第一話〜第十話

第一話「侵入・キスキン国!〜前編〜」
  俺は、とにかく、アルメシアンのとっつあんから聞いたルートを頼りに、キスキ
キン国へと急いだ。
  アルメシアンのとっつあんが教えてくれルートはこうだ。
  まず、メレンゲの手元には、必ず、多くの兵がいるはずだ。そして、その兵達を
隠しながら進むには、街道をあえて避けて進むはずである。つまり、メレンゲ達は、
街道を通らないとなるのである。
  しかし、街道にも、予備として兵を置いている可能性もある。だが、その予備と
して置いている兵の中に、俺達を見た奴がいる可能性は格段に低くなってくる。
  となると、街道を避けて通るより街道をあえて進む方が安全となるのだ。
  何しろ、こっちにはアルメシアンがいるんだからな。
  あえて街道を進む様な無謀な事はまずしないと、メレンゲ達も思う事はずだぜ。
  つまり、心理作戦ってやつさ。

  俺は街道を走り、キスキン国へと向かった。
  しばらく街道を走っていると、兵士が五人、街道にいた。
  やっぱりだな。アルメシアンのとっつあんの言った通りだ。あいつらには見覚え
が全くないな。どう見ても、単なる兵士だな。
  こうなったら、怪しまれない様にするか。
「おい、そこの男!」
  突然、兵士の一人が俺に気付きやがった。
  ま、大丈夫だがな。
  兵士の一人は、俺に近付いてきやがった。
「何だよ」
「この辺りで、この様な顔の女を見なかったか?」
  兵士は、一枚の紙を俺の顔の前に出した。
  それは、パステル……いや、ミモザ姫の顔の絵だった。
「どうなんだ?  知っているのか?」
  もし、ここで俺が嘘を言って、こいつらを騙し、いなくなったとしても、帰りも
この道を通るのだから、もし、嘘がばれたら俺が捕まっちまう。
  となれば、ここは……。
「いんや、見なかったぜ」
「そうか、なら通るといい」
  兵士は、すんなりと道を通してくれた。
  ふー、それにしても、メレンゲ達がいなくて助かったぜ。もし、ここにいたら、
やばかったな。なにしろ、俺の顔を知っているからな。
  俺は、兵士のいるここでは歩いた。
  もし、走ったりしたら不信に思われるだけだ。それに、あいつら、まだ俺の事を
見てやがる。
  俺は、兵士の見えない所まで歩くと、急いで走り出した。
  そして、ようやくキスキン国へとたどり着いたのだった。

第二話「侵入・キスキン国!〜中編〜」
  それにしても、兵の数が多いとは聞いていたけどよ……。城の城門には、十人ぐ
らいいやがるな。
  もし、俺が草むらで少しでも大きな音を立てたら、すぐに捕まっちまうな。
  アルメシアンのとっつあんに聞いた城の中に潜りこむ方法は、完璧とは言えない
ものだった。
  まず城の北側、つまり、城の後方の城壁にちょっとした仕掛けがしてあるそうだ。
その仕掛けというのが、元々、この様な緊急事態の時の為に作られた物だそうだ。
そして、城の中に上手く入る事が出来たら、庭に出るらしい。そこから、庭と隣接
している部屋のドアがあるらしい。
  その部屋は調理場である為、時間帯によっては誰もいないそうだ。
  そして、その部屋を出てからが問題だそうだ。何しろ、そこから王妃のいる部屋
までが距離があるらしい。ただ、その部屋までの通路に、資料室やトイレなどの隠
れる事の出来る部屋が幾つかあるらしい。
  ま、その部屋を利用して何とか進むしかない。
  兵に見付かったら大変だ。俺の顔はメレンゲに見られているのだからな。
  そこに、メレンゲがいないという可能性はある。それに、メレンゲの部下がいて
もやばいしな。とにかく、隠れながら進むしかない。
  俺は、城の北側へと向かう事にした。
  城壁の周りには、木々があり、隠れて進むには丁度良かった。その為、兵士に見
付かる事無く進む事が出来た。
  だが、もう少しという所で、俺のすぐ近くから声が聞こえて来た。
「おい、あの塔、一体どうなっているんだろうな?」
「さあ?  結局、二階へ続く階段すら見付からなかったしな」
  奴等の会話を聞く所によると、奴等もまだ二階への階段が見付かっていない様だ
な。となると、まだ、王位の証は塔に……。
「おい、そろそろやばいんじゃないか?」
「ああ、戻るか?」
「そうだな……」
  すると、近くで兵士の姿が見えた。
  それにしても、何でこんな所に兵士がいるんだ?
  俺は、兵士の後を追う事にした。すると、兵士は城壁に向かって行った。
「それにしても、こんな便利な物があったとはな」
「たまたま、俺が見付けたんだよな」
  おいおい、何でこんな奴に見付かってるんだよ。
  兵士が、城壁にある猫の形のボタンを押すと、城壁に縦四センチ、四十センチ程
の、小さな穴が開いた。
  兵士は、その穴へと入って行った。
  兵士が向こう側に着いたのだろう、城壁に開いた穴が閉まった。
  くそっ!  これじゃあ、しばらく入れないな。仕方ない、様子を見るか。
  俺は、しばらくここで様子を見る事にした。

