闇を知る者(121〜130)

(121)〜決勝の相手は・・・

「えっ!?」
 ラーガが一瞬とまどった。
いっきに間合いをつめた二人。
 だが、いきなりレイが両手をあげた。
振りかぶったのではない、まるで、降参をするように、無防備に。
─ウラがアリアリだ─
 そんな安っぽい罠にかかるか、とばかりに、止まる。
が、次の瞬間、彼は自分の目を疑った。
─え!?─
投げたのだ、レイが、双剣を。
─いったい、なんのつもりなんだ!?─
 それを、手で払う。
そして、気付いた。
 相手が、自分の目の前にいること。
そして、彼が手にしているのが。
 双剣ではなく、普通の剣であること。
─まさか!!─
 あの瞬間、彼は自分の双剣を、真ん中から折ったのだ。
そして、一方を投げ、体勢を崩させる。
─謀られた!─
 横薙ぎに振られる剣。
そして、背を反る自分。
─しかたない!!─
 そして、次の瞬間。
その会場の全ての人間が、沈黙した。

「バケモノが・・・」
「まだ、てめぇの方が上だがな」
 皮肉を言える余裕などない。
だけど、それでも自然と口からでたのだ。
「たしかに、理屈ではできる、しかし・・・」
「普通、やろうとか思わねぇよ」
そして、勝者の名前が告げられた。
「勝者!!ラーガ・メリアムス!!!」
 だが、会場はいぜん沈黙を守っていた。
そして、選手が去っていった。

「おつかれさん」
「疲れた、ホント」
右肩をおさえながら、レイが言う。
「まさか、あぁかわされるとは、な」
「同感だ」
 あの、瞬間。
ラーガがおもいっきり背を反り、そして、地面に手をついたかと思うと、そのまま後ろに回転していったのだ。
 そして、足を着くや否や、そのまま体をまるめて前に回転、カカトを右肩にクリーンヒット。
そのまま、試合終了となった。
「わるいな、約束、やぶっちまった」
「気にするな」
魔導師に治療されながら、会話が続く。
「ずいぶん、苦戦したみたいね」
「あんたは、あいつに勝てる?」
「なんでもありのデスマッチなら勝てるよ」
 笑ってクリスが言う。
こいつが言うと、説得力あるなぁ。
「オヤジなら、勝てだろうな」
「オヤジ?」
「オレに剣術仕込んでくれた。いや、姉貴にもな」
「そう言えば・・・」
そんな話を、聞いたようなきがする。
「おい、どこ行くんだ?」
「トイレ」
 事なげもなく、よく言うよ・・・。
クリスが、どこかに消えていった。
「れ〜い〜」
上の、観客席から、声が聞こえてきた。
「なんだ、姉貴」
 振り向きもせずに、レイが呟く。
あきらかに仏頂面だ。
「よくやった」
「ありがとよ」
 照れくさそうに鼻をかくレイ。
それが、とても子供っぽくて、笑いがこみ上げてきた。
「サード・フェズクライン選手、本部までお願いします」
アナウンスが聞こえてくる。
「んじゃ、行ってくる」
「これ終わったら、パーティー開くからな」
絶対勝ってこい、と言わんばかりに、レイが左手を上げる。
「オレはウソツキじゃない」
皮肉たっぷり、言ってやった。


(122)〜決勝戦開始〜

ついに、きた。
「さぁ、第一回ガイゼルン武術大会」
この、舞台に。
「最後の試合」
さまざまな思い。
「それすなわち」
人は、何を胸に?
「決勝戦だ!!!」
オレは、誓いのために。
「まずは、武器はナシ、多彩な連係の攻撃でここまで勝ち上がった、ラーガ・メリアムス選手!!!」
世界一になるはずだった。
「もう一方は、武器は木刀、数々の強敵を、驚異の一撃必殺で沈めてきた、サード・フェズクライン選手!!!」
ゼフ・ラグランジュの名に賭けて。

