかった、つまりいったん地下一階に戻って、それから別の階段を
見つけだせばいいわけだな」
「おっ、おまえにしては上出来だ」
「『おまえにしては』は余計だよ」
「急いだ方が、いいと、思う」
「よし、みんな、行くぞ」
「おぉぉーーー!!!!」
まったく・・・・モンスターに気付かれたらどうするんだよ・・・・。
まぁ、これがこいつらだけどな。

(15)〜進展〜

・・・・・・ホワイトドラゴンの子供、シロちゃんの視点で・・・・・・
「ながいデシねー」
「うん・・・・そうだね・・・・」
さっきから地下二階に行く階段を下りてるんデシけど・・・・・・・。
「いつまで続くんだ、この階段は?」
「あのJBのダンジョンの階段みたいに長いですね」
「JBさんデシか、なつかしいデシね」
「あぁ、まったくだ」
そして歩き疲れて、ひとまず休憩しようって時見つけたデシ。
「明かりデシ!!」
「本当だ」
「でも・・・・このダンジョンに明かりなんて・・・・」
「きっと別れた誰かよ!!」
「皆しゃんデシか?」
「行ってみよう」
そして明かりの所まで行ってみたデシ。
そこの奥には・・・がいたデシ。
・・・・・・ファイター、クレイ・S・アンダーソンの視点で・・・・・・
「うっ・・・・・!?」
「なんだこれは!!?」
「ゾンビの死骸だな・・・・・・・」
床に転がっていたモノ・・・・バラバラにされ、たぶん最低でも五人分(?)の
ゾンビのバラバラ死体(元々死体だけど)が転がっていた。
「あきらかに人のなせる技じゃないな」
「あぁ、モンスターにやられたもんだな・・・・」
よく見ていると・・・・・あることに気がついた。
「ちがうぞ、これは誰か人がやったモノだ!!!」
「ばか、一体誰がやったんだよ、こんなことを」
「このゾンビの切り口見て見ろよ」
「おやーー?あぁーーー!!!」
「静かに、キットン」
「で、どうしたっていうんだよ」
「この切り口はどうみても何かに斬られたモノだ、俺達のなかでこんなことを出来るのは・・・」
「サードぐらいしかいねーな」
「うん、パステルやルーミィーには到底無理だ」
「とすると・・・・・このあたりにいるようだな」
「あぁ、まだゾンビが痙攣している」
ピクピクと手が動いている。パステルが見たら気絶するだろうなー。
「でもこのゾンビは一体誰が召喚したんでしょうね?」
「あの呪われた城みたいにこの洞窟が召喚してるんじゃねえか?」
「それは後で分かること、今は全員とあわなくっちゃーな」
とにかく・・・・・パステル達と会わなくては・・・・・。
無事でいてくれよ、パステル、ルーミィー、サードさん。

