誓う傭兵(1〜10)

(1)〜あの人〜

「ハッピーバースデー、パステルー」
全員、つまりこの場にいる八人と一匹が声をそろえて言った。
あの五人以外の三人はマリーナ、アンドラス、リタの三人。
そう、今日は私の誕生日、私もやっと十九歳になったのだ。
ううう、あと一年で二十歳か・・・・。それまで絶対生きてやるー。
それにあのこともあるから・・・・。

みんなが猪鹿亭の中でドンチャン騒ぎをやっている時に、私は外にいた。(私の誕生日なのに)
「おい、パステル」
振り向いてみると、ビールを片手にクレイが立っていた。
「パーティーの主役がそんなところでぼーっとしてたらいけないだろう」
「ううん、ちょっとね」
「どうしたんですか?パステル」
「ぱーるぅー?」
ルーミィーとキットンも来た。
「いや、あの人との約束、後ちょうど一年だったなーって思って」
「そういえば・・・・そうだったな」
「おい、そこ何しゃべってんだ、早く来いよ」
「あぁ」
「ほらほら、パステルも早く」
マリーナがこっちに来た。
全員が中に入る。
「何をしゃべっていたんだい?」
アンドラスさんも聞いてきた。
「そういえばマリーナとアンドラスは知らないんだよね、あの人の事」
「あぁ、あいつの話していたのか」
「そういえば、あと一年だな、約束の日まで」
ノルも話に加わった。
「もしかして・・・あの時に来た傭兵の事?」
「そうそう、リタはその後一回会っただけだもんね」
「でもあれって「会った」っていうよりこっちが一方的に「見た」って感じだったよな」
「ねえねえ、もったいぶらずに教えてよ」
「うん、いいわよ」

そして私達は話し始めた、あの人の事を・・・・・
一年前のこの日、この場所で会ったあの人の事を・・・・

(2)〜出会い〜

「ハッピーバースデイ、パステル」
全員、つまりこの場にいる六人と一匹が声をそろえて言った。
あの五人以外の一人はリタ。
そう、今日は私の誕生日。私も十九歳になったのだ。

「そういえば去年の誕生日祝えなかったもんなー」
「そうですね、王家のお家騒ぎにつきあわされていましたからね」
「そのころ私は船の上だったし」
「まぁ仕方なかったからな」
「でもすまなかったな、全然祝えなくって」
「ううん、ギアがいたから・・・・」
「恋人に会えなくてさびしいか?」
とトラップがからかってきた。私が何て言うか困っていると、
「そんなこと言うんじゃない」
とクレイが一喝
「そっちだってミモザ姫相手じゃたいへんだったでしょう」
「そうそう、あの姫さん人使い荒かったからなー」
「ぎゃははは、トラップなんてそうとう怒ってましたからね」
「ルーミィーもパステルいあくてさびしかったんだお」
「あははは、随分もりあがってるね、ビールのおかわりいる?」
「樽ごと持ってこい」
「ははは、それもいいな、そうだ、パステルもどうだ?」
「それじゃあちょっと・・・・」
「ルーミィーも」
「だめだ」
「ぶぅぅぅぅーーー」
「けっエルフは長生きできるんだろう、大人になったら俺達よりかいっぱい飲める
じゃねえかよ」
トラップがさもうらやましそうに言った。
その時
バタン
猪鹿亭のドアが開いた。
そして入ってきたのは・・・・
年齢はたぶん二十五くらいの男。
銀(白?)の髪がちょうど首の所まで伸びていて、不思議な輝きを持ったこれまた銀の瞳。
青のレザーアーマー(めずらしいよね、青なんて)。
そして何より目を引いたのは腰に帯びた刀。
トラップなんてお宝を見つけたような顔になっていた。
少々柄が古めかしいが、鞘は真新しい。
刀って私は見るの初めて。他のみんなはどうなんだろう?
「あの、本日は貸し切りなんですけど・・・・」
リタがおそるおそる言った。
「そうか、ここで待ち合わせをしていたんだが・・・・」
男を少し考えて、
「じゃあ外で待たせてもらう」
そう言って・・・・外へ出ていった。

「何だったんだ、あの男は?」
「うん、時々来ているみたいだけど・・・・傭兵みたいよ」
「それにしてもあの刀、ずいぶん珍しいな」
「私も思った」
「何か不思議な刀だったデシ」
「たぶん売れば十万ゴールドはいくんじゃねえか?」
「おい、何しゃべってんだよ、今日はパステルの誕生日だぞ」
「おお、そうだったな」
「おーいリタ、何かつまみをもってこい」
「はいはーい」
そして夜は更けていく。