「両者、開始線へ!!」
 五メートルほどの距離を置き、対峙する。
全てが、見えなくなってきた。
 倒すべき相手以外の全てが。
「はじめ!!!」
 オレは片手中段。
ラーガは、右手を顔の前、左手をそこよりやや斜め下にかまえている。
 すると、ラーガが話しかけてきた。
「決勝、ですね」
「そうだな」
「ご感想は?」
「よくやった、と思っている」
「そうですね、ボクは、とりあえずここ、という感じです」
「へぇ・・・」
「ボクはまだ上を目指します」
「オレもだよ。ここで満足するわけにはいかないんだ」
「似てますね」
「違うよ」
「何がです?」
「重みが、な」
 そして、疾った。
右手から、最短距離で胸を突きに行く。
 それが、かわされると同時に、横薙ぎになぐ。
─かわす、か─
「あまいですよ」
右拳が、眼前まで迫ってきた。
「おまえこそな」
 それが、止まった。
いや、正確には、みぞおちに入ったオレの左拳が止めたのだ。
 追い打ちをかけるように、刀を振るが、それをかわされ、間合いを取られる。
「卑怯ですよ、剣士なのに」
「昔はおまえと同じようにやってたからな」
 そう、あいつと逢うまでは。
この手で、幾人もの人の血で汚してきたのだ。
「こまったな。懐に入る、っていう利点が殺されちゃった」
 長いモノは、懐に潜り込まれると、逆に振れなくなり、邪魔になってしまう。
遠いところから振られる剣をかわし、懐に入り、一撃をいれる。
 それを、あいつはできる。
だから、わざと片手で木刀を持ち、左手を自由に振るようにする。
 懐にさえ入らなければ、こちらが勝てる、という寸法だ。
「じゃ、続けようか」
「えぇ」
すると、ふと、ラーガが言った。
「また、同じコトをすると。あなた、負けますよ」
─マジっぽいな─
 が、考えるひまはない。
そして、二人の距離が縮まっていった。


(123)〜賭〜

「あぁっ!!!」
 こんどは、むこうから攻めてきた。
バカ正直な右正拳。
─裏があるだろうし、どうする?─
 さきほどの台詞がウソでなければ、ここから何かが来るはず、だが。
なにもきそうにない。
─かわしておくか─
半身をそらに、それをかわす。
「かかりましたね」
 不敵な笑みをを浮かるラーガ。
その時、右手首が、なにかに捕まれた。
─えっ!?─
 その後、何が起こったか、正確にはわからない。
ただ、気がついたら、転んでいた。
「ちっ!!」
ラーガの手を振りほどき、間合いを取る。
─なにをしやがった?─
 まったくわからない。
右手首をつかまれ、そして、そこから、何かがきた。
「もう一回、いきますよ」
 今度は、右の蹴り。
それが、横から頭をおそってくる。
「くっ!!」
それを、腕で止める。
「わっ!!」
すると、左足を滑らせたらしく、こちらに滑ってくる。
「覚悟!!!」
木刀を、地面につきたてるように振り下ろす。
「そっちがしたほうがいいですよ」
 不意に、ラーガの左手がオレの右足にまきついた。
そう思った瞬間、腹にかかとが当たり、それと同時に背中から転けるようになった。
─なっ!!?─
 激痛が右足にはしる。
両者、足をお互いの顔に向けている体勢で、ラーガは手を足に巻き付けている。
 その部分が、かなり痛い。
「負けを認めてください」
「だぁ・れぇ・がぁ!!!!」
 右足に、全神経を集中させる。
そして、全精力を傾けた後、おもいっきりふりあげる。
「なっ!?」
「うらぁっ!!!」
そして、そのまま頭から打ちつける。
「いったった・・・」
「とどめぇ!!!」
 右手を上にして、左手をそえる。
そのまま、振り下ろす。
「まさか、ちょっと・・・」
「地・断・閃!!!!!」
振り下ろされた右腕。
「うわぁっ!!!」
 それを、両手を交差し、止めようとするラーガ。
が、その時、右足に激痛が走った。
「痛っ!!!」
威力が鈍り、その両腕に阻まれた、その時。
─なっ!?─
 体が、妙に浮いてきた。
上から、巨人に摘みとられるように。
─耐えろ、耐えるしか・・・─
「耐えれた、みたいですね」
両手をダランとだげ、ラーガが間合いを取った。
「あぶなかったですよ、正直。防げたけど、これで両手を防御にしか使えない」
「それは、こっちもだよ」
 右足の痛みが本格的になった。
後一回しか、激しい動きができない。
─どうする?─
 地断閃を放っても、おそらく止められる。
そうすれば、結果は決まったも同然だ。
─そういえば・・・─
 あの時の浮力感。
それと、あの時、あいつがつかった技。
─あるいは、これで・・・─
「じゃあ、最後、いこうか」
一か八かの賭。
「えぇ、これで最後の」
「お互い、一撃だ」


(124)〜旅立ち〜

狭まる間合い。
─さっき考えついた、あれを、試す─
─たぶん地断閃がくる。それを、防いで、蹴りを─
 二人の思惑。
そして、サードが大きく構える。
 地断閃の構えだ。
─やっぱり、きた─
─止めようが、止めまいが、オレの勝ちだ─
 間合いが狭まった。
だが、刀が届く間合いだ。
─なるべく、鍔のほうで止める─
─止められるな、けど─
「地・断・閃!!!!!」
 振り下ろされる木刀。
それを、両手を交差して止めるラーガ。
─ここで、一撃を─
─きたぞ!!!─
サードに、さきほどと同じ浮力が、体にかかる。
『ここだ!!!』
 二人の思いが交差した。
そして、二人がそれぞれの行動に出る。
─えっ!?─
 ラーガの蹴りが外れた。
かわせる距離ではない、それどころか、見えない。
─・・・・・・まさか!!!!─
 手の交差を、ようやく離す。
だが、すでに遅かった。
「オレの、勝ちだ!!!」
 勝ち誇ったサードの顔。
ラーガの交差した腕を支点に、そこから回転したのだ。
 現代で言う、前方宙返り。
「名付けて・・・」
 左足が、大きく振りかぶられる。
「龍・牙・砕!!!!!!」