  しばらくしても、誰も使用する気配は無かった。
  どうやら、知っているのはあいつらだけの様だな。
  俺は、城へと進入するべく、城壁の猫型のボタンを押した。すると、猫型ボタン
を押したと同時に、ニャー!  と聞こえて来た。
「誰だよ!  わけのわからねー仕掛け作った奴は!」
「誰だ!  誰かいるのか!?」
  やっべー。つい口走っちまった。しかも、兵士に気付かれた様だな。
「おい!  誰かいるのか!」
  くそ!  こっちに近付いて来やがる。こうなったら、抜け道を早く通るか。
  いや、時間がかかって、見付かっちまうだけだ。どうすれば……。
  すると、また猫の声が聞こえて来た。しかも近いな。
  と考えていると、突然、猫が抜け道から出てきて、俺の顔を見た。
  お前が犯人だな。いや、犯猫かな。
  とにかく、俺は原因の猫を追い払った。
  しばらくすると、ニャーと、またあの猫の鳴き声が聞こえて来た。すると、兵士
の足音が止まった。
「ん?  どうしたんだ?  こんな所に?」
  今がチャンスだ。
  俺は、抜け道を通ると、城の中へと入る事に成功した。急いで、猫型ボタンを見
付けると、ボタンを押して、通路を閉じた。
「ふ〜、危なかったぜ」
  一息ついた所で、早速、庭を進んだ。
  庭は、あまり大きくも無く、金になる様な物は置いていない様だな。
  何か手土産になるような物を置いてもいいのによ。庭には花ぐらいしかないな。
  俺は、調理場への扉を見付けると、扉を少し開けて、耳をすました。
  ……誰もいねぇ様だな。
  扉をゆっくりと開けて、部屋へと侵入した。
  さてと、ここからが問題だな。何とか見付からない様にいかなくてはな………。
  辺りを見回して、城の廊下への扉を発見した。
  行くか………。

第三話「侵入・キスキン国!〜後編〜」
  俺は、調理場の部屋の扉を少し開け、耳をすました。
  ……いやがるな。二人ぐらいか……。さて、どうするかが問題だな。扉の近く
にもいやがるしな。
  それに、時間をかけるわけにもいかないし。
  何しろ、あいつらが待っているんだからな。
  くそ!  見付かるわけにはいかねぇ。強行突破はまず無理だな。
  となれぱ、賭けに出るか……。
  扉の隙間からは、遠くの方にガラス製の猫らしき物が、置いてあるのが見える。
大きさは、王家の塔で見たやつと同じぐらいの大きさだな。
  やってやるか……。
  俺は、パチンコで、開いた扉の隙間から石を飛ばし、猫の足元を狙った。
  ガシャーン!
  どうやら、猫を倒した様だな。これで、あいつらが動けば……。
「おい!  そこで何をしている!」
  嘘だろ!  何で見付かったんだよ!?
  俺は、急いで部屋の庭へ通じる扉へと急ごうとした。だが、兵士の声の他に、別
の奴の声が聞こえて来た。
「す、すみません!」
「新入りだからと言って、優しくしないぞ!  アクスとか言ったな!  今すぐ資料
室へ一緒に来い!  あそこなら、滅多に誰も入ってこない。そこで、根性を叩きな
おしてやるからな!」
「か、勘弁してください!」
「駄目だ!  今すぐだ!  わかったのなら行くぞ!」
「は、はい……」
  どうやら俺の石は外れていたが、アクスとかいうのが倒してしまったらしいな。
でもよ、どっかで聞いた事のある名前だな。何処だったっけ……。
  ま、いっか。とにかく、進むのは今の内だしな。
  俺は、再び扉に近付いて、耳をすました。すると、今度は誰の気配も無かった。
  多分、警備していたのは、さっきの奴等だけだったんだろうな。
  俺は音を立てない様に、扉を開けると、廊下へと出た。
  廊下には、所々、ガラス製の猫が置かれていた。見た所、あまり価値のある物じゃ
ないな。
  俺は、王妃の部屋へと急ぐ事にした。
  確か、王妃の部屋が二階にあるそうだな。
  階段が部屋を出て、すぐの右の所にあるので、楽に進めた。だが、帰りにあいつ
らがいたらちょっとやばいな。
  何としてでも、早く行かなければ。
  俺は、階段を上り、辺りに兵士がいない事を確認すると、足音を立てない様に、
注意して進んだ。
  途中、扉がいくつかあった。これが、アルメシアンのとっつあんが言っていた隠
れる事の出来る部屋だな。
  確かに、この辺りは兵士が見当たらない。
  多分、あまり必要の無い所なのだろう。
  俺は、あまり気にする事無く進んだ。
  そして、ようやく王妃の部屋へとたどり着いた。
  俺は、扉を少し開けて、耳をすました。
  すると、微かながらも、マリーナとアンドランスの話し声が聞こえて来た。
  助かったぜ。これでようやくお守りが貰えるぜ。
  俺は、軽く扉をノックした。
  すると、
「誰です?  今は私達だけにして欲しいと言いましたはずです。用があるのでした
ら、そこで用件を言って下さい」
  マリーナの声だ。部屋の中には兵士はいない様だな。
「俺だ、トラップだ。用があって来たぜ」
「トラップ!?」
  マリーナは、少し驚いた声を上げた。
  俺が、扉を開けて、部屋へと入ると、マリーナが驚いた様な顔をしていた。
「どうしたのよ?  何故来たの?」
「姫さんが、お前に渡したお守りがあっただろ?」
「ええ」
「それが、今、必要なんだよ」
  マリーナは、俺が言い終わると同時に、お守りを渡してくれた。
「じゃあな、行ってくるぜ!」
  俺は、マリーナとあまり話をする事無く、急いで引き返しす事にした。