(3)〜奇襲山賊〜

私の誕生日から二週間後、私達はサバドに向かっていた。
理由は、そこからちょい南に行った所に何か洞窟があるらしくって、そこに
クエストの為に行っている。
サバドに行くのは久しぶりの事だ。
で、今はズールの森を乗り合い馬車で通過しているところ(私達の他に
行商人風の男と、二人組の、冒険者みたいな人がいた)
そこで事件がおきた。
もうすぐでズールの森の停留所ってところでいきなり乗り合い馬車が
馬のいななきと共に右の方に横倒しになったのだ。
右からクレイ、ノル、私、ルーミィー&シロちゃん、トラップの順に座っていた私達(キットンは向かい側の方にその三人と座っていた)
もちろん右の方が下になったわけで・・・・。
「おっ、重いーーー」
クレイの悲痛な叫び声が聞こえてきた。
「何だ何だ?」
「ちょっとトラップ、どいてよね」
「とりゃー、どいてよねー」
「わーったわーった、何があったか見てきてやるよ」
と言って上についたドアから出ていった、その時
「ぎゃあーーーー」
御者さんの叫び声が聞こえてきた。
何?何?何がおこっているの、
「やべぇ、クレイ、ノル、早く来てくれ」
「わかった」
すぐにクレイとノルが出ていく、その後を追いかけてあの二人の冒険者も。
「トラーップ何がおきてるの?」
「山賊だ、山賊」
「えっ、山賊ーっ?」
いそいでドアからよじ登ってみる(ルーミィーと一緒に)そして・・・・
何てこった、1、2、3、・・・・十人?
その十人の山賊がそれぞれ武器を持ちクレイ達に襲いかかっている。
そして彼らの足下には、さっき叫び声を上げた御者さんが・・・・。
停留所の方からも何人か冒険者みたいな人たちが来ているみたいだ。
「私も・・・・」
そう呟いていそいで馬車から降り、ショートソードを抜いた。
でも相手は戦いのプロ(こっちもだけどね)
クレイ達も苦戦しているようだ。
でも相手は山賊といっても人間、さすがに殺すことはできない。
「うっ!?」
そう思ったとき私の首筋に、何か冷たいモノがあたった、先のとがって何だか痛い・・・・。
これって・・・・ダガー?
「きゃーーー、クレーーイ、トラーーーップ、助けてーー」
みんながこっちを向く、
「パステル!!」
クレイがこっちにやってくるけど・・・・
私にダガーを突きつけた男は、森の中に入っていった、私を小脇に抱えて。
追ってきているのはクレイとトラップ。
「おい、止まれ」
その山賊が言った。
もちろん、クレイ達も止まる・・・・。
「この女の命が欲しければな、このまま俺を見逃せ」
「パステルを、パステルをどうするつもりだ」
人質としてこのまま連れていく、まあ殺しはしないから安心しろ」
「んなの信用できるか!!」
とトラップったら相手の手に(ダガーを持っている方の)パチンコで石を当てた。
山賊の手から、ダガーが落ちる。
「この、クソガキがー!!!」
逆上した山賊は、何とダガーをすぐ拾い、頭の上に振りかぶった。
私を殺するもりだ!!
「やめろーーーーーっ!!!!」
トラップの声が聞こえる
「やだね」
と言った次の瞬間、男はダガーを振り下ろした、私の胸に!!
私は目をつぶった。
ズバッ
何かが切れる音がした・・・・。
私、刺された・・・・・のかな・・・・・。
痛みはないけど・・・・・。
おそるおそる目を開ける・・・・・。
私は目を疑った・・・・。
あのお気に入りの白のレザーアーマーが赤く染まっている。
これ、私の血なんだ・・・・。
そうか、死ぬって、こんなに痛くないもんなんだ・・・・。
薄れていく意識の中で私を呼ぶクレイ達の声が聞こえてきた。
「サヨナ・・ラ・・・ミン・・・・ナ」
私が微かにそう言うと、トラップの呆れた顔が目に映った。
最後まで薄情なヤツ。

