日誌特別版 〜或る問題〜

 まず、何が問題なのかを見よう。
 わたしが思う問題点は、「発言に対する責任を取っているとは思えない」ということ。発言による影響がどのようなものか理解していない。不適切な言葉を使うことによって、人を不快にさせることがあるということが分かっていない。
「場を読む」ことがどういうことか分かっていない。オンラインだろうとオフラインだろうと、話していい話題と話してはならない話題があるということが理解できていない。これに関しては、わたしも最近失敗した経験があるので、難しいし経験が必要だということはもちろん理解している。
 でも、失敗はどういう理由で起きたのか、何が問題だったのか、そしてその失敗はどうすれば回避できるかということを考えることによって、人は成長すると思う。
 しかし、そもそもどういう理由で失敗したのか、何が問題だったのか分かっていないのであれば、もちろん回避は出来ないし、成長することもないだろう。
 そして、なぜ失敗したかということを他人が親切にも教えてくれるということは、まず有り得ない。これは自分の問題であり、自分でしっかり考え、理解し、行動し、回避する。これが出来ない限り、また同じ過ちを犯すことだろう。
 それが出来ていないと判断された場合は拒絶されても仕方ないと思う。出来ていると判断できてももう金輪際拒否、ということにされてしまうこともある。
 それでも、それを理解したということはその人にとって成長するということになるはずだ。

 この場合、注意された理由を正確に理解していないことにすべてがあるような気がする。他のやりとりを見ていても、理由としてあげていることはちょっとピントがずれているような気がする。
 たとえば人にマイナスイメージを与える内容の時にその人を特定すべきでない理由は、アクセス数やイメージなどという些細なものではなく、その人に対する名誉毀損に該当する場合があるから。その内容によってその人が損害を受けたと判断された場合、名誉毀損罪に問われることがある。その被告には発言者はもちろん、その発言を削除しなかった管理人もなることになる。
 つまりその行為は、その行為をすることによってそのサイトに迷惑を掛けることになり、荒らし行為になるのだ。

 ある人に避けられていることを知りながら、その人に追いすがってその人に迷惑を掛けることは、立派なストーキングであり、オンラインなら荒らし行為、オフラインだったらストーカー行為になり、行政執行の対象になることがある。
 この行為には、嫌われていることを知りながら、また書き込みを行うという行為も含まれる。
 また、その行為をストーキングだと思うかどうかはその行為を受けた人がどう思うかにすべてが掛かっており、それを行う人がどう思うかは、普通考慮されない。ストーキングと認定された時点で、それを行う人はストーカーなのである。その認定に異議を唱えることは、それを行っていた人には出来ないのは、当然のことである。
 この場合、オンラインだろうとオフラインだろうと、ほとぼりが冷め、その人が認めるまではその人に近づかないようにすることが必要になる。
 わたしも、不適切なメールを送ってしまったことで、ある人から徹底的に避けられるようになってしまったことがありました。その場合、原因を理解し、きちんと謝罪することももちろん必要ですが、その人にこちらから近づいていかない、その人との関係を解消すると心に決めることが何より重要になります。
 確かに、そのことはとても辛いこと。そのある人は、一時期とても仲良くさせていただき、わたしとしてはその関係は出来れば解消することなく、それまで通りのおつきあいをさせていただければ、と思っていたのですが、一度避けた人がその関係を戻す、ということはほとんど有り得ないことから、わたしもきちんとあきらめることにしました。それが、その人に対する誠意です。謝罪には、誠意がなくてはなりません。
 その事は未だにちょっと引きずっていたりする、わたしにとってかなりダメージの大きい出来事だったのですが。

 また、謝れば済む、謝っただけで済む話は極めて少ない。謝ること、およびそれに対する誠意と適切な対応が出来て、初めて謝罪が認められるのである。他人の財産に損害を与えたとして、それに対して謝れば済むということはまず有り得ない。それ相応の対価が必ず要求される。これは、他人の心情に損害を与えた場合も同じだと考えられる。心情は他人に見えないので分からないことが多々あるが、人を傷つけたことでその人が自殺したとして、どうやって謝るのか?
 謝った、けれども認めてくれない、という場合はたいていは適切な、求められている対応が出来ていない場合であり、それは謝ったことにも、その原因となる行為を帳消ししたことにもならない。
 今回の場合、謝れば済むと考えているんじゃないかと思われてしまうということは、つまり言葉に誠意が足りないということである。
 誠意とは何か、それはどうやって示すことが出来るのかを他人が教えてくれることも、まず有り得ない。それは、その人がその事についてどのように考えているかが滲み出てくることだから。人は人に、このように考えろと強制させることは絶対に出来ないし、してはならないことなのだから。
 今回のことについてヒントを書いておくと、その人の言うとおり、そこに近づかないということが、まず誠意の第一歩になるということだ。
 誠意を物理的に示すことは出来ない。だから訴訟などでは金銭、物品による誠意ということになるが、このことは心情的な誠意を蔑ろにしても良いということにはならないということを付け加えておく。