「へぇ、結局あんたたち、一緒に行くの?」
ケルンが心底驚いている。
「そっ、もっと強いヤツに会いに行くために」
 笑顔でこたえるラーガ。
そして、その横に立っているのは、サードだ。
 彼のすすめで、元シー・キング海賊団のいるケルアイニスまで行くことになったのだった。
「おまえらは、これからどうする?」
「このバカが、負けちゃったから。ここの滞在費もあるし、しばらく傭兵生活よ」
と、レイの頭を叩きながら、ミネルバが毒づく。
「しゃーねぇーよ、姉貴。こんなバケモノが二人も出てたんだから」
「あんたもバケモノの仲間入りしなさい!!」
「ば〜か、オレはそんなに欲ねぇよ」
 女性陣にいじめられ、仏頂面のレイ。
その時、全員が声を合わせて笑った。
「んじゃ、これでな」
「あぁ、いつか、遊びに行くよ」
 そのまま、別れようとする五人。
だが、そのうちの一人が、一人の手を引いた。
 ミネルバが、サードを。
「なに?」
「うんん、また、会えるよね」
 ふと、その言葉の意味を考える。
だけど、それ以上の深い意味が、この時のサードはわからなかった。
「あぁ、会えるさ。おまえらが、会いに来てくれたらな」
「うん、じゃっ」
「あぁ」
そして、二人は手をほどいた。

「でも、世の中は広いな。おまえより強いヤツが、何人もいるんだろ、そこ」
「あぁ、ケルアイニス。あそこはバケモノのたまり場だ」
「そりゃあ、私の可愛い部下たちが住んでるんだから」
 いきなり後ろで声がかかった。
驚いて二人が振り向くと、そこにはクリスが立っていた。
「なに?この人」
「そのバケモノの中で一番強いヤツだよ」
「失礼な。女性に向かって」
 事実、クリスは女である。
これが、サードの悩みの種でもあるのだが。
 つまり、自分が今のところ目指している人間が、女だということ、である。
「で、なんの用?」
「ケルアイニスに行くんだって?」
「聞いてたのか・・・」
「そう」
 ラーガは、ただ、この二人の会話を聞いているだけだった。
あのサードが、完全にこの女に負けている、という事実に驚いているのだ。
「それじゃあ、ショウに伝言。しばらく連絡とれないって」
「どして?」
「ちょっと、旅団が遠出でね。郵便代のバカに高いところに」
「あぁ、わかった。伝えとく」
「急用あったら、ジェームス遣わせてね」
「了解」
「それじゃあ、よろしくね」
そう言うと、振り向きもせず、ただ、手を振って走っていった。
「あれが、ねぇ」
どうも納得のいかない様子のラーガ。
「やってみればわかるよ」
頼りなく笑うサード。
「で、ケルアイニスってどこ?」
「ドーマ、知ってるか?」
「あぁ、白い龍の飛来したって伝説の?」
「そう。そこまで乗り合い馬車。その後、東南に歩いていく」
「どのくらい?」
「そうだな・・・三日ってところか」
「じゃあ、食料いっぱい買い込まなくちゃな」
「んじゃ、行くか」
「おう」
二人の青年が、旅立った。

         第一回ガイゼルン帝国武術大会
    この大会から二年後、この帝国はクーデターにより滅んだ
           最初で最後のこの大会
         優勝者サード・フェズクライン


(125)〜ケルアイニス〜

「ショウ、いるか?」
 勝手にドアを開け、中に入る。
南の方に窓が二つ、その窓のそばに大きな本棚があり、反対の壁の方に応接用の机と椅子。
 中央は、ひろびろとしたスペースが広がっていり、奥にはドアがある。
「サードか?」
そのドアの方から、声がかえってきた。
「入るぜ」
「ちょっとまってろ」
 椅子に座り、ショウを待つこと五分。
奥のドアから、ショウが入ってきた。
「優勝、おめでとさん」
「聞いてたのか?」
「人が世界中をまわるのと、噂が世界中に広がるのじゃ、速さが違う」
「だな」
ここで、ショウの視線がラーガに向けられる。
「こいつは?」
「決勝戦の相手」
「それが、なんの用だ?」
「この街で、腕をみがきたい、だと」
と、ここで意味ありげな目配りがされる。
「わかった、家の方を手配しておく」
そう言うと、奥の方に去っていった。
「どういうことだ?宿屋を手配してくれればいいんだが・・・」
ラーガが不思議そうに言う。
「何年かかるかわからないからな、この街の連中、全員に勝つには」
事実、サードはまだ十人ほど残しているのである。