(4)〜新しい仲間〜

ガタンッ・・・・ゴトッ・・・・
私は何かが揺れる音で目が覚めた。
いや正確には意識が戻っただけで目は開いていない。
記憶を追っていく・・・・・。
そうか・・・私死んだんだよね。
これは天国への馬車かな。
いや、揺れるほど設備が悪いから、地獄への馬車かな?
そうか・・・・モンスター殺す事もやっぱり罪になるのかな。
もっと生きたかったなー。
うっすらと目を開けてみる。
「あっ気がついたみたいですよ、パステルが」
なんともマヌケな声が聞こえてきた。何だが聞き覚えのあるような声・・・・。
「おっ、やっと起きたか」
また聞き覚えのあるような声が聞こえてきた・・・・。何かトラップの声に似ているような・・・。
えぇ!?
急いで上半身を起こしてみると
「痛っ!」
誰かと頭をぶつけた、その相手を見ると・・・・クレイだった。
「えっ!?えっ!?」
見るとさっき乗り合い馬車に乗っていたメンバー+あと二人がいた。
「何で・・・・まさか・・・・みんな死んじゃったの?」
そう言ったら、全員が不思議な顔をした。
「はぁ、パステルどうしたんだ?俺達は生きているぞ」
「えっ・・・でも私あの山賊に刺されて・・・・・、ほら血だって」
「それは山賊の返り血だよ、パステル」
ノルが言った。
「えっ、だって、そんな、あれー?」
私が混乱していると、
「パステル、いいか、状況を整理するぞ」
「うん」
「まずおまえは山賊に森のちょっと奥の方に連れて行かれた。そこで
トラップがパチンコを山賊の手に当てた、逆上した山賊はおまえを刺し殺そうとした」
「そうよ、あの時確かに私刺されたもの」
私が反論すると(自分が死んだと反論する私って・・・・)
「その時、この人に助けられたんだ、おまえは」
「えっ!?」
クレイの指さした方を見ると・・・・。
青のレザーアーマー、腰に帯びた刀、不思議な銀の瞳・・・・・。
「あぁぁーーーー、この人って」
「ぱーるのたんじょーびにいたひとだおう」
そうそう、たしかにそうだけど・・・・・・。
彼の髪の色が違っていたの。
前は銀色だったけど今は茶色。
「でも髪の色違わない?」
「ああ、これね」
彼は初めて口を開いた。
そこで私は少し何か違う?って思った。
声の感じが違っていたようなきがしたの。
前はちょっと冷たい感じがしたけど今は気のいい人みたいな声。
まあたった二言しか声を聞いていなかったし、もう二週間前の事だったし・・・・。
私はあまり深く考えないようにした。
「髪を染めていたんだ、都会ではけっこうはやっているよ」
うんそれは私も知っている。
何か虹色に染めていた人もいたし・・・・。
「こんな仕事をしていると、どうもストレスがたまってね、気分転換に染めていたんだ
あぁちなみにこれが地毛ね、脱色をしたばかりだけど・・・」
「へぇー、そうなんですか・・・・えっと・・・」
「あぁ名前ね、サードだ、サード・フェズクライン、サードかフェズって呼んでくれ」
「じゃあサード、どうもありがとうございます」
そういうと手を軽く振って「いやいや」と照れくさそうに言った。
「でもあの時はびっくりしたよ、ダガー振り落としたと思ったら、いきなり山賊が倒れて
それでパステルも気絶しちゃって・・・・」
「そうそう、あんたよく追いついたよな」
「まぁ、ね」
それ以上は何も言わなかった。何かあるのかな?
「あんた傭兵だろう、レベルはいくらなんだい?」
トラップが聞くと
「まだ六だ、冒険者を始めたばかりだからね、そっちは?」
というぐあいに会話がはずんでいった私達、いつの間にかエベリンについていた。
「あんたたち、これからどこに行くんだ?」
「ちょっとサバドの方に・・・・」
「ひょっとして・・・・そこからちょっと南に行ったところの洞窟かい?」
「そうそう、何で知っているの」
「俺も行くんだよ、そこに」
「へっ!?」
みんなが驚いた顔をした。
「じゃあ一緒にいきませんか、旅は道ずれといいますからねー」
キットンが切り出した。
「俺は傭兵だからそういうのはあんまりだめなんだが・・・・たまには
そういうのもいいかもしれねーな」
サードがそう答えた次の瞬間、私達が喜びの嵐になったのは言うまでもない。