第四話「脱出・キスキン国〜前編〜」
  俺は、マリーナから受け取ったお守りを、ポケットに入れると、急いで脱出する
事にした。
  何しろ、あいつらが待ってるしな。
  それに、兵士に見付かっちまったらやばいしな。
  さてと、行くか!
  俺は、廊下を足音を立てない様に気を付けながら、走った。だが、突然、前方の
部屋の扉が開いたのだ。
  何でこんな時に出て来るんだよ!
  しかも、他の部屋の扉までは、距離が有りすぎる!
  くそ!  逃げ場が全く無いじゃねぇかよ!
  ……こうなりゃ、強行突破でも……。
  俺が、考えていると、扉から兵士が出てきやがった。
  しかも、三人か……。やべぇな……。こうなりゃ、かけに出るか。
「おい!  お前、何者だ!」
  兵士の一人が、今にも、切りかかる体制で話し掛けて来た。
  下手な動きをしたら、やばいな。
  しかも、いつの間にか、他の兵士が、俺の後ろへと回り込んでいやがる。逃げ場
は無いな。
  仕方ねぇ、こうなりゃ……、
「なあ!  便所どこにあるんだよ!?  漏れそうなんだよ!」
「はぁ?」
「便所って言ってるだろ!  頼むよ!  何処にあるのか教えてくれよ!」
  兵士は一瞬、警戒していたが、あまりにも唐突な質問だったのだろう。
「え?  あ、ああ。便所なら、俺達が、今、出て来た所だ」
「サンキュー!  恩に着るぜ!」
  俺は、急いで、兵士が出てきた部屋へと入っていった。
  兵士は、警戒心をといたのか、「早く行きな」と、俺に声をかけたいた。
  何とか、ごまかす事が出来たな。
  だが、ここからが問題だな。今度もまた、同じ様にごまかす事が出来るわけがな
いしな。
  しばらく、ここで様子を見るわけにもいかねぇしな。何しろ、今、便所だしな。
  ずっとここにいたら、出入りは必ずあるしな。それによ、臭いな……。
  とにかく、ちょっとだけ、ここにいるか。さっきの奴等も気になる事だしな。
  俺は、少し、ここで様子を見ると、ここから出る事にした。扉を少しだけ開けて、
耳をすました。
  兵士はいねぇ様だな。
  俺は便所を出ると、辺りを見回して兵士がいない事を確認すると、再び廊下を走
り出した。
  もうすぐ階段だという所で、何処かで見た様な奴が階段を降りて行くのが見えた。
  あいつはメレンゲとか言う奴じゃねぇか。あいつ、キンスン国に戻っていやがっ
たのか。
  それに、あいつの隣にいやがる奴は何者だ?
  全身をローブで覆っていて、顔が見えねぇな。
「明日の昼、王家の塔へと出発する」
「奴等は、塔の近くに仕掛けてあった、儂の魔法に引っかかっていたのだぞ?」
「心配無い。先程、兵の報告によれば、塔の入ったものの、出て来たそうだ」
「そうか……」
  おいおい、奴等、塔の近くに兵を忍ばせていたのかよ。
  となれば、早く戻らねぇとな。
「誰だ!  そこにいるのは!」
  いつの間にか、俺の後ろには、兵士が二人もいやがった。
「くそっ!」
  俺は、逃げ道を探そうとしたが、全く見当たらなかった。
「おや、また会ったな」
「はぁ?  何言ってんだ?  お前何て知るかよ」
「とぼけても無駄だ。お前一人か。何故ここに来た?」
「誰が教えるかよ!」
  メレンゲは、鞘から剣を引き抜き、俺の喉笛に突き付けた。
「さてと、もう少し後ろに下がってもらおうか」
  俺は、反抗する事も出来ない状況の為、素直に従って、後ろへと下がった。
「この城には色々と面白い仕掛けがあってな、君に一つ、ゲームをしてもらおうか
な」
  メレンゲは、剣を突き付けたまま、一人の兵士に、小声で何かを言った。
  すると、兵士は、俺の後ろの方にある、猫の像に近付いて、猫の鼻を押した。
  ガタンッ!
  突然、俺の足元が無くなった。
「メレンゲー!  今度会ったら、覚悟しろぉぉぉぉ!」
  俺は、落とし穴の中へと落ちていった。
  そして……。

