(1) 「よぉ、オメーらその様子じゃ暇そうだな?」 道を散歩していた私たちにオーシが声をかけてきた。 「なんだよ、オーシ。おめぇ、ケンカでもうってんのか?」 オーシノ胸ぐらをつかんで、トラップガケンカごしに言う。 「ちょっと、トラップやめなさいよ。」 「チョウオ、とりゃっぷやめなちゃいよ。」 あたしは2人ヲ引き離すとトラップは「チェッ」と舌打ちをして、後ろ を向いてしまった。 「まぁ、トラップ。そんなにすねるなよ。」 フォローするクレイ。 「そうだ、そうだぜ、トラップ。そうすねるんじゃねーよ。オレがいい シナリオ教えてやっからよ。」 「エッ!?」 みんないっせいにオーシの顔を見てしまった。 だって、オーシがシナリオを教えてくれるなんてあるわけないじゃない。 「待ってくれ、オーシ。今のオレたちお金がないんだ。シナリオは買えな いよ。」 クレイが真面目に答える。 そういえば、そっか。シナリオって買わなきゃいけないんだっけ。 すっかり忘れてた。今のあたしたちじゃ、買えるわけないもんね。 「いや、金なんかいらねー。タダでくれてやる。」 えっ、今なんか耳慣れない言葉を聞いたよーな・・・ 「今、タダっていった?」 もう一度聞いてみる。 「おう、言ったぜ。タダって。」 「・・・・・・」 「えーーーーーーーーーーっ!!」 みんなが驚かないわけがなかった。
(2) 「オーシがタダでいいなんて・・。まさか、またヤバイクエストなんじゃない いでしょーね。」 おそるおそる聞いてみる。 「大丈夫だって、今度のはな。」 ほんとかなぁ。ちょっと心配。 「それで、どんなクエストなんですか。」 キットンがそう言うと、オーシが紙を一枚取り出す。 「これなんだが・・ある国の城に行ってもらいたいんだよ。」 「城?まさかモンスターが出る城とか?」 前にもモンスターが出る城なら行ったことがある。 「いや、違う。普通に人が住んでる城だ。」 「そんなとこ行ってどうするんですか?」 「いや、この城でやるパーティーに出るだけでいいんだよ。」 「ということは、パーティーに出るだけで金がもらえるんだな?」 「まっ、そうゆうこった。おいしい話だろ。」 うーん。たしかにお城のパーティーに出るだけでお金がもらえるっていうのは いいけど。なーんかあやしいのよねぇ。これは、よく考えてみないと。 「よし、その話のった!!」 あたしの考えよりも先にトラップがO.Kしてしまった。 もう、どーしてよく考えないかなぁ。 「じゃあ、やるんだな。くわしい事は、この紙に書いてある。あとは よろしくな。」 紙をクレイに渡すとオーシは街の奥へと行ってしまった。 「どうする?」 「どうする?って言われても。トラップがすぐO.Kしちゃうから・・。」 「行ってみてはどうですか?」 「えっ!?」 「パーティーに出ればお金がもらえるなんていう、いい仕事じゃないですか こんなに簡単なのは、のがす手ありませんよ。」 キットンに言われると、そーかなぁとも考えてしまう。 「そうだよ。あーだ、こーだ考えるより、そんな簡単なんだから行きゃー いーんだよ。」 結局、わたしたちは、この城へと行くことになった。 「へへっ、うまくいったぜ。」 わたしたちが帰ったあとのこのオーシの言葉を聞いていたら、 絶対、わたしたちは行かなかっただろう。
(3) 「へぇ、城のパーティーか。」 「おもしろそう!行ってみようかしら。」 ギアとマリーナにも一緒にって誘ってみたら、けっこう乗り気な2人。 「じゃ、2人共いくのね。」 「あぁ。」 「もちろん!」 そうゆうことで、8人と1匹は、城があるという「パレオ」という国へ 行くことになった。 けっこう遠くて、乗り合い馬車だけだとお金がかかるので半分は歩いて 行くことになった。だって、パーティーに行って、いくらお金がもらえ るか分かんないもんね。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「ちょっと、ここらへんで一休みしようか。」 みんなこの意見に賛成。ずっと歩きっぱなしで足が棒になっちゃってる。 うーーん。はねを少しのばさないと体が痛い。 ガサガサッ んっ?なんか今、変な音がしたような… 「ね、なんか変な音しなかった?」 「いや、しなかったけど。」 ガサガサガサッ 「!!」 