「あぁ!?ケルアイニスに行くだぁ!?」
「こら、レイ。そんな大声ださないでよ」
 ケルンがレイをなだめる。
ここは大衆食堂であるからして、全員が一瞬注目するのだ。
 が、すぐに目をそらして、黙々と、あるいは騒ぎながらメシを食う。
「でも、ミネルバ。いくらサード君に誘われたからって、今行くのは・・・」
 かなり危険だ、と言いたいのだろう、ケルンは。
今、ここガイゼルン、そしてロンザの間で、ケルアイニス進攻の話が進められている。
 おそらく、三年後あたりに、攻めるとの話だ。
理由は、ケルアイニスにある膨大な資源。
 鉄や、まわりに広がる広大な森林、泉、そして、銀山。
これらをあの二カ国が狙っているのだ。
「なにも、いまから行くってのは・・・なぁ」
「でも、今行かなきゃ、もう、会えないかもしれないから・・・」
 その一言に、レイとケルンはかたまった。
これではまるで、戦争に行く恋人を見送りに行く,女の台詞ではないか。
 さらに、冷や汗をかいたのはレイだ。
物心ついた時から連れ添っている姉だが、色恋沙汰とはまったく無縁だったのだ。
 もてなかったワケではない。
姉が男勝りだったこと、そして、本人がそのあたりに疎かったことがある。
 その姉が、そのような一言を口走った。
まるで北極の冬のような寒さである。
 と、ここで、もう一つ思い出したことがある。
一度思い立ったら、全て実行する姉の実行力を。
「わぁった、行ってやるよ」
 頭をかかえながら、弟、レイ・メグリアーザは言う。
それを聞き、姉、ミネルバ・アランは喜ぶ。
 そして、セルフィーユ・ケルンは呆然とするしかなかった。

              そして
            運命が始まった


(126)〜到着〜

「おつかれ」
「・・・・・・あぁ」
 かなり疲れている様子のラーガ。
ベットに沈むなり、寝息を立て始めた。
 ところどころに傷がついており、血がにじんでいる。
『水よ、その全てを癒やす力よ この者の傷を癒やし賜え』
ヒールの魔法をかけ、それを治す。
─に、してもたいしたヤツだ─
 この一ヶ月、毎日、街の誰かに挑戦し、だいたいの勝負に勝ってきている。
それには、ショウも驚いていた。
─大したヤツだな─
 あいつが素直に誉めるのを、始めてみたような気がする。
それほど、ラーガは凄いのだ。
「ふぅ・・・」
 オレはと言うと、最近は本を読んでばかり。
あの大会に優勝して、ここに帰ってきてから、なにかが抜けて気がして、やる気が出ないのだ。

「あぁ、サード・・・」
 小一時間ほどが過ぎ、ラーガが顔を起こした。
そのまま、ベットから降りる。
「どうだ?体の調子は」
「上々、それにしても、ここに来てよかったよ」
「よくやるよ」
「おまえは、傭兵の仕事をやらなくていいのか?」
「どうも、やる気がでなくてね」
本を伏せて、ラーガを見る。
「そうそう、おまえの家、明日には出来るらしいから。明後日には移れるらしいぞ」
 今、あの山小屋で、ラーガと二人でくらしているのだ。
あれから一ヶ月、ここから外に出たのは、数えるほどしかない。
「サード、おまえ、かわったな」
「そんなにつきあい長くないだろ。一ヶ月しか一緒にいてないんだが」
「いいや、おまえと戦った時、おまえは、もっと生き生きとしていた、けど」
いったん言葉をきるラーガ。
「今、おまえは死んでいる」
「生きてるよ、オレは」
 と、反論しながらも、実はそうかもしれない、と思った。
なにかが、足りない、なにかが、抜けている。
「なんか、精神的に病んでるのか?」
「そんなことはないよ」
 そう、それだけはないはずだ。
自分にそう言い聞かせるようにして、目をつぶった。
─・・・・・・─
「バカだな・・・」
「あぁ!?」
「いや、なんでもない」
 そう、あいつは、オレが封印したんだ。
もう一人の、自分を。
─もしかしたら、そんなところに、理由があるのかもな─
窓の外を見ると、夕日が落ちていった。

「あのぉ〜、すみません」
「はい」
「えっと、この街で一番安い宿屋って、どこですか?」
「あぁ、それだったら、この道をずっと真っ直ぐ行ったところに『山の家』って宿屋があるから。そこに行ってごらん」
「あ、ありがとうございます」
 道を歩いていく三人。
星が、空に散りばっている夜。
「あぁ〜あ、すっかり夜ね」
「まぁ、途中あれだけのモンスターと戦ったから、しょうがねぇよ」
 ケルンとレイが、先頭を歩く。
そして、ミネルバは、自分の胸の中にあるモノを、しっかりとかみしめながら歩いていた。