第五話「脱出・キスキン国〜中編〜」
「く……そ……!」
  俺はメレンゲによって落とし穴へと落とされてしまった。
  そして、地面に叩き付けられて気を失っていた様だ。
  だが、幸運にも軽傷だけで済んだ様だな。
  俺は立ち上がり辺りを見回した。周りは暗く、視界が悪いな……。
  そう言えば、メレンゲがゲームをしてもうとか、なんとか言ってたな……。
  となれば、罠がある可能性があるな。
  なんとしてでも早く出ねぇとな。あいつらが待っているんだからな。
  俺はまず、出口と思われる所を探した。
  調べて見ると、この部屋はほぼ真四角である事がわかった。そして、四つの扉が
ある事もわかった。
  まずは、俺の目の前にある扉を調べた。
  扉には鍵がかかっているな。
「おいおい、なんだよこれ……」
  扉は、開けると爆発するという危険性のある物だとわかった。
  何故なら、扉に『危険!  開けると爆発します』と、親切にも書いていてくれた。
  あからさまに怪しいが、罠がある事は確かだな。
  そんじゃ、いっちょやるか!
  俺は罠をとき始めた。
  そしてしばらくして、ようやく罠の解除に成功した。
  俺は扉をゆっくりと開ようとした。
  古い扉なのだろうか、中々動かないな。
  俺は力一杯に扉を押す。すると、ギギギギ……、と音がして少しづつ動き出した。
その刹那、扉の向こうで爆発音がした。
  俺は、驚いて扉を一気に閉めて、後ろへと走って行った。
  ドゴーーン!
  扉の奥が爆発した……、いや、扉自体にも火薬が入っていた様だな。
  俺は爆発した所に近付いて扉があった所を調べて見た。
  すると、導火線の燃えカスが見付かった。
  どうやら扉を開けると、扉の下に摩擦を利用して導火線に火が点く様になってい
る様だな。
  扉が中々開かなかったのは、その為だろうな。
  俺は、扉の後ろにある部屋へ入ったが、なんと、部屋はとても狭く、行き止まり
の様だった。
  どうやら、爆弾だけを置いていた単なる罠だった様だな。
  俺は元の部屋へと戻り、考えた。
  下手に扉を開ければ罠が待っているな。それに、ここの罠は解除しても更に他の
罠が発動するという、やべぇ罠だな。
  それに、こんな事を続けていたら、身が持たねぇな。となれば、何処か一個所に
絞るしかねぇな。
  俺は、残った扉の三つを調べる事にした。
  一つ目は『危険!  猫出現!』と書かれている。二つ目は『危険!  地獄行き』
と書かれている。三つ目は『危険!  猫に注意』と書かれていた。
  それぞれいかにも怪しい物だった。
  どれかが一つ先へ通じると思われるな。
  俺はまず、いかにも怪しいと思われる猫関係の扉を調べる事にした。
  まずは『猫に注意』の扉だな……。
  俺は、扉に罠があるか調べて見る事にした。
  すると、罠が無い事がわかった。
  俺は慎重に扉を開けた。だが、意外にも扉はすんなりと開いた。
  どうやら、なんとか大丈夫の様だな。さてと、行くか……。
  俺は、暗く、そして長く続く通路を進んでいた。