(16)〜再会〜

・・・・・・傭兵、サード・フェズクラインの視点で・・・・・・
「くそっ!!」
壁に手を打ち付けた。壁にひびが入る。
ダメだ、誰も見つからねー。
「さーどぉー・・・・」
後ろを見てみる・・・・。今度こそ起きたらしい。
「ルーミィー、おなかぺっこぺこだおう」
何の悩みもないような、可愛い声。
いままでの焦りや、ストレスが全て吹き飛んだ。子供って不思議な力があるもんだな。
「ほら、これ食え」
バックから出したチョコレートを食べさせる。
「ウギャーーーーー・・・・・ヤメテクダサーイ」
「!!!!」
「きっとぉんの声だおう」
「あぁ、急いだ方がよさそうだな」
「行くおう」
「しっかり捕まってろよ、ルーミィー」
ルーミィー方に爪を立てた(まぁ痛くはないが・・・・)のを確かめて。
「風よ、疾風となり我と共に大地を駆け抜けよ、ダッシュ!!!」
後には、捨ててあるチョコレートの銀紙が残っていた。
・・・・・・運搬業、ノルの視点で・・・・・・
「今度こそマジでやべーぞ」
「頑張れ、トラップ」
さっきと同じくゾンビが現れた。
しかも次々と出てくる・・・・・・。
「とにかく斬って斬って斬りきざんとけば、向こうも諦めるだろう」
「でも・・・・いくらなんでも数が多すぎる」
またゾンビが増えたみたいだ。
「だーー、くそっ、やっぱ僧侶がいたほうがいいぜ」
「ないもん、ねだったってどうしようもねーぞ」
「おまえら!!!ふせろ!!!」
どこからともなく声が聞こえてくる。
これは・・・・・サード・・・・・・・!?。
「わかった!!」
クレイが返事をする。
そして全員かがむと・・・・・・・。
「千・人・殺!!!!」
また声が聞こえ、ゾンビがどんどん倒れていく。でも姿は見えない。
そして全部のゾンビが倒れたとき、
「サード!!!」
いきなりサードさんの姿が現れた(本当に透明人間が急に現れたがごとく)
「ルーミィーも!!」
「おまえら、無事だったのか!!!」
「話は後だ!!!」
サードが一喝。
「あのゾンビを追えば、召喚したヤツに会えるはずだ、いくぞ」
見ると数匹のゾンビが、あたふたと逃げていくのがわかる。
「そうだな・・・・パステル達にも会えるかもしれない」
後はパステルとシロだけだ。
希望の光が、俺達に射してきた。

(17)〜悪魔〜

・・・・・・詩人兼マッパー、パステル・G・キングの視点で・・・・・・
「うわーーーー!!!」
「何だ・・・・・これは・・・・・・」
それがその部屋に入って最初の言葉だった。
入り口はだいたい横五メートル、高さは・・・・・・・十メートルはあるだろう。
そんな・・・・まるでドラゴンにやられたような縦穴を抜けて・・・・最初に見たモノ。
「これは・・・・・ガーゴイルの像か!?」
「ガーゴイル!!?」
そう、そうとう広い広場(?)にだいたい二メートル位の感覚でその像がおいてあった。
だから最初、『そいつ』に気付かなかったんだろう。
「いっぱいあるデシね・・・・」
「うん・・・・・そうだ・・ね」
私は何だか不安になってきた・・・・・このガーゴイル、全部がいきなり動き出すんじゃないのかって。
「今にも動き出しそうだな・・・・・」
ジュン・ケイも同じ事を考えたんだろう、そう言った時、最初、シロちゃんが『そいつ』見つけた。
「像が動いたデシ!!!」
急いでシロちゃんの小さい手(足?)が指した方を見てみる。
それは他のガーゴイルの像とはちょっと違っていた・・・・・色、形、それになにより、
後ろを向いていたのだ。
チャカッ
ジュン・ケイが剣に手をかける。
私もショートソードに・・・・・・。
そして、振り向いたその顔を見た私は、気絶寸前で踏みとどまった。
「悪・・・・・魔・・・・・!!!?」
そう、その顔は、よく本などで見ていた・・・・・悪魔そのものの顔だった。
・・・・・・農夫、ノイ・キットンの視点で・・・・・・
「あぁぁーーーー!!!!」
「これは!!」
「ぱーるの文字だおう」
そうです、先程のゾンビを追っていたところ、パステルの書いた文字があったのです。
「おい、この文に書かれている『ジュン・ケイ』ってのは!!?」
「傭兵ですよ、若くしてレベル三十になったっていう・・・・・腕の立つ傭兵です」
「んな事話している場合じゃねぇ、ゾンビどもはそっちに向かったんだからよ!!」
トラップが一喝!!
ホント、パステルの事になると、目の色違いますね。
まぁ黙っておきますけど。
「ってーことは、パステル達の向かった方向に、そのゾンビどもを召喚した
ヤツがいるってわけか」
「まぁ、そういうことになりますかねー」
「ジュン・ケイ、いるから、大丈夫、思うけど」
ノルがぼそっと呟く。
「まぁなー」
「たしかに」
「そうですね」
「そうだおぉー」
と全員・・・・いや一人を除いて同意。
サードさんは何かを考えている様子。
「とにかく早く行ったことにこしたことはないな」
とクレイが決断。
「おい、全員俺の肩に手をおけ」
「へっ!?」
全員がサードを見る。
「どうしたんだよ、急ぐんだろう!?」
「とにかく俺の肩に手をおけ!!話は後だ!!!」
その迫力におされ、全員がつかまる
「最高三人まではやったことはあるんだが・・・・・これだけの大所帯だったら初めてだが・・・・」
「いったいどうしたんだよ、早くいかねーと・・・・・・・」
「ジュン・ケイいるから大丈夫だっ・・・・・」
「いいや、もって十分ってところだな」
「へっ!!?」
何のことをいっているんですかね?
「相手はそんじょそこらにいる魔導師やモンスターじゃねぇ、相手は悪魔だ!!」
「はぁぁーーー!?」
全員が頭の中に?を百個ぐらい並べた。
「風よ、疾風となり我と共に大地を駆け抜けよ、ダッシュ!!」
そしてものすごいスピードで階段を下り始めた・・・・・・。

