パートナー

        (トラップ)
「あ、トラップー!これしようバドミントン」
 振り返るとパステルと猪鹿亭の看板娘リタだった。
「やだね、おれは疲れてるの」
 おれは即座に言い放った。別に疲れてるわけじゃねぇけどこいつに関わる
と、えれぇめに会うに決まってる。
「だってぇー100回ラリー続いたら賞金貰えるのよ」
「へぇへぇ、賞金ねぇ...何賞金??」
「そう、ね。だからお願い!」
「やだね、クレイやノルがいるじゃんか」
 なんでおれがそんなしちめんどくせーやつするかよ。
「それがさぁ、クレイもノルもキットンまで断るんだもん」
 ふーんあのクレイがねぇ...
「クレイがねトラップならやったことあるって言ってたから、ね?」
 あいつ...余計なことを。
 パステルは真剣な表情で見てくるし...
「しゃーねぇな。やってやるよ、バミトントンなんて簡単なやつ」
「バミトントン?バドミントンでしょ。はい、ラケット」
 なんでもいいんだよ。バミトントンだろうがバドミントンだろうが。
 おれはリタからラケットを受け取った。
「じゃ、あたしはこれで。がんばってねパステル」
 リタがパステルに声をかけて店に戻っていった。
「トラップいくよー」
「へぇへぇ」
ヘロヘロ〜〜ン.....ポトン
 羽はちょうどパステルの少し行ったとこに落ちた。
「届いてねぇぞ」
 おれがいうとあいつは、
「あれぇー?ねぇトラップ手本見せてよ」
「ったく、ほれいくぞ」
 パァーン.....
「えいっ!」
 カコン..ポトン
 パステルのラケットに当たったはものの、とんでもない方向へ行った。
「おめぇ、やる気あんのかよ?」
 おれが怒鳴ると、パステルは「えへへ...」と答えた。
 おいおい、まさか基礎すらしんねーじゃねぇだろな?おれの予感はその
とおりだった。ったく、やっぱろくなことねぇやい。
        (パステル)
「バーカ、そうじゃなくてナチュラルにうてっつてんだろ」
 わかってる、わかってるんだけどできないよ〜。それにナチュラルって、
音楽じゃないんだから....それを言うならなめらかじゃないの?
 でも言ったところでトラップなら、「わぁってんならやれ」っていわれる
のがおち。
「何考えてんだ?きりきりつづける」
「ふぁーい(はーい)」
 えーん、また怒られた。グッスン。
 トラップったらクレイの言ったとおりやたら上手いんだもん。
ヘロヘロ〜〜ン...ポトン
 あ、またやっちゃった。
「パースーテールー!おめぇな今度はコントロールはましになったが
 全然とばねぇじゃんかよ。ナチュラルはやめだ」
「え?じゃどうするの、フラット?シャープ?」
 わたしがいうとトラップは、はぁ?という顔をして言った。
「馬力ですんの!力でねじ伏せる、おらおらさっさとやる」
 馬力ー?もう、トラップってばもっと言い方があるだろうに。
パァーン...トラップがうちパッコン...とわたしが返す。
 でも、なんか音が違う〜、トラップみたいにうちたいよ〜。
パァーン...パッコン...パァーン...パッコン...パァーン...
パッコン...パァーン...スカッ....ポトン。
「ぶぁーか、何おとしてんだよ」
「だってぇ...」
 わたしが言い訳しようとするとトラップは、
「だってもささってもねぇの。おめぇがやるって言ったんだぜ。
 自分が言ったことに責任ぐれぇ持てよな、せっかくこのおれが
 手伝ってやってるってのに...」
 うう...。そうだよねぇ、いつものトラップなら絶対やんない
だろうし、今日のトラップなんか優しいって思うのは気のせい?
「ボケっとしてねぇでやろうぜ。賞金もらうんだろ?」
「..うん..やろうトラップ!」
 立ち直りの早いのが取り柄。いつまでもクヨクヨしてらんない。
「よし、んじゃパステル、今度は数えながらやろうぜ!100回」
パァーン(1)...パッコン(2)...パァーン(3)...パッコン
(4)...パァーン(5)...パッコン(6)...パァーン(7)...
パッコン(8)...パァーン(9)...パッコン(10)........
        (トラップ)
89...90...あと10回!
 おれはなぜかムキになってやっていた。
 パステルにうてれるようなところへやるのにも、いや、パステルとバドミン
トンをしていること自体今日のおれは変だ。
95...96...
 ただ賞金目当てにやってるわけじゃねぇきがすんぞ?どうしたんだおれは?
パッコン(98)...カッコン(99)......!!!
 くそっ、しまった!手元がくるった。
 羽はちょうどおれとパステルの真ん中あたりにおちようとした。
 おれは、走り出していた。パステルも近づいて来る。
 終わらせるかよ!せっかくあと1回だってんだ。ぜってぇ、おわらせねぇぞ。
ドンッーーー!!!
「いってぇ」
「いったぁーい」
 おれとパステルがぶつかりポトンと羽がおちた。
 くっそぉー、あと1回だったのに!
「ごめんトラップ。わたしがぶつかってなければよかったのに」
 パステルはおれの顔を見るなり言った。
 だが、おれはかぶりふって言った。
「よせよ、おれがわりぃんだ。おめぇには考え事すんなっていっといて、
 おれがミスったんだ」
「変なの、トラップが謝るなんて...」
 そういっときながらパステルは泣いていた。おれが泣かしたのか?
「泣くなよ。おれが悪かった、だぁらもう泣くなって」
「うーんん、トラップじゃないの。わたしね...」
 パステルが言いかけたとき、
「ああ、ぱぁーるぅ。どうしたんら?とりゃっぷがなかしたんかぁ?」
 ルーミィとノルとシロが現れた。
 なんだよ、いいときだってのに...
「ううん、ルーミィ何でもないの」
「ぱぁーるぅ?だぁじょうぶなんかぁ」
「うん。ほらルーミィ、だいじょぶだから、ね」
 パステルがルーミィをなだめる。
「おい、パステル。さっきの続きはなんだよ?」
 おれは単刀直入に訊いた。期待なんかはしてねぇ...でもねぇか。
「あ、うん。えっと...やっぱり今はやめとく。さっルーミィ、ノル、
 シロちゃん行こう」
 パステルは急に笑って3人と連れだって行った。
 な、なんだったんだ?期待して損した。
「トラップー!早くおいでよ」
 遠くであいつの声が聞こえる。まっ、いっか。
 おれは早足に歩き出した。
                   *END*

 1999年7月18日(日)20時47分11秒投稿の、有希さんのトラパス風小説です。

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