(127)〜疑惑と確信〜

「そういや、ショウ。ジェームスは?」
机の上にあった知恵の輪を両手でいじくりはじめる。
「あいつなら、今、ガイゼルンかロンザに言ったはずだ」
「どうして?」
「いや、ちょっと、な」
 曖昧な言葉でその場を逃げようとしている。
直感的にそう察したサード。
「なんか、おっぱじめるのか?」
 よまれた・・・。
あきらめるショウ。
「こっちから始めるんじゃない。向こうから、な」
「戦争、か」
無言で頷くショウ。
「1ヶ月前、ちょうど、おまえが帰ってきた時ぐらいだな。地方に散りばめていた諜報官から、連絡が入ったんだ。
ガイゼルンとロンザが、こちらを狙っているってな」
「いつぐらい?」
「おそらく三年後」
「で、応じるのか?」
「無論だ。俺たちの理想郷を、ここで潰すわけにはいかない」
「オレの台詞だぞ、それ」
 理想郷─
ここは、その第一歩だ。
 傭兵をしながら、世界を歩き、神獣を見つけ、この街を紹介する。
そうして、もう百人以上の神獣を集めてきた。
─もう一度、人間と神獣の共存する世界を─
「その時は、シー・キングの秘宝、全てを解放してでも勝つ」
「クリスは?」
それで納得するのか?と目で聞く。
「連絡がつかなかったことにすればいい」
 あいつがその戦争に参加すれば─
─モシ、アイツノスベテガカイホウサレレバ─
「じゃ、行ってくる」
解けなかった知恵の輪を、机の上に置く。
「どこに?」
 まさか、ロンザやガイゼルンじゃないだろうな。
後ろ姿に目線を指す。
「墓参りだよ」
そのまま、出ていった。

             十分後─

「ショウさん、いますか?」
 さきほど、サードが挑戦していた知恵の輪を解いたと同時に。
玄関の方から声が聞こえた。
「開いてるよ」
 それだけ返事をする。
─あの、ラーガという男だ─
 声でそれがわかった、が。
一人じゃない。
 たぶん、他に三人。
油断なく、解けた知恵の輪を机の上に置く。
「入ります」
 そうして、入ってきたラーガ。
後ろから、三人の人間がついてきている。
 女二人に男一人。
「どうした?」
ラーガの顔だけを見据えて言う。
「あの、サードは?」
「墓参りに行ったよ」
「あの、どこのですか?」
後ろの方にいた、緑の髪の女が聞いてくる。
「この方たちは?」
「サードが、ガイゼルンの方で知り合った・・・」
「へぇ・・・」
他の二人の顔を見ようとした、その時。
「あの、質問に応えてください」
さっきの女が問いつめてくる。
「それは、言えない」
机の上の知恵の輪を、一つに戻す。
「どうしてですか?」
「約束だ。絶対言うなと、二人から言われている」
 そう。
サードと、船長。
 この二人の大切な人─ゼフ・ラグランジュとセイン・アラン
その二人の『遺体無き墓』の場所は、三人だけの秘密だから。
「いつ戻って来るんですか?」
「さぁ、な。まぁ、今日中に戻ってくるのは確かだ」
「ふざけないでください!!!」
「ふざけてなんかいない」
 どうも、嫌われたらしい。
─これだから女は嫌いだ
「ミネルバ、抑えて」
 もう一人の女が、それを止める。
─ミネルバ、か
 そう言えば、船長の本名はそうだったな。
ふと、思い出す。
「そうだ、姉貴。ここに帰って来るってコトはわかってるんだからよ」
 もう一人の男も、それを止める。
─えっ!?
 その顔を、マジマジと見つめた。
─似ている、いや、似すぎだ
 そう、あの男に。
あの、副船長に─
「ところで、あんたらの名前は?」
 あくまでも平静を保ちながら聞く。
─もしかすると
 そういう期待が、どんどん膨らんでいく。
「私は、セルフィーユ・ケルンです」
金髪の女がこたえる。
「オレは、レイ・メグリアーザ」
─やっぱり─
 疑惑が確信に近づいた。
─レン・メグリアーザ。あいつの息子だな、こいつは─
 そして、最後の一人。
その女が、長年の捜し物だった。
「私は、ミネルバ。ミネルバ・アランです」