(5)〜それぞれの夜(1)〜

・・・・・・傭兵、サード・フェズクラインの視点で・・・・・・
「ふぅ」
風呂からあがりさっぱりした気分になった・・・・。
何故あの時あいつらとの同行をあっさり「OK」と言ったのだろうか・・・。
もう二度と、だれとも組むことはないと、心に誓ったはずなのに・・・・・。
やはりあの六人がどことなく『あの二人』を連想させるからか・・・・。
もちろん一人一人で見れば全く違う。
しかし一人一人のある部分、ある部分を組み合わせると・・・・。
俺の中の『あの二人』を連想させてしまう。
それに俺と関われば命だって・・・・・。
いや、深く考えるのはよそう。
「星でも見に行くか・・・・・」
そう呟き、俺は安宿の出入り口に向かった・・・・。
・・・・・・盗賊、トラップ(ステア・ブーツ)の視点で・・・・・・
「おい、トラップ、サードさんしないか?」
クレイが俺に聞いてきた。
「さっき風呂にいったはずだろう?」
「それがいないんだよ」
「だから?」
「いや、あの人にいろいろ聞いてみたかったなーっておもってさ」
「俺も」
「私もです」
こいつらって・・・・・。そんなにあいつのことが気になるのかねー。
「あっそ、探しに行って来れば?」
「げっ何て薄情なヤツ」
「今頃気付いた?」
そう言うと、あいつらは何も言わずに外に出ていった。
まったく・・・・一体何を考えているんだか。
それにしてもあの傭兵・・・・・。
怪しいな、断然。
まず声が違っていた。
前は冷たそうな声をしていたが、今は気のいいやつみたいな声だ。
それに・・・・あの時あきらかにウソを言っていやがったし・・・・。
あいつもクレイ同様、ウソをつけねー性格なんだろうな。
でも何であんな事をウソつく必要があるんだ・・・・・・。
うーーーん、謎だ。
・・・・・・詩人兼マッパー、パステル・Gキングの視点で・・・・・・
「ぱーるぅー、ルーミィーおなかぺっこぺこだおう」
ルーミィーのこの言葉で、私は気付いた。
そうだ・・・・、まだご飯まだ食べてないんだ・・・・。
「ルーミィーちょっと待っててね、今からクレイ達呼んでくるから」
「わかったおう」
めずらしく文句を言わないルーミィーを背に、私はクレイ達の部屋に行った。
でもそこにはトラップしかいなかった。
「あれ、トラップクレイ達は?」
「今サードのやつを探している」
「えっサードさんいないの?」
「らしいな」
そう一言言うと、ベットに寝ころんだ。
「そう・・・・。そうだ、私も探しに行くから、トラップ、ここにみんなが戻ってきたら
すぐにご飯食べに行くって言って」
トラップは返事をする代わりに、軽く手を振った。
「じゃあ行って来る」
「せいぜい迷わないように注意しろよ」
私はとーーーぜん無視し、部屋を後にした。
・・・・・・ファイター、クレイ・S・アンダーソンの視点で・・・・・・
「おっかしいな、どこにいるんだろう・・・」
今俺は宿屋の中を捜索中。
キットンは二階、ノルは三階にいっている。
ここの宿、ノルでも大丈夫らしい。
俺が今捜索しているのは一階。
どこにも見あたらないなー・・・・。
外!?
そうひらめいた俺は、急いで外に出てみた。
「サードさん!」
出たところのすぐに、サードさんがいたので、呼びかけた。
「ああ・・・・たしかクレイだったよね、俺のことは呼び捨てでいいよ」
「はい・・・・じゃあサード」
「何のようだ?」
「いや・・・・そろそろメシだからさ・・・・」
まさか話を聞きたいだなんて、とても言えないから、そう答えた。
(結果的によかったけどさ・・・)
「そうか、それじゃあ」
とこっちに近づいてきた。
「何していたんですか?」
「星を見ていた、ただそれだけだ」
「何でですか?」
「あんたも何かあったときは星を見上げるといいよ、その時、何かが見つかるから。
まあ俺にとって星は心の落とし物探偵役ってもんだ」
そう言うと、サードは家の中に入っていった・・・。
さっきの台詞・・・・・何だったんだろう?
変わった人だな。

