<詩>胸の奥を……

 何が始めだったんだろう……
 どこから生まれたんだろう……
 本当にそれは、いつのまにか俺の中にあった。
 そして……だんだんと心の奥に広がっている……

 彼女が笑う時……嬉しくなった。
 彼女が泣いた時……胸が痛んだ。

 でも始めは、
 自分のもう一つの家族だから……大切なんだと思っていた。
 大切な仲間だから……愛しいんだと思っていた。
 友人みたいで、手のかかる妹みたいで……
 お互いを理解している双子の妹みたいで……
 傍にいるのが当たり前だった。

 でも今は、
 彼女が他の誰かに微笑むたび……
 彼女が誰かと話しているたび……
 胸の奥で何かが疼いた。
 誰かが彼女に話掛けるたび……
 誰かが彼女に触れるたび……
 胸の奥で何かが苛立ちを生み出した。

 俺は、彼女を……

 それでも俺は、
 何事もなかったかのように、彼女に微笑む……
 何も気付かないように、話掛ける……

 今を失いたくないから……今の関係を崩したくない。
 彼女を失いたくないから……その微笑みを手に入れられない。
 いつまで俺は、俺でいられるだろう。

 彼女は俺に「俺は俺でいい」と言ってくれた。
 名前の重みは消えないけれど、気に病むことは……ない。
 でも、この胸の奥の何かには……いつまで堪える事が出来るんだろうか……
 どうすれば……いい?
 俺は君を……失いたくないだけ……

 もし、俺に君を守ることの出来るだけの力が出来たら……
 もし、俺に君を幸せに出来るだけの勇気を持てたなら……
 君に聞いて欲しい……俺の本当の気持ちを……
 誰よりも幸せに出来るだけの自信と共に、俺の気持ちを……

 君を、愛している。



 1999年7月24日(土)17時29分43秒投稿の、龍鈴さんのクレパスな詩です。なんだか、他人を見てる気がしないんですけど……(笑)

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