今度は、はっきり聞こえたので音のするほうへ振り向いてみると、 赤いものが光っている。 もしかして……モンスター!? 「ねぇ‥あの赤いのなんだろう…」 静かに聞いてみる。 「ほんとらぁ、あきゃいのひかってうよう。」 「なんだって。パステルどこだ。」 「ほら、そこの草木のとこ。赤い光があるでしょ。」 「モンスターか?」 「分からないけど‥‥みんな下がっていて!」 そうクレイが言うと、ノル・ギア・クレイの3人が前に出る。 どんなモンスターなのか、よく見えない。けれど、近づいているのは わかる。 「来るぞ!!」 あと、3m、2m、1m………来た!! 「シュルウーーーーーーー」 ガキィン、ガキィン! 剣を振り回す音がする。3人がかりでも、ビクともしない。 「こいつには、クッ‥剣がきかない!?」 そういいながらも必死に守ろうとしている。 こっちでは、キットンがモンスター大辞典で探しているけどまだ見つか らない。 「キットン、まだ?」 「えぇ、まだですぅ。えーと、えーと、あ、あった。ありました。 ええと、そのモンスターには剣はききません。なにか攻撃魔法でないと。」 「じゃあ、ルーミィの魔法がたよりなのね。」 「るーみぃ、まほうつかえゅよ。」 と、そこでキットンが大きな声で叫ぶ。 「あぁーーー、ルーミィじゃ無理ですぅ。レベル6以上の魔法じゃないと きかないんです。」 遠くからパチンコ玉で攻撃していたトラップがキットンからモンスター 大辞典を奪い取ってよく見る。 「なんだよ、それ。それじゃルーミィのは無理ってことか?」 「さっきから、そう言ってるじゃないですか。」 「おおーい、どうでもいいから、早くしてくれえー。」 ちょっと、情けないクレイの声がする。 そんなこと、言われても‥‥どうすることも、できなかった。 いつもなら、どうにかしてしまう、わたしたちだけど 今回はどうすることもできない。 ここで、このモンスターに殺されてしまうの?
(4) 「アウーメラインホウロウルイナア ファイヤーー!!」 どこからか声がしたと思ったら、モンスターにものすごい炎が 飛びかかっていった。 モンスターは悲鳴をあげている。 そして、そのモンスターは燃え、黒いコゲ跡が残っている。 でも、さっきの声、たしかファイヤーの呪文?どこからだろう? 「すっげー、コゲ跡しか残ってないぜ。」 「ふぅ、助かったな。」 クレイたち3人はぐったりと座り込む。 「でも、今の‥‥」 「ファイヤーだったよな?」 「うん、ファイヤーだった。でも、ルーミィじゃないわよね?」 みんな頭を悩ませていると 「ピンポーン♪今のは私よ。」 どこからともなく聞こえてくる声。 「そこにいるんだろ?出てこいよ。」 ギアは知ってるみたい。 「ばれちゃったか!」 そういって出てきたのは、とてもキレイな女の子。見た目だと20歳 くらいかな。クレイ・トラップ・ノル・キットンとみんな目が大きく なっちゃって……。そりゃ、女のわたしでも見とれちゃいそうにキレイ。 「やっぱり、おまえだったのか。シニア。」 「どうして分かった?」 「あんなに威力のあるファイヤーは、おまえぐらいしか出さないからな。」 ギアとその女の子は、たんたんと話していく。 なんか、2人の世界にいってるような‥‥。 あれっ?なんか胃のあたりがムカムカしてきた。 どうしてしまったんだろう。わたしは‥‥。
(5) うすいグリーンの長い髪。白い肌に水色のロングスカートがよく似合って とてもキレイな彼女。いったい、誰? 「2人共、知り合いなの?」 マリーナが聞く。 「あぁ、紹介するよ。こいつ、シニアっていって幼なじみで魔法使い なんだよ。」 幼なじみ……だからかぁ。こんなに仲がいいのは。 でも、やっぱりみんないるんだなぁ、幼なじみ。 クレイ・トラップ・マリーナも仲がいいもんね。 うっ、なんかやきもちやいてるみたい‥‥もう、なに考えてるんだ ろう、わたしってば!! でも、キレイなうえに魔法使いかぁ。たしか魔法使いは、なれる人 少ないんだよね。わたしなんて、魔法どころか魔力がないし‥。 「シニア・R(レイジィー)・エリーといいます。よろしく!」 にっこり笑う彼女を前にわたしは言葉をなくしてしまった。 なんかうしろに『花』が出てきそう…。 あー、クレイやトラップたちの鼻の下がのびてきちゃってる。 