第五話「脱出・キスキン国〜後編〜」
  俺は、扉に『猫に注意』と書かれた所に入って行った。扉の奥は暗く、長い通路
だった。
  今の所は、罠はないと思うんだが、気を引き締めねぇとな。必ず罠が無いって保
証は何処にもないからな。
  それによ、メレンゲが言ってた『ゲーム』って言葉が気になるな。必ず何かある
はずだ。
  改めて気を引き締めると、暗い通路をゆっくりと、そして慎重に歩いて行った。
  この通路はかなり古いな。この床はとても汚ねぇ。多分、作られても誰も掃除を
していなかった様だな。
  だが、何故掃除をしなかったんだ?  この城は、あまり良い物は置いていないが、
掃除はされていたな。まあ、あの便所は別として……。
  それはいいとして、ここは必ず出る事が出来ると俺は確信している。
  それは、あの爆発した扉だ。
  あの扉には、爆弾と、導火線があった。
  普通、ここが作られて、そして二度と出られない様にしたとすると、あの扉の爆
弾はとても古いはずだ。となると、あの導火線もだ。だが、変なのはそこだ。ここ
を見て、かなり前に作られた事がわかった。それなりに、爆弾が爆発した。何十年
も前の爆弾が、湿気のある部屋の中に置かれていて、運良く導火線に火がついて、
更に運良く爆弾に火がつくわけがない。つまり、あそこに仕掛けられていた爆弾は、
定期的に交換していたと言う事だ。
  となると、出口は何処かに必ずあるという事だ。
  しばらく暗い通路を進んでいると、突然、横から何かが飛んできやがった。
「うわっ!」
  ヒュッ、と俺の耳元をかすめていった。
「な、何だ!?」
  俺は、とっさに悟って、後退した。そして、床をよく見た。
  するとそこには猫の絵が描かれていた。
  多分、俺がここに乗ったからただろうな。となると、猫に注意ってのは、トラッ
プの発動の目印の事を書いていたのか。
  俺は、暗い通路の床をじっと見つめた。
  すると、意外にも嫌な仕掛けである事がわかった。
  普通、床の仕掛けに多いのが、タイルの様に規則正しい並び方をしているのが多
いんだが、これは全くの規則性が無いやつだ。
  ばらばらにセーフの床が配置されていて、しかもセーフの床がとても少ない上に、
ジャンプしなければとどかない様な距離もありやがる。
  こいつは、この先が行き止まりだったら大変だな……。
  俺は意を決して進む事にした。何としてでも、この猫を避けなけねぇとな。
  俺はまず、近くにある何も描いていない床に乗った。続いて次の床に移った。そ
して、次も同じく……。
  だが、ここから先が問題だな。
  暗くてよく見えねぇが、かなりの距離があるな。それに、暗いから間違える可能
性もあるな……。
  だが、今更引き返すわけにもいかねぇしな!
  俺は、目標を確認するとジャンプし、続いてジャンプした。その刹那。俺の頬を、
何か鋭い物がかすめた。
  俺は、体制が崩れそうになりながらも何とか着地した。
  どうやら矢の様だな。それに暗くて見え難かったが、猫の絵が描かれた床に乗っ
てしまった様だな。
  もし、すぐにジャンプしていなかったらやばい所だったな。だが、もうそんなに
やばい所は無さそうだな。
  後は、近くにセーフの床があるので簡単に行けそうだな。
  俺はゆっくりと、そして慎重に進んで行き、無事に進む事が出来た。
  さてと、どうやらまだ先がある様だな。
  俺は休憩する事無く歩き出した。
  しばらく歩くと、何とも信じられない物があった。
「おいおい……。嘘だろ……」
  そこにあった物とは、壁……つまり行き止まりだ。
  何の為に、俺はあのトラップを進んできたんだよ……。仕方ねぇ、戻るか……。
  俺は、今来た道を、そしてトラップのある道を戻った。

  何とか初めの部屋へと戻ってきた俺は、部屋の真ん中で手紙を見付けた。その手
紙にはこう書かれていた。『死のサバイバルゲームを楽しんでくれたまえ  メレン
ゲより』

第六話「暗闇の通路」
  俺はメレンゲの手紙を見て、それを踏みつけた。
「けっ!  ふざけんじゃねぇよ!」
  ぐ〜……、と腹が鳴った。
  ははは、そういや、飯、食ってなかったな。
  俺は、背中を探った。そこで、俺は、ある大切な事を思い出した。
  何と、荷物は置いて来てしまったんだ!
  ここに侵入してすぐに出る事が出来ると思っていたんだが、思わぬ所でメレンゲ
に捕まってしまった。
  荷物を持ってくる訳がなかった。荷物があってはかえって不便だからだ。何しろ、
帰ってくる時の荷物と言えばお守りぐらいだからだ。
  更にポタカンすら持っていない。これじゃ先に進むのも大変だな。
  飯がないって事は、いつかは飢え死にしちまうな……。
  くそっ、こうなったら一刻も早く進まねぇとな。
  俺は残った二つの扉のどちらを開けるか考えた。
  まず、いかにも怪しい『猫出現』の扉を開ける事にした。
  扉を調べた所、罠がある事がわかった。だが、どんな罠かまではわからない。
  俺は、罠の解除を始める事にした。