(18)〜悪魔(2)〜

・・・・・・パステル・G・キングの視点で・・・・・・
「人間か・・・・・!?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!」
私は声にならない悲鳴を上げた。
その声、まさに私が小説を読んでて想像していた悪魔の声、そのものだったのだから。
自分が想像していた声そのものが出てきたから驚いたが、それ以上に
まさかその悪魔にあえるとは・・・・・・。
「まぁいい、ちょうど腹が減っていたところだ・・・・・・メシにするか・・・・・」
立ち上がり、一歩一歩近づいてくる。
そこで悪魔の姿をはっきりと見れることが出来た。
背はだいたいノルぐらい。背中には黒い羽がついている。
手は細長く、顔は紫色をしていて、それにどことなく人間を連想させてしまう顔・・・・・。
ギリッ
ジュン・ケイが剣を握り直す。そして額から汗がしたたり落ちている。
「抵抗しても無駄なことだ・・・・・大人しく俺の腹の中におさまれ・・・・・」
「危険が・・・・・危ないデシ!!!」
シロちゃんの目が緑に変わっている。あきらかに敵だということが証明された。
「そいつはホワイトドラゴンの子供か!!?」
悪魔が大声をあげる。
その声が・・・・・・錆びた鉄を百本ぐらい擦り合わせたような・・・・何とも形容しがたい声。
「成る程・・・・・そのホワイトドラゴンの首があれば、俺もこんなちっぽけな
ところにいる必要もなくなるワケだ・・・・・・・」
「???」
いったい何のことを言っているのか分からなかったがだいたいの察しはついた。
「そんな・・・・・・シロちゃんは絶対に殺させないは!!」
「ならば守れるか?おまえごときにホワイトドラゴンの子供を?」
正直自信などなかった・・・・・そのへんのモンスターならいざ知らず、
相手は・・・・・・本物の悪魔なのだから・・・・・・。
・・・・・・傭兵、サード・フェズクラインの視点で・・・・・・
「うわわぁぁーー」
「どっしぇーーーー」
「おおおぉぉぉぉーー」
「きゃははぁぁーー」
全員の叫び声が聞こえてくる(約一名楽しんでいるようだが・・・・)
「いったい何なんだよ、これは?」
「わかりましぇーーーん」
「うるせい!!集中できねぇじゃねえか」
「だから何なのかきいてるんだけど・・・・・」
「これって、魔法、なのか?」
「だぁぁぁーー、後から言ってやっから黙ってろっていってるだろう!!!」
「うわぁぁぁぁーーー」
今度は悲鳴。いきなり階段が終わり、正面の壁に激突した。
もちろん後ろの四人も。
「いってぇーーー」
全員が倒れ込んでいる・・・・・。しかも俺の上に。
「おい、いつまで寝てんだ、いいかげん俺の上からどけ!」
「おいっ、あれ!!」
一番上に寝ていたんだろう、最初に立ち上がったトラップが横に続いた道の方を指した。
縦十メートルはあろう、縦穴の奥に見えていた人・・・・・・・・。
「パステル!!!」
そう言ってトラップが駆け出した。
もちろん他の全員も。