(6)〜それぞれの夜(2)〜

・・・・・・魔法使い、ルーミィーの視点で・・・・・・
「ばりばりむしゃむしゃもぐもぐごっくん、ぷはー」
みんな何をはなしているんかー?
ルーミィーわかんないおう・・・・。
・・・・・・運搬業、ノルの視点で・・・・・・
「へぇー、そんな大変なクエストをこなしてきたのか・・・・」
「そうそう、クレイなんか笑い病にかかったり、オウムにされたり・・・。」
「おい、トラップ!!」
「いいじゃん、事実なんだし・・・・、それによー、最初の頃は竹で作ったアーマー、
竹アーマーだったんだぜ」
「あはは、そんなものどこに売ってあるんだ?」
「何とクレイ君自作さ」
「こらっ、いい加減にしろ」
クレイとトラップがいつも通り喧嘩している。
まぁ翌日にはころっと忘れるからいいけど・・・。
「それでですねー、サードさん、あなたは何故傭兵なんかやっているんですか?」
うん、それはおれも気にしていた
「昔ね、いろいろとあってさ」
と曖昧な笑みを浮かべてこたえた。
「ほう、それはどんな?」
そう言われると、軽く手を振った・・・・。
たぶんこたえたくないのだろう・・・・。
「パーティー、組んだこと、ある?」
おれもきいてみた。
「いいや、ないんだ・・・・。ずっと傭兵でね」
そこでおれは何かひっかかった、
何かウソをついている・・・。
あの時と同じく・・・・・。
・・・・・・農夫、ノイ・キットンの視点で・・・・・・
「しかし、あの人いい人ですねー」
私が部屋に帰ってすぐに言うと・・・。
「いいや、あいつかなりくせーぞ」
そう言うとノルもうなずいた。
「ウソ、ついてる」
「何だって!?」
クレイがいかにも驚いた顔で聞いた
「さっきの夕食の時にだ」
「何をデス!?」
私は俄然興味がありますねー。
「夕食の時にパーティー組んでいないっていっただろう?」
「はい」
「ありゃあウソだね」
「とすると・・・パーティーを組んでいたってことですね」
「ああ、あいつもクレイ同様、ウソをつけない性格なんだろうな」
「でも何で隠す必要があったんですかね?」
「それはあいつの過去にあるんだろうな」
「とするとさっき過去を隠したのも納得いきますね?」
「おいおい、そのへんにしとけよ、人の過去をそんな探るもんじゃないぞ」
ふっふっふ、私は私なりに推理してみる事にしますか。
・・・・・・ホワイトドラゴン、シロちゃんの視点で・・・・・・
「眠れないデシ」
そうなんデシ、さっきから何度も寝よう、寝ようとしてるんデシけど・・・・。
それでも眠れないデシ。
「シロちゃん、私と外に行かない?」
「はいデシ」
そう言ってパステルおねーしゃんと一緒に外に出たデシ。
「あっサードさんデシ」
外にはサードさんがいたデシ。
「シロちゃん、犬のふりしているのよ」
「はいデシ・・・・じゃなくて、わんデシ」
「やあ、パステルじゃないか」
そう言ってサードさんが近づいて来たデシ。
「サード、何しているの?」
「いや・・・・星を見ていたんだ」
「星を・・・・!?」
「そうだ・・・・。あんたも星を見るといいよ、なくしてたものが見つかることが
よくあるから。おれも過去に三回拾ってもらった」
「何を?」
何か・・・・難しい話デシ。
「心の落とし物」
「心の!?」
頭がこんがらがってきたデシ・・・・。
「話はこれくらいにしよう、風邪ひくぞ」
そう言って中に入っていったデシ。

(7)〜洞窟〜

「おい、ポタカンつけてくれ」
トラップがノルに頼んだ。
私達は今、サバドの南の洞窟にいる。
あの後エベリンから乗り合い馬車でサバドへ。
そこでかなり歓迎はされたが・・・・。

「で、あなたたちは今度はどこに行くのかな?」
「えっとー、ここから南に行ったところの洞窟に・・・・」
「そりゃあいかん!!!」
いきなり大声を出されたので、全員驚いてのけぞった。
「あそこの洞窟に行った冒険者はこれまで二十人、そのうち一人も帰ってきておらん」
「あのさー、『呪われた城』の時も同じようなこと言ってなかったか?」
トラップが言い返す。
「そうじゃったかのー」
ドテッ
「じいさん、俺達は大丈夫だって、前より一応レベルアップしているし、
こんな力強い味方もいるんだからさー」
と、クレイがサードをさした。
「たしかにあんたらよりか、頼りになりそうじゃのー」
ドテッ
再びこける私達であった・・・・。