もう、みんな美人に弱いんだから!! 「でも、こんな所を歩いていたらモンスターがたくさん出てくるわよ。」 「そうなんですか!?……なにも知らなくて。」 わたしがショボンと気を落とすとギアがやさしく声をかけてくれる。 「気にすることないよ、パステル。」 そう言ってわたしの肩に手をのせた。 ドキンッ!! ひゃー、ギアの手が肩にぃーー。 ギアから「好きだって」言われてから、どうも意識しちゃって…。 うーっ、顔が真っ赤になっちゃう。うぅっ、気ずかれないようにしないと。 「でも、シニアがここにいるってことは‥。あれもあるんじゃないのか?」 なんだろう、「あれっ」って?? 「もちろんあるわよ。……そうだ、乗ってく?」 乗る?乗るって、何に乗るの? 「そうだな。乗っていこうかな。みんな乗っていけるかな?」 「大丈夫よ。じゃ、ちょっと待ってて。」 彼女はそう言うと奥へと行ってしまった。
(6) ウィーーン。 「おまたせ、さぁ乗って。」 そう言って現れた彼女が持ってきた物は、なんかすっごい大きな乗り物。 「すっげー、でっかいなぁ。」 「本当ですねぇ。何で出来てるんでしょうか。」 みんなペタペタとその乗り物に触ってみる。 色はきれいな青。でも、キットンの言うとおり何で出来てるのかな? 今まで見たことない物。 「ほら、みんな乗って。」 なんか入り口(?)みたいなところへ入っていくと‥‥。 わたしたちの前には、見たことのないものがあった。
(7) 「うわぁー、なんかすごい……!!」 みんな目を丸くしてしまう。なんか細かい物がたくさんあって、ボタン らしきものがある。 「びっくりした?これはね、『キカイ』っていって、私が作ったの。」 キカイ?初めて聞くなぁ。 「これ、シニアさんが作ったんですか。すごいですねぇ。 ‥‥‥本当にすごいですよ!!」 キットンがこんなに誉めることはなかなかないような気がする。 『作る』ことに関しては、やっぱりキットンは興味があるみたい。 「ほんとらぁ、すゅごいたくさぁんあるゅよぉ。」 「ほんとデシ。たくさんあるデシ。」 と、みんなベタボメ。シニアさんもさすがに照れてるみたい。 ちょっと、耳が赤くなってる。 あはは、かわいいなぁ。 「シニアは、研究者でもあっていろんな物を作ってるんだよ。」 ギアが説明する。 「この乗り物はシニアが初めて作った作品だったよな。」 「えぇ、そうよ。乗り物はもちろんのこと、武器・防具・魔法、あと アクセサリーとか作ってるけど。今では人に頼まれて作るほうが多いかな。」 うぅっ、なんて人でろう。女の子は女の子でも全然違うなぁ。 「あっ、じゃあオレになんかこう、かあいーアクセサリー作ってくれます?」 なんてトラップが言うもんだから、みんな大爆笑!! 舌とペロッと出すトラップ。 「お調子者なんだから!」 トラップの頭をポカッと叩くマリーナ。 「いってーー。なにすんだよマリーナ。」 あらら、ケンカが始まっちゃった。 「あの2人、仲がいいのね。」 シニアは、うらやましそうに見てる。 でも、トラップはマリーナのこと想っているみたいだけど、マリーナのほうは……。 前に話をしたとき、トラップには眼中がないみたいだったし。 うーん、そうなるとトラップがかわいそうかも。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ わきあいあいとなったわたしたちは、それからいろいろと話して 結局、一晩が明けていた。
(8) 「じゃ、出発するね。」 「あ、お願いします。」 ちゃんとかしこまるクレイ。リーダーであるあけ礼儀はしっかりしてるのよね。 「うふふ、そんなに堅くならなくてもいいって。名前もシニアでいいし。 あっ、そうだ。みんなどこへ行くの?送っていくわ。」 「いえ、そんないいですよ。この森だけで。」 「いいの、いいの。ギアもお世話になってるし、そのお礼と思って!」 なんかお世話してるっていうより、お世話かけちゃってる気がする。 「じゃあ、すみません。お言葉に甘えて。『パレオ』という所まで。」 「パレオ!?あなたたちパレオに行くの?」 なんかびっくりしてる。そんなにびっくりすることかなぁ。 「はい…そうですけど。」 「…………今はあんまりおすすめできない所よ…。」 ? おすすめできないところ?いったいどういうことなの?
