<始まりは瞳で・・・I>
夢を見た・・・深いそして冷めたような青い瞳の少女がでてきた。
何故か俺はその夢の中の少女を好きになった。
いつものように夢から覚めると辺りを見回した。
「今日も見てたのか、あの娘(こ)の夢?」
イムサイがニヤニヤしながら訊いてきた。
「関係ねぇよ」
ぶっきらぼうに答えると奴は苦笑した。
「今日、初の女騎士が入隊してくるようだよ、その娘に似てるといいなアルテア」
そんなにうまくいくかよ・・・・思わず舌を出した。
騎士団に属する俺は代々騎士の家系・・・・だが、まさか女騎士がでてくるとは思わなかった。
―その娘に似てるといいな―
奴(イムサイ)の言葉が余韻した。
<始まりは瞳で・・・II>
入隊式というよりほとんど歓迎会だ。
国王までもが喜びの声をあげているのだから。
「どうした?呆然としてるみたいだな」
同じ隊のメギスが話しかけてきた。
「似てるんだ・・・・・・」
「似てる?・・ああ、例の娘にか・・・・」
夢と同じ瞳・・・・途端に目が合った。
でも、少女はにこやかに会釈をしてきた。
レエナ・モンブラン
お菓子みたいな名前なモンブラン家はアンダーソン家と同じ代々騎士で国王の親族だとか。たまたま、跡取りがレエナしかいなかったらしい。
「若いよな、まだ21だってさ。お前んとこのクレイと同じくらいか」
メギスがチラッとクレイを盗み見た。
クレイはパステル(確かこんな名前)とかいう女の子と喋っていた。
「そうだな、クレイのがひとつ上だ」
入隊したのはレエナだけではなく、クレイや他の人もいた。
俺は少し複雑な気持ちだった。
<始まりは瞳で・・・III>
騎士とはいえ、何の練習なしってことはない。
入隊式を終えると練習がてらトーナメントを行う予定であった。
初戦はレエナとクレイだった。
あんな細い腕でロングソードを扱えるのかどうか......クレイの方も相手が女だからか躊躇ってる。フェミニストすぎるんだよ、彼奴は。
ちゃっかりしてるというか、弟想いというか、イムサイはクレイの応援にまわっていた。
「やっぱクレイの方が多いな......アルテアは?」
メギスが訊いてきた。
「別に...、メギスこそどっちなんだよ」
「へっへっへっ、オレはやっぱレエナちゃんだ。結構可愛いしな!」
ロリだな............って俺も似たようなものか?
何事もなく試合は始まった。
クレイは躊躇っている....レエナは全く動かない。やはりロングソードが重かったのだろうか?
不意にレエナが動いた、素早くかつ繊細な動きでロングソードの柄でクレイの剣を落とした。
クレイは呆然としたまま...勝負はついた。そして、隊長がレエナに、
「何故、剣を抜かなかった?騎士なら当然ではないか」
と言った。しかしレエナは、
「お言葉ですが、これはレプリカですわ、それも剣ではない物....もう一つ、私は怪我をさせたくありませんでしたから」
「何?」
隊長がレエナの剣を抜くとただの木刀であった。
「そんな馬鹿な....抜く前からわかったというのか....」
<始まりは瞳で・・・IV>
「あっ、よくここで会いますよね、アルテアさん」
ブルーアイをしばつかせレエナが微笑む。
「覚えるの早いな...よくイムサイと間違えられるんだが....」
思い切ってレエナの横に座る。
「ええ?だって微妙に違いますわ、それに、アルテアさんとはどこかでお会いした気がするんです」
夢じゃなくてなのか......?
「レエナ....その”さん”づけじゃなくていいから」
”さん”づけにされるとなんとなく他人みたいだ。いや、もとは他人だが親しくしたいから。
少し困惑したレエナだったがすぐに頷いた。
その日をさかいにレエナとはよく目が合うようになった。
その度に俺は深い青に吸い込まれていきそうになった。
<始まりは瞳で・・・>完・次章へつづく
1999年11月14日(日)16時34分〜11月20日(土)21時01分投稿の、有希さんの小説「=With=」です。継続中。