「おい、パステル、ちゃんとマッピングしろよ」
「わかってまーす」
えっと、まず入り口入ってすぐT字路で、また左右ともT字路、それから右の右は
すぐ行き止まりで、左は鍵付き+罠付きドアの部屋(トラップでも開けることは
できなかった)で、左の方は左が宝箱一個(ショートソード一本)で右は・・・・・・。
「おい、こっちも行き止まりだぞ」
トラップが走りながら戻ってきた。
「うっそー、後はあのドアしかないよー」
そう、後はトラップでも開けられなかったドアしかない。
「とりあえず、もう一回トライしてみる。それでダメだったらこの洞窟はあきらめる」
「そんなー」
とは言っても他に何か名案があるわけでもなく、もう一度ドアの方に
戻っていこうとしたんだけど・・・・・。
「あれっドアがない!?」
「おい、マッパー、まさかこんだけのことで迷っただなんて言わせねーぞ」
「いいや、そんなことはない、おれも確かめた」
ノルが言ってくれた。
「とりあえず入り口に戻ろう」
クレイの提案で戻って・・・・・。
「でも何でだ?ドアが消えるなんて・・・・」
とクレイが言い出した。
「おい、そのショートソード見せてくれないか?」
「えっいいけど・・・・」
サードにショートソードを(さっき見つけたヤツ)渡し、その後も何だかんだと言っていた私達。
「やっぱりドアが消えるようなことってありえないよねー」
「いいえ、考えられます」
全員がキットンを見る。
「いいですか、ドアの奥に部屋があるとします、その左右どちらかに空洞がある
とすれば、横に動かせるんです、その洞窟は一種の浮いた部屋なんです」
「でも・・・・どうやって?」
「たぶん誰かが押したんでしょうね」
「だれが?」
「ここの洞窟に俺達が来る前にきたやつだ」
「そういうことです、サード」
キットンが満足げにこたえる。
「どういうことよ」
「このショートソードは、今傭兵に流行っているやつだ、あの宝箱の古さから
考えて、たぶん別のモノが入っていたのをこれと取り替えたんだろう、とすると誰かが先に来ているんだ、この洞窟に」
「さすが傭兵ですねー、いやーパステル達とは違う」
「おい、達ってオレまで入ってるのか?」
「もちろん」
「なーにがもちろんだ」
そこでポカリと一発
「またトラップはー、あなたの・・・・・・フガァモグガバ」
何か言おうとしているキットンの口をトラップが押さえつけた。
「しかしどうやってドアを横にやるんですか・・・・」
クレイが聞くと
「簡単さ、出っぱりがいっぱいあったろう、それで横に押せばいい」
「あーーー!!」
全員が納得すると
「さぁ、クレイ、ノル。あんた達が一番力強いだろう?手伝ってくれないか?」
そういって通路の奥に行った・・・・。
あぁ、何だかすっっっっっごくかっこいい、サードって。
私が会っている傭兵って、どうしてこんなにかっこいい人ばっかりなんだろう。

(8)〜壁の中に・・・・〜

「ねー、トラップー、まだー」
「だーー!!さっきからいったい何回その台詞を言ってるんだ、少しは我慢できねーのか!!」
「だってー」
「とにかくだまってろ」
あの後、サードさんの推理通り、壁を横にスライドさせた(けっこう楽にやれた)
私達は、今トラップが鍵&罠を外すのを待っている。
でもねー、さっきから三十分も待っているのよ・・・。
「一体どんな罠なんですか?」
「わかんねー」
ドテッ
今日三度目のこけだ。
「今まで見たことのねーよーな罠だ、もう鍵の方はいいんだけどな、罠の方が・・・・・」
「トラップにもわからない罠ですか・・・・・」
キットンが考え始めた。
「もしかしたら・・・・魔法でもかかってるんじゃないか?」
クレイが冗談で言うと、
「それですよ、クレイ!!」
キットンが真面目にこたえた。
「今までトラップは数々の罠を外しました、でも魔法のかかっているのは、
遭遇数も少ないし、何より難しい」
「けっ、この盗賊、トラップの名に賭けて、ぜったいにこの罠は・・・・・・おろっ、おぉーー」
「外れたの!!トラップ!!!」
「はじゅれたの、とりゃー!!!」
「あぁ、たしかにさっき手ごたえがあった、これで大丈夫だろう」
「本当に大丈夫なんだろうな・・・・」
「まかせとけ、まぁ万が一の事を考えてみんな離れた離れた」
全員がトラップから離れる、そしてトラップがゆっくりドアノブを回す。
ドアが開いたのだ。
「よし、やっぱりうまくいった、おい、クレイ行こうぜ」
「わかった」
そう短くこたえてトラップ達二人がと一緒に部屋に入ったその時
「ひゃぁぁぁーーーー」
「うわぁぁぁぁーーーー」
二人が突然消えた、いや落とし穴に落ちたんだ。
「クレイ!!!、トラップ!!!」
そう言って二人の所に行こうとした、だが、誰かに腕をつかまれた
「何よ!!、クレイ達が・・・・・」
そこまで言って、思わず絶句した。
私の手をつかんでいたのは、ノルでもキットンでもサードでもルーミィーでもシロちゃんでも
なかった。まさか壁から手が出ていて、私の腕をつかんでいたなんて・・・・
信じられる!!?
「きゃぁーーーーーー」
もちろん私は絶叫マシーンと化し、見ればルーミィーもシロちゃんも、サードもノルも、
次々と出てくる腕から逃れようとしていた。
壁と同じ岩の腕が私達を壁に引きずり込もうとしている。
「この野郎、離しやがれ」
サードが必死に防戦している。
「うぎゃぎゃぎゃーーーー、やめてくださーい」
キットンの馬鹿でかい声が聞こえてきた
「ぱぁーるぅー、ルーミィーこわいおう!!」
ルーミィーが泣いている。
「ルーミィーしっかりするのよ!!」
でも私達にはどうすることもできない・・・・。
きゃあ!!?
腕が・・・・少しずつ壁の中に入っていく。
「私・・・・・・、もう、ダメ・・・・」
「おい、パステル、しっかりしろ、最後まであきらめんな!!!」
サードの必死の呼びかけも空しく・・・・。
薄れていく意識の中私は壁の中に引きずり込まれていった・・・・・・・・・・・。