(9) 「あまりおすすめできないってどうゆうことだ?」 ギアが聞くと、シニアが語り始める。 「……おすすめできないってわけじゃないの。普通の国よ。ただ、今だけなのよ。 パレオは今、きっと女の子たちでうめつくされてると思うの。なぜかっていうと パレオ城の1人息子の花嫁を募集してて、それをねらって来る子たちがみんな 集まってきてるわ。まっ、実をいうと私も行こうかまと思ってたんだけどね。」 は、花嫁〜〜!!それも募集?? お城の1人息子かぁ。そりゃ、なれたら玉の輿よね。 「おい、シニア。おまえ、そ、そいつ花嫁になりたいのか!?」 なんかあわててるギア。 「ま、まさか。違うわよ。その花嫁になるにもいろいろと条件があって、その条件 をクリアしていくごとにお金がもらえるらしいから、いいチャンスだと思って。」 「でも、わたしたちも城へ行くんですよね。もしかしてこの城のことをいってるのでは ないでしょうか?」 キットンに聞かれて考えると、『城』だけでわたしたちよく聞いてないのよね。 「で、でもほら。この紙にはそんなこと書いてないし。」 紙を取り出すとシニアがじぃーと見てる。 「これよ。たしか!!花嫁募集のチラシ。でも、肝心なところが切り取られてる けど‥‥。」 わたしたちはこれを聞いてあぜんとする。 「く〜っ、あんのオーシのやろぉ、だましやがったな!!」 トラップはくやしそうに言う。 「はぁ〜……しょうがないさ、トラップ。だまされたオレたちも悪いんだし。でもこうなっ てからだ、行ってもしょうがないし、帰るしかないか。」 ため息をついて『あ〜あ』という感じのクレイ。でも、しょうがないよね。こう なっちゃったら。でも、1人違う意見を言う人がいた。 「ねぇ、ここまで来たんだし。行ってみない?」 それは、マリーナだった。
(10) 「どうゆうことだ、マリーナ。」 「だから、行ってみてもいいんじゃないかしら?別に花嫁にならなくてもいいんでしょ。 条件をクリアすればお金が貰えるなら、どんどん条件を‥」 マリーナの口をふさぐようにトラップが口をはさんだ。 「お金がガッポリ貰えるわけだ。」 「その通り。ここに女性は4人。でもルーミィは無理だから、3人ね。パステル・シニア そしてわたし。3人がどんどんクリアすればいいのよ。だから、行ってみない? って言ってるのよ。」 みんなを見回して 「みんなの意見を聞かせて。」 マリーナがみんなに聞く。 「オレ、いいと思う。」 と、ノル。 「そうですね。わたしも賛成です。」 と、キットン。 「金がガッポリっていうのには賛成だぜ、オレも。」 と、トラップ。 「るーみぃもいいおう。」 と、ルーミィ。 「ボクもいいデシよ。」 と、シロちゃん。 「あぁ、オレもだ。」 とギア。 「わたしも…マリーナのことだもん。大丈夫だよね。」 と、わたしが言うと最後にクレイが重い口を開けた。 「しょうがないか。みんな行くっていってるし。オレも……賛成だ。」 みんなの意見は『行く』ことに決定!! そしてわたしたちは今度こそパレオへと行くことになった。
1998年4月28日(火)00時08分42秒〜5月10日 (日)10時53分23秒投稿となっている、みすなさんの長編です。オーシの斡旋した仕事だというのがいかにも「らしい」ですね。