自分だけの天使に

 あいつの瞳におれが映る事。
 それは神様が用意された最高の祝福。
 おれはあいつを離さない。
 あいつを……おれだけの天使に……一一。

 「愛してる」
 それは口に出来なかった言葉。
 意気地なしの自分は、「愛」という名のプレゼントにカードを添えられない。
 「行かないで……」
 心が壊れそうになる。
 割れたココロの破片は、ナイフのように突き刺さる。
 「怖かったんだ」
 天使の翼が羽ばたいて、いつか大空へと消えてしまうのが。
 たとえあいつが悪魔になってもいい。
 深く大地に繋ぎ止めていたい。
 「さようなら」
 それは何にサヨウナラ?
 衰弱しきった自分の心……?
 それとも一一。
 【愛スル人ニ、サヨウナラ?】
 弱り切ったおれの心は逃亡の道を行く。
 許容範囲をはるかに超えた、なかったはずの道を一一。
 【嫌ジャ、ナカッタノ?】
 嫌だった。
 そう、何よりも怖かった道。
 【何故、行クノ?】
 「鎖がなかったから」
 あいつを繋ぎ止める鎖がなかった。
 大地でもがいてる小さな天使は、大空へと去ってしまいそうで……。
 飛んで行くあいつは見たくなかった。
 心が霧に包まれるから……。
 だからおれは、目を隠して逃げ出して……。
 【鎖ナラ、ホラソコニ……】
 これは幻?
 目の前ではあいつが笑ってた。
 「愛してるよ」
 唇に触れる確かな光。
 この愛は偽り?
 それとも……一一

          「Truth」

 1998年8月27日(木)16時48分32秒投稿の、蒼零来夢さんの短編です。

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