(9)〜引き裂かれたパーティー(1)〜

・・・・・・詩人兼マッパー、パステル・G・キングの視点で・・・・・・
「うぅ・・・・・・・・」
あれっ、ここって・・・・・・何処。
たしかトラップが罠外して、ドア開けて、で落とし穴にクレイとトラップが落ちて、
それから・・・・・・・・。
あぁ!!!
「ルーミィー、シロちゃん!!!!」
「なんデシか?」
いきなり足下から声が聞こえたのでびっくりした。
「あぁ、シロちゃん・・・・・よかった・・・・・」
いきなり脱力感におそわれる・・・・。
「ねえ、シロちゃん、一体どうなったの、私達って壁の中に入ったんじゃあ・・・・・」
「それがボクにもよくわかんないデシ・・・・・」
「そう・・・・・・」
あの時、確かに壁の中に引きずり込まれたんだ・・・・。
でも死んではいない、ただみんなと離ればなれになっただけ・・・・・。
「ルーミィー・・・・」
あの時、壁から出てくる腕につかまれ、泣いていたルーミィー・・・・・。
大丈夫かしら・・・・・。
胸がきゅーっとしめつけられる気がした。
「パステルおねーしゃん!?」
「うん、大丈夫よ、私がしっかりしなくちゃね」
そう言って立ち上がった。
そうよ、ぐずぐずなんかしていられないは、早くみんなと合流しなくっちゃ。
決意をあらたに、バックからマッピング用の方眼紙、鉛筆、方位磁針
そしてポータブルカンテラをとりだした。
よーっし、気合い入れていくぞー。
「行こう、シロちゃん、みんなを探しに!」
「はいデシ」
そして歩きだそうとした時、行こうと思っていた方の逆の方から、足音が聞こえてきた・・・・・。
誰!?
・・・・・・ファイター、クレイ・S・アンダーソンの視点で・・・・・・
「いててて・・・・・」
「ちくしょう・・・・落とし穴かよ・・・・・・」
俺は腰をさすりながら起きた。
トラップはどうやら背中から落ちたらしい。
「だいたい盗賊のおまえが不注意だから・・・・」
「けっ!!」
一通り痛がった後
「で、これからどうする?」
「どうするってあいつらも落とし穴にまた落ちるほど馬鹿じゃあないだろう
かといってこのまま待っておくのもイヤだしな」
「やっぱ・・・・進むか」
どうも気が進まない。
マッピングはトラップがいるから何とかなる(いつもパステルに教えていたから)
しかしこちらには方位磁針がない。
それに・・・・何かヤナ予感がするんだが・・・・・。
「俺だって気は進まねーがな、でも他にどうすることもできねーんだよ」
「しかし・・・・・ここってどこだ」
「通路もあるし、たぶん上に行くための階段もあるだろう、ここは地下一階ってところかな?」
「この洞窟って・・・・そんなに複雑だったか?」
「おい、シナリオ見せて見ろ」
とりあえずトラップと一緒に見てみる
『クエストレベル:8 ダンジョンとしては複雑な方ではないし、モンスター
もたいしたものは出ないだろう。ただ罠に気をつけること』
「なーんだ、結局さっきのような罠に気をつけろって事じゃねーか」
「そうだな、とりあえず階段を見つけてみよう」
シナリオを見て何か元気がわいてきた俺達・・・・・。
しかしシナリオに書いてあったことが間違いだと気付いたのは・・・・・。
それからほんのちょっと後のことだった。
・・・・・・農夫、キットンの視点で・・・・・・
「ノル、そっちはどうですか?」
「うん・・・・・どうやら行き止まりみたいだ・・・」
やれやれ、いきなり壁に引きずり込まれて気付いてみたらみんなと離れていて。
まぁノルがいたのは大助かりですね。
「クレイ達、心配だ・・・・」
「そうですね、まぁ落とし穴に落ちた二人はともかく、パステル、ルーミィー、シロちゃんは
特に気になりますね」
「サードさんも気になる・・・・」
「あの人は大丈夫ですよ、少なくともクレイよりは強そうですからねー
ぎゃーっはっはーーー」
私が普通に笑うと、
「しっ、モンスターに聞こえる」
とノルに言われた
「こりゃぁ失礼」
「でもこまった、マッピングの仕方知らないし、なによりみんなの位置すら
わからない」
私は少し考えて、
「そうですね、壁に何か目印をつけておきましょう」
「それもパステル達にわかりやすいように何かこっちに行ったみたいに
しておけば・・・・」
それじゃあと・・・・・
「この薬草は色つきですから、壁にこすりつけて文字を書きましょう、えっと・・・・・」
そして私は『パステル、クレイ、そして他のみんな、私達は←に行きました』
と書いた。
「さぁ、行きましょうノル、まずはこっちのT字路から・・・・・」
私達は歩き出した・・・・・。

