(上) 「・・・・好き・・・・」 思わず口に出してみる。 「やっぱり恥ずかしい・・・」 わたしはご存じのとおりパステル。 でもでも、いつもと違うわたし・・・・、だって、クレイを好きになったんだもん。 それで、告白しようと思ってるんだけどいざとなると勇気がない。どうしよう〜。 今日するつもりとはいえもうお昼過ぎ。 わたしは唸りながらあれこれと考えていた。 部屋にはルーミィとシロちゃんが仲良く寝そべっていた。ルーミィったらまたシロちゃん の首しめつけて・・・。 わたしがその手を解いてあげると彼女のきれいなブルーアイがパチパチ動いた。 「あ、ごめーん。起こしちゃった?」 「ぱぁーるぅ、くりぇいのこと好きなんかぁ?」 「ええ?ど、どうして?」 わたしはびっくりしてルーミィに訊いた。この子透視能力でもあるのかしら?? 「んっとね、とりゃっぷが言ってたんらお。そえでね、ぱぁーるぅ、くりぇいにいったんら。 そえからさきはしあない。ゆめんなかでみたんら」 ホッ、夢かぁ・・・。 わたしはほんとにびっくりした。でも夢のつづきどうなんだろ? 「ゆめじゃなくてもぱぁーるぅくりぇいがすきなんかぁ?」 「うん。夢じゃなくてもね・・・あっ!」 しまった〜! つい口をすべらせちゃった。 「やっぱりパステルおねーしゃんはクレイしゃんのことが好きなんデシか」 「シロちゃんまで・・・どうしてわかったのぉー?」 わたしはもう叫んでしまってた。 「だって、さっき言ってたデシ。好きって言ってたデシ!」 「るーみぃも聴いてたんら。ぱぁーるぅ、るーみぃおうえんするおう!」 「応援するデシ!」 応援ってあんたたちじゃ・・・でも、不覚!まさか聴かれてたなんて・・・。 でも、味方についてくれるのは嬉しい。 わたしは今日告白しようかどうかまで話してしまった。 「ぱぁーるぅ、くりぇいかえってきたおう」 「えっ?」 思わず振り返るとクレイ本人がいた。 言わなきゃ、「しっかりしなさいよパステル!」心の中のわたしが叱る。 「ただいま、そういえば今日満天の星空が見えるんだぜ。 パステル一緒に見に行こうぜ!」 クレイがわたしに笑いかけてくれた。この笑顔には弱いんだなぁ・・・。わたしが もちろんって言おうとしたとき、 「そだそだ、みんなで見よう。もうじきトラップたち帰ってくるだろうし」 と付け加えた。 「え・・・・」 わたしは呆然。 そんな、どうしてみんななの?わたしを誘ってくれたんじゃないの? ルーミィとシロちゃんも困った顔をしてわたしとクレイを交互に見上げた。 「どうしたんだパステル?」 「・・・・イ・の・・・・カ・・・」 「え?」 「クレイのバカー!」 わたしは部屋を飛び出してしまった。 ひどい言葉。こんなはずじゃなかったのに・・・もう告白なんてできないよ。 それでもわたしはこんなにクレイのこと好きだったんだ。 好きなのに好きって素直にいえないなんて苦しいよ。いっそ嫌いになればいいのに。 でも・・・好き。わたし、クレイのこと嫌いになれない。 もう、クレイはわたしのことどう思ってるんだろう?嫌いになった? 思いって、人を好きになるってこんなに辛い事なんてないのかもしれない。 わたし・・・最低な女の子だね。ごめんねクレイ。 「何だったんだ?いったい・・・」 のこされたクレイは部屋で呆然としていた。 「くりぇいがわるいんだお!せんさいなおんなのこのきもちわかってないんらから ぱぁーるぅがかわいそうだお」 ルーミィがクレイに言ったけどクレイはただ呆然としかできなかった。 *つづく*
