(番外編・王子)1 告白して以来、彼女とは気まずくなった。 声をかけようと思っても、なかなか体が動こうとしなくて自分でも驚いている。 誰かに聞いてもらいたくて、パステルに話した。 ずっと昔から知っていて僕のお姉さんのようなシニアではなく。 彼女に少し似ているからかもしれない。 なんだか守りたくなるような、そんな感じが。 もう、諦めるしかないと思っている矢先にパステルが手紙を持ってきた。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――― アロウ王子様へ 今日 あなた様が告白してくれた場所でお待ちしております。 セティ ――――――――――――――――――――――――――――――――――― 短い文章につづられた思い。 期待と不安がこみ上げてくる。 もしかしたら……そんな考えが頭の中を駆け回っていて、いても立ってもいられなく なった。 きっと、今から行ってもまだ居ないかもしれない。 でも、じっとしてることも出来ない。 ハァハァ… 僕はあの場所へと行った。 彼女に告白した場所。 告白したあの日。 あの時の僕は胸をハラハラさせて、精一杯彼女に気持ちをぶつけた。 でも…その後の僕は、なかなか立ち直れなかった。 返事は、YES・NOどちらでも良かった。 ただ、泣いて行ってしまった彼女の姿に僕はショックを受けたんだ。 なぜだろう? どうして泣かせてしまったのだろう? そんな思いがまだ、僕の心の奥に残っている。 でも、嫌いにはなれなかった。 好きな気持ちの方が多くなっていく一方で。 彼女は僕を呼び出してどうするんだろう?
(番外編・王子)2 彼女を好きになったのは僕が15歳になる前だった。 今まで見たことのないメイドさんだった彼女に声をかけたのがきっかけ。 「君 見かけない顔だね。」 僕はそのメイドさんに言った。 彼女は僕の顔を見るなり後ずさりした。 「お 王子様!? 王子に声をかけてもらえるなんて光栄です。…わたしメイドとしては 今日が初めてで昨日まで調理場で働いていたんです。」 「えっ 前からいたの!? …ごめん 失礼なこと言ってしまって。」 「いえ いいんです。気にしませんから。わたし城の中で働けるだけでうれしいですから。」 そのとき笑った顔を見たとき…僕は彼女を好きになった。 でもその後 すぐ冒険者として旅に出たんだっけ。 1年間彼女に会えなかったときはずいぶん寂しかったな。 ガサガサッ 「誰!?」 「すみません。こちらから呼び出したのに遅れてしまって。」 彼女は僕が待ち続けていたセティだった。
(番外編・王子)3 「話って何?」 来たばかりの彼女にさっそうと聞いた。 「は はい! あの その…。」 「 ? 」 「わたし王子のこと好きなんです!」 僕は驚いていた。 彼女からその言葉が聞けるなんて思っていなかったから。 「本当に?」 確かめるように聞いた。 「…はい。」 「‥やったぁーー!!」 僕は彼女を抱き上げた。 「王子!?」 「 う うわぁ〜 」 彼女を抱きかかえたまま倒れてしまった。 「きゃ!」 「ご ごめん。大丈夫?」 「えぇ 大丈夫です。」 僕たちはそのまま見つめ合い、そして そのまま…自然に唇が重なり合った。 「…セティ。」 「…はい。」 「僕の花嫁になってくれないかな。」 「 !? …いいんですか?」 「あぁ 僕の愛する人は君だからね。」 「…分かりました。喜んでお受けいたします。」 僕の恋は実った。 でも僕の花嫁になりたいと集まった彼女たちには少し悪い気がした。 けれど 彼女たちにも運命の人が目の前に現れるはず。 ……僕みたいにね。 END
1999年7月21日(火)18時33分16秒〜7月31日(金)18時50分32秒投稿の、「今宵もすてきな城へ」番外編です。