  しばらくして、多分、罠の解除に成功したと思われるので扉を開ける事にした。
  俺は、ゆっくりと扉を開けた。扉は、ギギギギ、と音を立てて扉が開いた。
  今度は、罠は発動しなかった様だな。
  その刹那、俺の頭に中かがぶつかった。
  そして、それは地面に落ちて行った。
「いてて……」
  俺は、頭を触った。
  別に、血が出ているわけでもねぇな。
  そして、地面に落ちた何かを拾い上げた。
  暗くてよく見えなかったが、拾い上げて見るとそれが猫の像だという事がわかっ
た。大きさは、縦五センチ、横二センチ程の物だ。
  おいおい、まさかこれが出て来るだけって事じゃないだろな!?
  俺は猫の像をポケットに入れると、暗い通路を進む事にした。
  通路を進んで行くと、分かれ道になっていた。
  右側の通路と左側の通路。どっちも怪しいが、行くしかないな。
  俺はまず、右側の通路を進む事にした。
  しばらく進んで行くと、何か壁が変だった。暗くて見辛いが、どうも変だ。
  俺はさっきの猫の像を取り出し、通路に転がしてみた。
  すると、何と頭上から猫の像が降ってきやがった。
  ゴンゴンゴン……、と数え切れない程の量が降って来た様だ。
  突然、ガコン、と音がして床が揺れた。
  おいおい、今度は、一体何が始まるんだよ。
  猫の像が降り止んだはずなのに、まだ音がしてやがる。いや、後ろから聞こえて
来る。まさか……。
  俺は、素早く後ろを振り返った。すると、そこには、勢いよく転がる巨大な玉が
あった。
  どうやら、さっきの床が揺れたと思ったのは床が傾いた音だった様だな。それで
玉が転がりやすくなった様だな。んでもって、玉が何処からか降ってきた様だな。
  くそっ!
  こうなったら走るしかねぇ様だな。
  俺は罠のある通路を走る事にした。
  さっき罠が発動した所を通ると、やはり猫の像が降って来やがった。しかも、突
然、壁から何かが飛んできやがった。
  どうやら矢が飛んで来る様だな。
  さっき壁を見た時、どうも変だと思っていたんだが、やっぱこんな仕掛けがあっ
たんだな。
  俺は矢を避け、猫の像が頭に当たるのを我慢し、更に玉に追われていた。
  くそ、何とか罠の発動する元を探さねぇと、猫の像は我慢できるが、矢が当たる
と厄介だ。何しろ薬も持っていないんだからな。
  走りながら床を確りと見る。
  暗くて見え難いが、床に絵が描かれている事がわかった。
  どうやら、ここでも猫の絵が描かれているな。
  俺は、何とかその絵を避けて走る。
  だが、やはり、踏まずに行こうなど、まず無理だった。
  時々踏んでしまい、壁から矢が飛んで来たりと……。
  通路はまだまだ続きそうだな。
  一体何処まで続くんだよ……。

第七話「罠、そして、罠」
  罠を避けながら通路を進む俺は、ある最悪の状況を考えていた。
  その最悪の状況とは、このまま巨大な石に追いかけられて、行き止まりに着くと
言う事だ。
  まあ、いくら嫌な罠だとはいえ、まさか行き止まり何てねぇだろうな。
  そんな事を考えながら走っていたものだから、突然、罠の床を踏んでしまった。
  矢が横から飛んでくるのを見て、素早く後退した。
  ここの罠の矢は、丁度、俺の進行方向の前方と、罠が発動した所の二個所だけに
飛んで来る様になっていやがる。つまり、間違えて踏んでしまった場合は後退する
しかなかったのだ。
  だが、その事によって転がる巨大な玉に接近されるがな。
  俺は床の罠に気を付けながらも、玉に気を付けて走って行った。

  どれくらい走っただろうか。
  前方にぼんやりと壁らしき物が見えてきた。
  おいおい、嘘だろ!?  行き止まりかよ。まだ、距離はあるものの、行き止まりま
で、あまり時間がないな。まさか、ここで死ねって事じゃねぇだろうな。
  だが、その行き止まりの手前に一つの扉があった。
  だが今回もまた罠がある事は確実だろうな。となれば、何とか時間を稼がねぇと
な。
  だが、果たしてこの巨大な玉を止められるかどうかだ。
  上手くいっても三分はかかるな。その三分をどうやって稼ぐかだ。
  そうこう考えていると、だんだん扉が近付いてきやがった。
  もう、時間がねぇ!
「そうか!」
  俺は、ある名案が浮かんだ。そして、すぐに罠の床をわざと踏んだ。
  すると、突然、矢が飛んで来やがった。素早く後退して矢をかわし、じっと床を
見た。
  すると、床の絵が二種類ある事がわかった。一つは、猫が右手を上げている絵、
もう一つは、左手を上げている絵。
  さっき俺が踏んだのは、どうやら右手を上げている絵だった様だな。
  と、また考えていると、ゴンゴンゴン……、とすぐ後ろで音がして来る。
  くそ、もう追い付いて来やがったか。
  俺は急いで走り出した。だが、そこはもう扉の真横だ。これ以上奥に行く事は死
を意味する。
  賭けに出るか!
  俺は意を決して左手を上げている絵を踏んだ。すると、頭上から猫の像が降って
来た。更に俺は罠の床を踏み、像を降らした。そして、それを何度も繰り返した。
近付いてくる巨大な玉に恐れず、何度も何度も踏みつづけた。すると、次第に猫の
像が山となった。
  巨大な玉が俺の目の前までに迫って来た時だった。
  突然、巨大な玉が止まったのだった。
  塵も積もれば山となる、か……。
  俺の目の前で止まった巨大な玉を触ってみた。
  グラグラと、まだ不安定な状態だな。いつ動き出すかわかんねぇな……。早く扉
を開けねぇとな……。
  俺は扉を調べる事にした。
  どうやら爆弾が仕掛けてある様だな。
  俺はすぐに罠の解除を始めた。
  しばらくして罠の解除に成功すると、扉を慎重に開けて部屋の中へ入っていった。