(10)〜引き裂かれたパーティー(2)〜

・・・・・・詩人兼マッパー、パステル・G・キングの視点で・・・・・
私はゆっくりと歩き出した・・・。
もちろん足音のしてない方向に・・・・・。
だれ?一体だれなの・・・・・。
もちろんクレイ達の可能性もある、しかしモンスターかもしれない。
こういう時は、しずかにいくしかない。
抜き足、差し足、忍び足・・・・・。
一歩一歩慎重に歩いていく・・・・・・。
シロちゃんを肩に乗せて(シロちゃんの足音は響くのだ)歩いていく・・・・・。
もちろんポタカンはつけていない、そんなことをしたら相手に『私はここにいます』
っていってるようなもんだもん。
カッカッカッカッ
どんどん足跡が近づいてくる。
ひえぇぇーーー
こうなれば・・・・・覚悟を決めて・・・・・・。
「ねぇシロちゃん、相手の方に、まぶしいの吹いてくれる?」
ひそひそと話しかける
「まぶしいのデシか?」
「そうそう、こっちから見えるくらいのまぶしさでね・・・」
「わかったデシ」
そう言って、私の肩の上で百八十度回転、まぶしいのを(弱めをふいた。
そのさきに見えたのは・・・・・。
「パステルじゃないか」
さわやかな声、あぁ、まさかまたこの声を聞くことができるなんて・・・・。
「ジュン・ケイさん!!!」
私はそう言ってジュン・ケイに走り寄った。
・・・・・・傭兵、サード・フェズクラインの視点で・・・・・・
「これでこの階は一通り歩いたな・・・・・・」
マッピング用紙を見て呟く。
あの時、壁に引きずり込まれた後、子供の泣き声で目が覚めた。
その泣き声の主はもちろんルーミィー。
ひとしきり泣いた後、泣き疲れて今は俺の背中で眠っている。
マッピングを始めてもう一時間、この複雑すぎるような迷路を延々歩いている。
階段も見つかった、が降りなかった。
この階にまだ誰かいる可能性があったからだ。
俺の予想が当たっていれば・・・・。
早いところ全員と会った方がいいことになる。
「階段に行ってみるか・・・・・」
また呟き、階段に向かった。
ピタッ・・・・・。
もうすぐで階段というところで俺は止まった。
(ちっ、またモンスターか・・・・・・・)
そう心の中で呟いた。
このマップを書いている最中、出会ったモンスターは大小含め五十匹は
いたはずだ。レベルはもう八まで上がっている。
もしかして、これまで倒せばこの階にモンスターはいなくなるのでは
と思うくらいだ。
「ふぅうーーー、ふしゅうぅーーーー」
モンスターの声が聞こえてくる・・・・。
右手で刀を抜き、左手でルーミィーをささえる。
「しゅーーー、しゃーーーーー!!!」
モンスターがその姿を現した。それは・・・・
「インプ!!!」
まさに小さな悪魔、インプの姿だった。
「しゃーーーー!!!!」
インプが飛びかかってくる。
ズバッ
それを一刀両断、頭から斬りつけた。
インプの死骸が地面に転がる。
さっきの罠といいこのインプといい・・・・。
まずい、断然まずい。
さっきまでの予想が確信に変わる。
あせりが出てくる・・・・。
「早くあいつらを見つけなくては・・・・」
そう呟き俺は階段に向かった・・・・・・。
この『悪魔』の住む洞窟に、いつまでもあいつらをバラバラにしておくワケにはいかないから・・・・。
そして・・・・・・あの時の記憶がよみがえってくる・・・・・。

 1999年3月11日(木)18時37分56秒〜3月20日(土)13時04分05秒投稿の、PIECEさんの長編です。

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