(19)〜悪魔(3)〜

・・・・・・詩人兼マッパー、パステル・G・キングの視点で・・・・・・
「パステル!!!」
いきなりあの縦穴の方から声が聞こえた、その言葉の主は・・・・・・・。
「トラップ!!!」
こうして見ると何だか懐かしいハデハデの服。
「パステル!!」
「ぱーるぅー!」
他のみんなもトラップの後ろからつづいてきている。
もちろん私もかけよる、だが・・・・・・・・。
「五月蠅いやつらだ・・・・・おまえらも後から喰ってやるから黙ってろ」
そういう悪魔の手には、暗い、そこだけに闇の空間が出来たような球状のものができていた。
「みんな!!!来ちゃダメ!!!!」
私は夢中で叫んだが・・・・・その声はみんなに届かなかったようだ。
そして悪魔が手の中の闇を投げる、縦穴のちょうど上あたりに。
ガラガラッッガーーーン
上から大岩が落ちてくる・・・・・・。その下にはトラップが・・・・・・・。
「トラップーーーー!!!!!」
私はそれはそれは夢中でトラップにかけよった、でも実はそんな心配いらなかったんだな。
トラップは上から落ちてくる岩をすべて避けながら来ていた、しかし・・・・・・。
「パステル!!よけろ!!!!」
見ると上から大岩が落ちてきて・・・・もちろん私はトラップ何かじゃない
から避けきることは出来ない。
「きゃぁぁぁぁぁーーー!!!!」
絶叫、目をギュッと閉じる
「パステル!!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!!!!?
ううっ
何かが私の上に乗っている・・・・・・。
これは・・・・・・人!?
たしかに岩じゃないよなー。
それに何か唇のあたりに変な感触が・・・・・・・・。
前にも一度、こんな感触があったよーな、なかったよーな・・・・・・!?
ええっ
目を開けてみる。
最初それが誰だがわからなかったが、その明るい茶色の目からそれがトラップ
だというのがわかった。
でも顔がわからないくらい接近するなんて・・・・・・・。
ガバッ
急いで起きてみる。
そこにはどこかぼーっとした目をしていたトラップの姿が・・・・・・・。
まさか、まさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさか・・・・・・・・・・・!?
これって・・・・・キッ・・・・キ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ス!!!!!?
・・・・・・ファイター、クレイ・S・アンダーソンの視点で・・・・・
「クソッ!!」
さっき出来たばかりの壁に手を打ち付ける。
「あわわわわ、どうしましょう、パステルが、パステルが・・・・・・」
キットンはいままでにない慌てようだ(いつもだが)
「パステル、大丈夫、かな」
最後に見たあのシーン。パステルが大岩の下に・・・・・・・・。
「おい、てめぇら、そこどけ」
後ろを見るとサードが刀を持っている(鞘ごと)
「いったいどうするんですか!!?」
「その岩ぶっこわす」
ことなげもなくそう言った。
「無理ですよ、いくらあなたでも」
「いいからどくんだ!!」
押し殺した声でそういった。銀色の目が不気味に光る。
「クレイ」
キットンにそう言われてサードの後ろにまわる。
「いいか、上から岩がまた降ってくるかもしれないが、まっすぐ走るんだ、
あいつらを助けたいならな」
無言でうなずく、しかしこれだけの大岩が崩れるわけはないだろう。
内心ではそうは思っていたが、だったら一体自分たちはどうすればいいんだ?
サードが失敗したらこのまま黙ってこの場にいろと、このままパステル達を
見捨てろと、そんなことは絶対に出来ない、自分がいくら無力だとしても・・・・・。
刀は鞘に納めたまま、その鞘の柄に近い部分を左手に持ちそれを頭の上に持ち上げる。
そして柄に手をかけた・・・・・・・、目を閉じ深呼吸。
そして目をかっと開き声と共に抜刀した。
「地・断・閃!!!!」