(128)〜神の悪戯〜

「・・・・・・ってわけだ」
 墓を前に、膝小僧を立て、武術大会のコトを呟く。
目の前にある墓、『ゼフ・ラグランジュ』の名前の前にある、不自然なスペース。
─オレはいつになったら、ここに文字を書き込むことができるのだろう?─
 ガイゼルン帝国、この大陸では一番大きな国。
とはいえ、そこの武術大会に優勝しようと、名が轟くのはその大陸ないのみ。
 他の大陸には、ただそれとなくしか流れない。
─いつまでオレは、墓に向かって言ってるのだろう?─
 この一ヶ月、約一週間刻みで、この墓と向き合っている。
何度も何度も、同じ話ばかりを。
─オレはいったい、何を求めているんだ?─
 なにかが欠けている。
この一ヶ月の生活、そして、ゼフの墓に言っている話の内容。
 なにかが欠けている。
─封印、解くか─
 もう一人の人格。
あいつがいれば、欠けているモノが見いだせるかも知れない。
「サード」
 後ろから声がかけられた。
振り向かなくとも、声でわかる。
 第一、ここを知っている人間は、三人しかいない。
「ショウか、どうした?」
 立ち上がり、振り向いて、その顔を見る。
その顔に、オレは。今までにない深刻さを読みとった。

「どうした?」
 風が吹き抜けていった後、声を出す。
その声さえも、吹き抜けた風にもっていかれそうだ。
「おまえ、レン・メグリアーザを、知っているか?」
 記憶を探る。
一人、該当する人物がいたが、一字違いだった。
 だが、それ以外でも、聞いた覚えがある。
が、正確には思い出せなかった。
「いや、知らない」
「船長、クリス・メグリアーザの兄の名前だ」
 そう言われて、思い出す。
─ガイゼルンで、クリスと話した時も、聞いたハズだ
「んで、それが?」
「おまえ、この名前に似たヤツを、知っているな?」
 おかしい、とサードは思った。
─疑問形だけど、確信を持っている─
「あぁ、レイ・メグリアーザって。オレと一緒にガイゼルン大会に出たけど・・・。そいつが、どうかしたか?」
「それが、レン・メグリアーザの息子だ」
 沈黙が、その世界を支配した。
風の音さえ、その世界に立ち入ることは許されなかったのだ。
「おい、嘘だろ」
うっすら笑いを浮かべ、サードが言う。
「オレは冗談は言うが、嘘は言わない。それに、そんな嘘を言いに、こんなところまで来やしない」
「で、それが事実だとして。どうなる・・・」
「ミネルバ・メグリアーザ」
言葉の端を、ショウの言葉が遮る。
「船長の、昔の名前だ」
「それが・・・・・・!!!!」
 言いたいことがわかったような気がする。
ミネルバ・アラン。たしか、あの女がそういう名前だったハズ。
 それと、もう一つ。
思い出したやりとり。
─わたしたち、これでも姉弟なのよ。血のつながりないけど─
─姓が違うのはどういう理屈だよ─
─冒険者になるんだ!って親に言って、そんで、家出るときに、親に言われたの「おまえは儂の子供じゃない」ってね。んで、本当のお父さんの姓がアランだったから。ちなみに、レイとはれっきとした親子だからって─
 一日目、ブロック予選が終わった後。
あの時、帰り道のやりとりを思い出す。
 そして、その後の台詞も。
─お父さんの方は死んでるらしい。でも、お母さんのほうは生きてるらしいの─「ま・さ・か」
「おまえには前、話したよな。船長の過去」
 クリスが、ひとつの船を襲ったとき。
そこにいた男。
 鍛冶屋だったその男と、恋に落ちた。
だけど、その想いを伝える前に、男は─
「その時、その男─セイン・アランが、子供を連れていたんだ。女の子だったよ。そして、その女の子を、船長は自分の兄に託した」
「その子供が・・・」
「そう、おまえの知っているミネルバ・アランだ」
呆然と立ちつくすサード。
「確証は?」
「まだ、あくまで推測の域だ。だが、あいつらの父親の名前を聞けば、全てがわかる」
 口にする言葉がない。
この、神が仕組んだ悪戯が、こんな風になるだなんて。
「そうそう、伝言だ」
そう言って、ショウが背中を見せた。
「その、ミネルバから」
そして、歩き出す。
「おまえの山小屋で、話があるそうだ」


(129)〜雨が、やまない〜

 頭の中がグルグル回る。
─いっぺんすぎるや、知ったことが─
 クリスの話は、一応知っていた。
あいつ本人の口から、聞かされていることだ。
 あいつの愛した男の娘が、ミネルバ。
そして、あいつの兄の子供が、レイ。
 ミネルバは、レイと姉弟。
─つまり、ミネルバとレイは、甥と姪ってわけか─
そう考えて、もう一度考え直す。
─いや、違うか─
ショウの後ろ姿が、見えなくなった。
─ミネルバは、クリスの娘だ─
「セイン・アランさん」
顔も見たこともない相手の遺体無き墓に、語りかける。
「あなたの娘は、元気ですよ」
 それだけ伝え、家路に立った。
その時、雨が、降り出した。