  部屋の扉を閉めたその刹那、前方から、俺の腰辺りめがけて矢が飛んで来やがっ
た。俺は、慌ててしゃがんだが、右側からも矢が飛んで来やがった。前に転がる様
に避けると、今度は天井から矢が飛んで来やがった。それを更に転がって避けた。
  ドン、と壁にぶつかった俺は素早く立ち上がった。その刹那、後ろの壁から槍が
飛び出して来やがった。
  それを避ける為に壁から離れて部屋の中央まで来た。
  何とか罠がおさまったと思い、一息ついたその刹那、部屋が突然揺れ出したやがっ
た。
  おいおい、今度は何が始まるんだよ。
  ふと天井を見上げた俺は変な事に気が付いた。天井には、びっしりと、槍が取り
付けていがる。
  更に天井がゆっくりと迫って来てやがる。
  おいおい、嘘だろ!?
  その時、俺は思った。悪い夢なら早く覚めて欲しいと……。

第九話「逃げ場は何処に?」
  俺は迫り来る天井にある槍を見て一瞬冷静さを失いかけたが、一度ゆっくりと深
呼吸をすると、冷静に部屋の中を見渡した。
  部屋はそれほど広くない大きさで、扉が二つある。今、俺が立っている場所から
右手方向に見えるのがさっき入って来た扉だな。
  そして、左手方向に見えるのがまだ行っていない扉か……。
  さっき入って来た扉は罠の解除は終わっている。だからと言って、そこに行くと
あのローリングストーンが待っている。何故なら、ある玉が壁にぶつかった音がま
だ聞えないからだ。とすると、あの玉はあそこで止まったままだと言う事になる。
そこに俺が出て行くと死が待っているわけだ。となると、残るは左手方向の扉だな。
  俺は急いで扉に向かうと、まず罠があるか調べる事にした。すると、ここもまた
扉を開けると爆発する罠が仕掛けられている事が判明した。
  俺は上から迫り来る天井の槍をちらっと見て、一気に罠の解除を始めた。迫り来
る天井の槍と戦いながら……。
  罠の解除に時間がかかれば、天井は迫って来る。だが、幸いな事に、天井の迫っ
て来る速度が、速くは無かった事だった。
  それによって、俺は少し安心して罠の解除をする事が出来た。
  少しして、扉の罠解除に成功した。
  そして、俺はもうそこまで迫って来ている天井を見た。
  あと二十センチ程で俺の頭に当たるな。
  そう思って、徐に扉を開けようとした。だが、
「あれ?  変だな?  開かないぞ……」
  俺はそこである事を思い出した。
  罠を解除する事だけに集中していて、扉に鍵がかかっている事に気が付かなかっ
たのだ。
  今から鍵を開けるなど、無理に近い事だ。とすると、この部屋の何処かに鍵が落
ちている事を願うしかねぇな。
  俺は部屋の中を注意深く見た。すると、部屋の隅に椅子があり、その上に鍵が置
いてある事に気が付いた。
  俺は急いでそこに駆け寄ると、椅子の上から慎重に鍵を取ったその刹那、壁から
大量の水が出て来やがった。
  俺は急いで扉の所へ戻ると鍵を見た。その鍵には数十個の違った形の鍵が付いて
いやがった。
  おいおい、もしかしてこの中の一つだけが正解の鍵だって事かよ。
  手当たり次第に鍵を鍵穴に入れて回してみるが中々鍵が合わない。
  俺が焦っていると、天井はそれを嘲笑うかの様に迫って来やがる。
  更に床に溜まっている水は既に俺の腰まで来ていた。
  俺は更に鍵を鍵穴に入れて回してみるが、どれもハズレだ。
  何気なく天井を見た俺は驚いた。何しろ、すぐそこまで迫っていたからだ。
  もう時間がねぇ!
  そう思って鍵を鍵穴に入れて回した時だった。突然、ガチャリ、と音がしたのだ。
  俺は素早く扉を引いて開け様とした。
  だが、扉が中々開かないのだ。多分、水がある為だな。
  俺が思いっきり扉を引くと、扉が開いたと同時に、水が一気に部屋から出て行っ
た。
  素早く部屋から出ると、扉を閉めたのだった。
  一息ついて、進もうかと思った矢先、突然、ゴンゴンゴン……、と何処かで聞い
た事のある音が聞えて来た。
  まさかな、と思いつつ前方をよく見ると巨大な玉が迫って来ている事が判明した。
  折角部屋を出たと言うのに、また玉が来るとはな……。
  などと考えていると、玉がすぐそこまで迫って来やがった。
  まずいな、逃げ道はもうない。一体どうすればいいんだ。
  俺は必死に考えながら、前方に迫り来る巨大な玉を見つめた。