(20)〜ほのぼのとした風景〜

ズドドドーーン
再び岩が崩れ始めた、そして、また私の頭上に・・・・・・・・。
「パステル!!」
クレイの姿が見えた、こちらに向かって走ってきている。
「ちっ!!」
後ろから来たサードがジャンプ一番、落ちてくる岩を粉砕した。
すっごーい
でも私は依然意識がとんだままで・・・・・・・・。
「おい、パステル、どうしたんだよ。しっかりしろ」
クレイが私の肩をつかんで揺さぶっているのがわかる。
うん、わかるけど・・・・・何か体が動かないというかなんというか・・・・・。
「トラップ、まったくどうしたんですか?早く立って下さいよ」
トラップも同じようになってるらしい
「仕方ない」
短くこういったクレイが私を抱きかかえて歩き始めた。
もう岩は落ちてこない。
「ったく、どうしたっていうんだよ・・・・・」
ちょうど中央あたりに運ばれた私、となりにはトラップが・・・・・・。
その瞬間、はっと意識が冴え、私はトラップにくってかかった。
「ちょっとー、トラップ!!何て事してくれるのよ!!!」
「うるせー、いくら初めてだからってそんなにイヤか、俺とキスしたことが?」
「キ・・・キスーーー」
全員が叫んだ。
「なっ・・・・・」
「本当ですか?」
「ぱーるぅー」
私達はパーティーの目線を一斉に浴び、それでも口論を続けた。
「いっとくけどね、初めてじゃありませんよーだ。そういうトラップこそ初めてじゃあ・・・・」
「何!!?てめーみたいなお子さまもキスぐらいしてんのか、そりゃー驚きだね」
「何よ、文句あるの」
「何だよ」
「いい加減にしろ!!」
そこをサードが一喝、私達は黙り込んだ。
「おまえらなー、あいつを見てもまだ喧嘩続ける気か?」
といって指さした方向、ありゃま、本当に忘れていたけど悪魔の姿があった。
「あれって・・・・・悪魔か!!?」
「うん・・・・そうみたいよ」
「パステル、トラップ。それ知っててラブラ・・・・・・」
「クレイ!!だれがこんなガキと・・・・・」
「黙れって言わなかったかなー?」
サードのさっきより怒った声、こりゃぁやめた方が身のためだな。
「くっくっく」
悪魔の笑い声が聞こえてくる。
「今まで何十人という人間が来たが・・・・こんな馬鹿げたやつらは始めてみた」
と、そこまで言って高笑い、部屋中に笑い声が響く。
「品のねー笑い」
トラップがボソッと呟く。
その声が聞こえたか聞こえていないか、ふと止まる悪魔の笑い。
「まぁいい、今夜のメシは豪華なモノになりそうだからな」
「誰がおまえの腹ん中に入るって?」
サードの声、でも何かいつもと調子が違う。
「この人が・・・・・・サード・フェズクラインか?」
すぐ近くまで来たジュン・ケイが私に聞いた。
「うん・・・・そうよ」
「成る程・・・・」
ジュン・ケイの何だか不思議な表情、嬉しいようなそれでいて怖いモノを見たような・・・・・・。
「おい、悪魔!!」
「何だ!?」
悪魔に平気で話しかけるサードさんって・・・・・・。
「おまえに聞きてぇ事があるんだが」
無言でサードを見つめる悪魔(ううぅ、怖いよー)
サードは一息つき、
「二対、四枚の羽のある悪魔、知らねーか?」

 1999年3月21日(日)09時07分20秒〜4月05日(月)18時06分24秒投稿の、PIECEさんの長編その2です。

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