「サード!!!」
「レイ、か」
 傘をさしているレイが、そこにいる。
あんなことを知った後だ。
 なにか、妙な感じがする。
「どした?」
「いや、ちょっと、な」
 嘘は苦手な方だ。
が、かわりに、曖昧なごまかし方を得意としている。
「姉貴が、呼んでる」
「さっき、ショウに聞いた」
それだけ言うと、歩き出す。
「あの、ショウって男。なんだ?」
「大丈夫だ。信頼できる人間だよ」
「ただ者じゃねぇな」
「ノーコメント」
 言うわけにはいかない。
それが、このケルアイニス自治領のルールだ。
「おまえが、ここに一生定住するなら、教えてもいい」
「ご冗談」
 この時は、サードも、レイも、予想できなかった。
この先、否応なしにこの自治領に定住することになるなど。

「あっ・・・」
「ケルン、か」
 山小屋に行く道中。
その入り口の所で、レイと別れたが、次はケルンと会った。
─そういえば、こいつとマトモに口聞くの、初めてかもな─
 くだらないことを思い起こす。
「あの、ミネルバが・・・」
「ショウとレイから聞いたよ」
「あの、ショウってかた・・・」
「だーいじょうぶだ。信頼できる人間だって」
 まったく、あいつと同じことを聞くなんて・・・。
と、思ったが、違うところを聞きたかったらしい。
「女嫌いなんでしょう?」
 意外な質問だ。
そう言えば、ショウが結婚している、ということを見たことも聞いたこともない。
 まして、あいつが口を聞く女は、クリスと、この自治領の女ばかり。
恋人どころか、女友達がいるとも聞いたことない。
─ま・さ・か、な─
「さぁ、オレも、知らないな」
 と、言いながらも顔が笑っていたのだろう。
どうやら勝手に納得したようだ。
「それで、サードさん」
「ん?」
「・・・いいえ、なんでもないです」
 そう言って、ケルンは走って去っていった。
もちろん、サードが歩いてきた方に。
─なんなだんだよ、いったい─
 これから、いったい何が始まるんだろうか?
そう、考え始めていた。

「あっ・・・」
 雨が、強くなってきた。
と、思った瞬間、1メートル先も見えないくらいの豪雨に。
「やっべっ」
 五秒ほどボーっとした後、走り出す。
一分ほど走り詰めたところで、山小屋が見えてきた。
「ハァッ・・・ハァッ・・・・・・ハァッ・・・」
 ドアを開け、急いで入り、そして、ドアを閉める。
その後、大きく肩で息をする。
「おかえりなさい」
「あぁ・・・!?」
 人がいる!と、思った時。
そういえば・・・と、思い出した。
「あぁ、ミネルバか・・・」
 暗い室内の中、ベットに腰掛けているミネルバ。
サードは、タンスからタオルを取り出すと、頭を拭き始める。
「んで、話って?」
 そのタオルを、ハンガーの一つにかけるサード。
いつもなら、魔法で乾かすところだが、他人の前では、魔法を使わないようにしている。
「あ、あの・・・」
 両手を膝の上でいじくる、いわゆるモジモジの体勢のまま、固まっている。
このシチュエーションを例えるなれば、朴念仁と恋する少女の図である。
「呼び出しておいて、そりゃないだろ。墓参りの途中だったんだから」
「その、墓参りって、誰の?」
 そんなコトを聞きたかったのか?
サードはかなり不思議そうな顔である。
「友人のだよ」
「本当に?」
─・・・・・・いったいなんだってんだ?─
「本当だよ」
「よかった・・・」
─なにがだ?─
 サードは心の底からそう思った。
この男ほど、鈍い男もいないだろう。
「で、話って?」
 刀の手入れでもするか。
そう思い、刀に手を伸ばしたサード。
 その手を、ミネルバが優しく包み込む。
『・・・・・・』

  サードの心の中        ミネルバの心の中  

─おい、なんだってんだよ─   ─うわ、やっちゃった─
     ↓                ↓
─いきなり手をつないで─    ─どうしよ、このまま、言っちゃう?─
     ↓                ↓
─な〜んだ?心臓が・・・─     ─ダメよ、絶対。おかしいもん、それ─
     ↓                ↓
─そりゃさっき走ったからな─  ─だからって、離すのも・・・─
     ↓                ↓          
─しっかし、ホント─      ─でも、それじゃあ─
     ↓                ↓
          ─どうしよう?─

「で、話って?」
あくまで天然な男、サード。
「あっ、いや・・・」
 手を離し、後ろを向くミネルバ。
しばらく、二人の間に、不自然な沈黙が広がっていく。
「おい、ミネルバ?」
 肩をつかむ。
それと同時に、ミネルバが振り向く。
 そして、彼の胸に飛び込んだ。
呆然とするサード。
 手を垂れ下げたまま、転けないようにバランスをとる。
「・・・ガ・・キ・・・」
「えっ!?」
 よく聞き取れず、問い返すサード。
そして、今度は、はっきり、こう聞こえた。
「アナタが、好きです」