第十話「探せ! 逃げ道!」
  俺は目の前に迫って来る巨大な玉を見つめて、少しではあるが死を覚悟していた。
  今まで辛い罠だろうと乗り越えてきたのだが、今回ばかりはどうもやばいな。何
しろ、丸腰で逃げ道すら無い、更に時間も無い。
  だが、決して希望は捨てなかった。人間、希望を捨てようなどと思っては駄目だ。
それが、如何なる状況であろうともだ。
  俺は今出て来た扉を開けようとした。だが、この扉は押して開けなければならな
いのだ。
  今この部屋の中は天井が落ちてきているはずだ。つまり、この扉は開けようがな
いって事だ。つまり、俺の逃げ場は完全に無いって事だ。
  だが、もしかしたら天井が元に戻っているかもしれねぇな。
  俺は扉を開けようとしたが扉はびくともしない。
  結局、無理だって事かよ……。
  俺は二度と開かない扉を一蹴りすると迫り来る巨大な玉を見つめた。
  刻一刻と迫る玉は大きく見えてくる。
  くそ、メレンゲのヤロー、ふざけやがって。ぜってーに呪ってやる!
  俺はメレンゲへの怒りを覚えながら迫り来る玉を見た。玉はもうすぐそこまで迫っ
て来ていた。
  更に、玉が迫って来てもう数十秒ももたない状態だった。
  その刹那、何処かで、ガコンッ、と音がした。
  近い!
  俺は音がした方向を見た。そこは、開かない扉だった。もしかしたら、開くかも
しれねぇな。
  俺は扉を押して開けようとしたが、やはり結果は同じだった。
  もう、ここまでか……。
  巨大な玉はもう数秒で玉が来るという所で俺は最後の賭けに出た。扉を押すので
はなく、引いて開けるのだ。
  すると、扉は見事に開いたのだ。
  部屋の中は天井が落ちている状態で、部屋の中には入れない程だった。だが、そ
の天井の上に登れる程の隙間があった。俺が入るには十分な隙間だ。
  俺は隙間から素早く天井に登と同時に、さっき入って来る為に開けたままの扉が
巨大な玉によって潰された。
  俺はやっとの事で一息をついた。
  だが緊張が解けたのか腹が、ぐ〜、となった。
  へっ、食料すら無いのは辛いな……。
  俺は気を取り直して辺りを見回した。
  暗いながらも、何か柱の様な物が見えた。
  俺は辺りに罠がないかを確かめながら、その柱の様な物に近付いた。すると、そ
の柱にはボタンがある事がわかった。
  もし、ここでボタンを押さずにいるわけにはいかないな。
  俺がボタンを押すと、床が、つまり天井が動き出したのだ。
  どうやら、上へと向かっている様だな。俺は上へと向かう天井の上で座っていた。
  しばらくすると、ガタンッ、と音がした。
  辺りを見回すと、扉がある事が判明した。その扉を調べた所、罠がない事がわかっ
た。
  ゆっくりと扉を開けると、そこは小さな部屋だった。
  部屋の中には一つの鍵があった。だが、その鍵が何処の鍵なのかはわからなかっ
た。しかし、こういう類いの物は持っていて損はしない。
  俺は鍵をポケットの中に入れると部屋を出た。
  さっきの柱の所に戻って、ボタンを押した。すると、天井が再び動き出し、下へ
と降りて行った。

  ガタンッ、音がして、さっき入って来た扉の隙間を探した。隙間は、俺の右手方
向にあった。
  俺は扉の隙間から出ると、通路の後方を見た。そこには巨大な玉があった。
  多分、壁にぶつかって止まった様だな。
  俺は少し安心して通路を進み出した。と言うよりも、戻っているんだな。
  通路を進むと、こっち側には罠が見当たらない事が判明した。
「まったく、ついてねぇぜ……」
  俺は思わず呟いたその刹那、足元の小さなスイッチを踏んでしまった。
  カチッ、と音がしたと思うと、続いて、ガコンッ、と大きな音がした。すると、
床が突然揺れたかと思うと、後ろで何処かで聞いた事のある音がして来やがった。
  おいおい、もしかして……。
  振り替えると、そこには巨大な玉がまた迫って来ていた。
  俺は思った。俺は玉に好かれていやがるな、と……。

 1998年3月26日(木)11時52分44秒〜4月05日(日)23時20分35秒投稿の、帝王さんの小説です。
 時期的には、新4巻後からこの話は始まります。小説掲示板一の名物、あの爺チャンはまだ出てきていませんね。

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