 加えて、荒らし行為というものを理解していない。荒らし行為は掲示板に意味不明な記号を並べる、巨大なデータを送信することによって物理的に損害を与えるなどの他に、不適切な書き込みを繰り返すという荒らし行為がある。不適切な書き込みにはもちろん、他人を傷つける目的の書き込み、その掲示板の趣旨に合わない宣伝などの書き込み、などがあるが、それには当てはまらない不適切な書き込みというものもある。往々にして、不適切な書き込みをしている当人には不適切な書き込みだという認識がないことがあり、このことがこの問題を更に複雑にしている。
 しかしながら、もし悪意がなくても、人を侮辱することになってしまう、人を不快にする表現である、などの書き込みは、その掲示板運営にとっては荒らし行為以外の何物でもない。
 それは削除されても仕方がないし、言っても分からない場合は「来るな」といわれるのも仕方ない。「来るな」といわれるのはまだ幸いで、何も言われずに自分の書き込みをすべて消される場合もある。
 その場合、なぜ書き込みが削除されたのかをよく考え、何が問題だったのか、どうすればそうならないのかを考える必要があることは前述の通りである。
 さらに、ある掲示板の運営方針について、他の無関係なところに行って文句を言う、正確に言うなら、「ある掲示板で他の掲示板の話題を持ち出す」のはネチケット違反である。そもそも、いくら大きくても個人のサイトの運営方針に他人がケチを付けることは重大なマナー違反である。
 さらに「意見が書き込めない」状態になった時点でそれは既に荒らし行為とされてしまっているのであり、一度荒らし認定されてしまったらそれを取り消すのは不可能、あるいは非常な困難を伴うことを付け加えておく。
 それを「自分勝手だ」と言うことは出来ない。逆に「自分勝手だ」という意見が自分勝手である。なぜなら、サイトは運営者自身の責任で運営しているものであり、自分の望まない形になることはサイト運営者の責任で全力を賭けて阻止せねばならないことだからだ。サイトは、ネット上にある文字通りの「ホーム」、家なのだ。望まない客を拒む権利は家主であるサイト運営者にある。公共の場所といえども、望まない客を拒む権利は管理者にあるし、他の利用者にとって害になりうる客を拒む義務も管理者にある。
 その事について、客は最終的に関わることは出来ない。

 最後に改めて。
 一度壊れた人間関係が元に戻ることは、有り得ない。これを昔の人は「覆水盆に返らず」といった。
 自戒の念を込めつつ。

2004/01/30 Merlin Crossroad (M. Tsuji)

1/31追記 名誉毀損などについて

 まず最初に、「名誉毀損」を定義しておこう。
 刑法第230条では「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する」としている。ここで「名誉」とは人の「社会的評価」、毀損とは「害すること」、つまり「人の社会的評価を低下させること」が名誉毀損に当たるとしている。
 更に表現の自由を護るために、同230条の2の3項で「行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない」としている。また、その事実が虚偽だったとしても、相当の理由によってそれを真実だと判断した、と認められる時はこれを罰しない、と言う判例もある。
 更に「侮辱罪」がある。同231条には「事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する」としている。
 つまり、「名誉毀損」に当たらない条件を満たさない限り、つまり相当の根拠に基づく冷静な表現に拠らない限り、人の悪口を公共に流すことは「名誉毀損」「侮辱」に当たるとされ、刑事訴訟の対象となりうることを、まず知っておきたい。
 いかに些細な発言でも、それがその人に物理的或いは精神的な損害を与えた場合は、告訴される場合がある。特に公共性の高いインターネットでは注意すべきだろう。
(この項、参考文献:Mac Fan, 2003, 5.1, P. 88「CYBER RED CARD」)


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