 どのくらい時間がたっただろう。
サードが、彼女の肩をつかんだ。
 と、同時に、彼女を引き離す。
「えっ!?」
「悪いが・・・」
それだけ言うと、決まり悪そうに後ろを向いた。
「その返事、明日まで待って欲しい」
 後は、音だけが世界を支配した。
ミネルバが、ゆっくり歩いて、ドアを開け、そのまま出ていった。
 閉められていないドア。
そのドアから、雨が降り注いでくる。
 少しして、ゆっくりドアを閉めるサード。

            雨が、やまない


(130)〜決断〜

「ちっ・・・」
 小鳥のさえずりが聞こえてくる。
窓から差し込む光、それが、閉じている目をさす。
 上半身だけを起こすが、すさまじい頭痛と、貧血で、再びベットに身を預ける。
「ねっ・・・眠れねぇ」
 そのまま、五分ほど眠ることに集中する。
が、やはり眠れなかった。

「で、一睡もできなかったと」
 コーヒーが目の前に運ばれる。
それに砂糖を少しいれ、スプーンでかき混ぜる。
「あぁ・・・」
 少し冷ましてからそれを一気に飲み干す。
頭痛が少し収まった、と思う。
「そう悩むことなのか?イエス・オア・ノーと言えばいいだろう」
「あんなことを聞いた後に、か?」
 それで多少の苦笑いを浮かべるショウ。
椅子に座り、自分でいれたコーヒーを、味わいながら飲む。
「関係ないだろ。人の好き嫌いに、血縁関係が関わろうが」
「重大だろうが」
そこで、ショウが少し笑う。
「んだよ」
「いや、船長の時と、似ているな、と思ってな」
「あぁ!?」
「あの人も、そういう細かいところを気にしていた。自分は船を襲った船長。相手はその船にいた人質、ってな」
軽い調子で言う。
「で?」
「それで、一生後悔した」
さっきとは打って変わって真剣な声。
「だから、イチイチそういうコトを気にするな」
「それ以前の問題もある」
「どうした?」
「オレは、神獣と人間のハーフだ」
 それを言うと同時に、一つの疑問が浮かんだ。
─そう言えば、どうして・・・─
「邪魔したな」
 そのまま椅子を立ち、出ていこうとしたとき。
その後ろ姿に、ショウが声をかけた。
「おまえの後悔しない答え。それを見つけだせ」
それに、何もこたえずに出ていった。

「そういえば、どうして・・・」
 自分の小屋に帰り、そう思った。
─なんでオヤジとオフクロは、結婚したんだろう─
 当時、神獣と人間が平等だったことは知っている。
けど、結びつく必要はなかったハズだ。
 銀髪の、長い髪をなびかせる勇ましい父。
いつも、微笑みを絶やさず、見つめていた母。
─そんな印象しかないんだけど─
 ただ、微笑ましい夫婦だと。
そんなふうにしか思えなかった。
 何も知らない人間が見れば、普通の人間の夫婦に見えただろう。
─好きになるって、どういうことだ?─
 次に浮かんだのがその疑問。
人を好きになったことが、果たして、今までにあっただろうが。
 いや、あるんだろう。
ただし、愛とか恋とかじゃない、好意の好き、だ。
 ゼフからはじまり、クリス、ショウ、ジェームス、そして、この街の人々。
ラーガやレイ、ケルン。それに、あの武術大会であたったヤツら。
 ただ、ミネルバはどうなんだろう?
オレが、人を好きになる、人に恋する、人を愛する。
 そんなことが、あるのだろうか?
─親父たちは、いったい、なんで─
 また、その疑問にぶつかる。
人を好きになる理由、それは、いったいなんだろう?
 好きになるって、いったいどんな気持ちなんだろう?
これが好きって、どうやったらわかるんだろう?
 ぜんぜん、わからない。
─おまえの後悔しない答え。それを見つけだせ─
 ついさっき、ショウに言われた言葉。
オレの後悔しない答え、それは、いったいなんだろう?
 あいつを、好きかどうか。
イエス・オア・ノー
 自分が自分をわからなくなる。
それが、こんなに歯がゆいコトなんて。
 オレの、答え。
答えは・・・・・・。

               ─答えは、決まっている─

「レイ、そこにいるんだろ?」
「よく、わかったな」
ドアから悠々と入ってくるレイ。
「独り言、言ってるかと思ったけど。見当違いだったな」
「オレはそんな根暗じゃねぇよ」
「で、用件は?」
机の上に転がっているペンを取り、メモ帳にあることを書く。
「これ、ショウに渡しといてくれ」
「了解」
そのまま、出ていくレイ。
「これで、いいんだ。これで・・・」
ただ、それだけを呟いた。


 1999年12月20日(月)22時01分〜1999年12月29日(水)21時02分投稿の、誠さんの小説「闇を知る者」(121〜130)です。

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