(下) 好きだった・・・ちがう? わたしは本当にクレイのこと好きだった?それともただのパーティの中でのつきあい だったの? わからない・・・わかんないよ。 わたし、クレイの優しさに甘えてただけだったんだ。 「ぱぁーるぅ?」 「パステルおねーしゃん、大丈夫デシか?」 その夜、わたしは帰りが遅かった。 ルーミィとシロちゃんがわたしの顔を心配そうにのぞき込んだ。 「ぱぁーるぅ、げんきだして。るーみぃ、ぱぁ・・ーるぅとくりぇい・・のわらって るかお・・だいすきだ・・・お。だか・・あ、ない・・ちゃらやだおう・・・」 ルーミィが泣きながら抱きついてきた。 「ぱぁーる・・ぅ、ばんがって。るーみぃ、ぱぁーるぅとおとも・・らちだかあ いっしょにいて・・・あ・・げうかあね」 「お友達デシ!」 わたしは思わずルーミィとシロちゃんを抱きしめた。 「うん。ずっと友達だよ。ごめんねルーミィ、シロちゃんもう泣かないから。ほら、 もう泣かないで。わたしだいじょぶだから」 わたしは笑顔で彼女に言った。 「ほんと・・にだあじょ・・ぶなんかぁ?」 「うん!」 「ぱぁーるぅだ。いつものぱぁーるぅだお。 ねぇねぇぱぁーるぅ!」 ルーミィは特上の笑顔をわたしに向けた。さっきないた子がもう笑ってる。 「うん、なあに?」 「るーみぃ、おなかぺっこぺっこだおう!」 「あはははは、そっかそっか。わたしも泣いたらお腹すいちゃった。 夕飯食べに行こう!」 「猪鹿停デシか?」 「そこしかないおう!」 わたしたちは猪鹿停に行った。 クレイたちは先に行って待っていた。 でも、わたしはクレイと口を利かなかった。 「もう、ここどこぉ?どこなのよぉ?」 わたしはどこかで迷っていた。 ほんとに方向音痴なんだから・・・これでマッパーなんていうのやってるんだもん。 やっぱり、職業かえようかなぁ・・・? あ、なんか急に真っ暗になった。 やだー。こわいよう・・・えーん。 「パステルったらまた泣いてる・・・だからクレイに嫌われるのよ」 どこかで声が聞こえた。もしかしてマリーナ? そっか・・・。クレイ、わたしのこと嫌いなんだ。 「当たり前じゃない。あたしもパステル嫌い!」 「ぱぁーるぅ、ないてる・・ないてるぱぁーるぅはきやい」 「パステル・・・」 クレイ・・・。クレイも嫌い?でも、お願い嫌いにならないで・・・ 「パステル、おれはお前がそうやって迷ったり、泣いたりするところが嫌いだ」 やっぱり、嫌いなんだ・・・。 「でも、本当は・・・」 えっ・・・? わたしは飛び起きた。 夢?夢でよかった。でも、あの続きは何だろう? わたしは思い切って外へ出た。 「そっか、今日星がきれいに見えるってクレイが言ってたっけ」 わたしも星になりたいな・・・。 「あれ?パステル・・・」 「くっ、クレイー!」 び、びっくりしたぁ。 「ごめん、パステル泣いてるの?」 ええ?あ、ほんとだ。さっきの夢がやたらリアルだったから?ううん、違う。 クレイの顔見たら自然に涙が出てきたんだ。 わたしはあふれる涙をおさえきれず、しまいにワァワァ泣いてしまった。 「パ、パステル?どうしたんだぁ?」 クレイはあわてふためいたけどずっとそばにいてくれた。 「ごめん。昼間は無神経だった。 おれ、この星空ほんとにパステルと見たかったんだ」 「えっ?」 泣くのがおさまってきたころクレイはわたしを抱きしめながら言った。 「おれ、本当は・・・」 あ、これって夢で見た台詞と同じ・・・。 「クレイ、その続きは?」 「・・・・・・・パステルが好きなんだ・・・・・・・・」 クレイは真っ赤になって言った。 「わたしこそごめんね。ひどいこと言って・・・。わたしもクレイが・・・・・好きだから・・・・」 言いながらわたしの顔も真っ赤になるのがわかった。そして、また涙が出てきた。 「また、泣いてる・・・、泣いてるところもおれは好きだぜ」 夢とは違う現実。 その言葉を聴いてわたしはもっとクレイを好きになった。 「もう少し、こうしててもいい?」 「もちろん」 クレイはわたしをずっと抱きしめてくれた。 あの星空の下で・・・ずっと *FIN*
1999年7月29日(木)23時41分13秒〜7月30日(金)12時27分29秒投稿の、有希さんのクレパス小説です。