「氷晶石の謎」
そのいち
「マーリンさーん!」
「おお、待ちかねたぞ!フロスト・アイスツァプフェン君!」
ここはシルバーリーブ。「嵐」が過ぎ去ってから数日。魔道士/錬金術師のマーリン・
クロスロードが待ちに待った人物が現れた。助手のフロストである。
「まったく、君がくるまでにひどい目にあったよ。道には迷うわ黒焦げにはされるわ……。
まあいい。君がくれば多分道には迷わんだろう。念のために聞くが、バンホウはもって来
たな?」
「はいー!……ところで、黒焦げというのはー……?」
「……聞くな……」
黒焦げ事件は例の「嵐」の副産物であることは言うまでもない。そして、マーリンは強
度の方向音痴だったりするのだった。助手がいないと彼は未知の土地を歩けないのである。
助手は皮肉なことに方位磁針並の方向感覚をもっていたりするのだった。
「ま、腹ごしらえでもしてから行くか」
「そうですねー。もう日も高いですしー」
二人が向かったのは、例によって猪鹿亭。空掘は既に埋められている。
猪鹿亭は混みだしちょっと前といった時間帯。
「あら、お出かけ?」リタが聞く。
「うむ。やっと出発できるようになったのでな」
「ねえ、どうして今日まで出発しなかったわけ?」
「……秘密だ(方向音痴なんぞ言えるか)」
秘密の多いやつである。リタはちょっと不満そうな顔をしたものの、別のお客の注文を
取りにそのまま行ってしまった。
「ところで、今回の目的というのは何ですー?僕はまだ聞かされてなかったと思うんです
がー……」
「氷晶石だ」
「えー!」
氷晶石は氷がある作用で溶けなくなって鉱物化したものである。極めて珍しく、氷系の
魔法アイテムを研究するには欠かせないものであり、またアイス・ゴーレムの原料の一つ
でもある。
「しかしなぜこんなところにー?」
「神話級の時代、この辺りはテラソン山からの氷河に覆われていたという古い文献を見つ
けてな。そのころの氷が鉱物化して残っているのだ。おそらく……」
「ご注文は?」
「おお、忘れてた。Aセット1つずつで……いいな。それとアイスティー」
「僕はアイスコーヒー」
リタはメニューをもって奥へ行った。
「……話の腰が音を立てて折れてしまったが、とにかく、おそらくこの辺りに氷晶石が眠
るダンジョンがあるはずであると、そう判断したわけだ」
「へえー……で、そのダンジョンは見つかったんですかー?」
「うむ。この辺りの猟師が妙に寒いダンジョンを見つけている。その場所を地図にしても
らった。ズールの森の東側らしいな。中は不気味だったから確かめてないそうだが、おそ
らく間違いないであろう」
「はー。それでー、どれだけの日数かかりますかねー?」
「そうだな、場所もだいたいはっきりしてるようだし、そんなに長くはかからんだろう」
「そうですかー。なら、彼女にあまりさみしい思いをさせなくてすむかなー」
「彼女……」
マーリンには彼女なんていたことはない。期間延長したろかと、そのとき思った。
ちょうどいいタイミング。リタがトレイをもってきた。
「はーい、Aセットとアイスティー、アイスコーヒーだよー!」
さてその日の昼過ぎ。キャンプ道具やらなにやらを買い込んだ二人はさっそくズールの
森へ旅立った。その日の夕方ごろにはズールの森入り口についた。そこで一泊。地図によ
ると、あすあさってにはダンジョンに着けるであろう。
その夜。フロストは叫び声で目が覚めた。
「ちくしょー! 不意打ちなんてひきょーだぞー!」
「何事ですかー!?」
「……ぐーぐー……」
……寝言らしい。寝鼻を起こされたフロストは、むっとしてマーリンにさるぐつわをか
ませた。
明くる朝。
「む? むぐむぐ? むー!」
がばっ
「はー……はあ……はあ……フロストー!何をするー!」
「あ、お目覚めですかー」
「お目覚めですかーじゃないだろ! 貴様、何ゆえさるぐつわなぞかます!?」
「あれ、鼻をつまんだ方がよかったですかー?」
「そうゆう問題じゃないだろ!」
「あっはっは、冗談ですよー、冗談ー」
「きぃさぁまぁー!」
朝っぱらから追いかけっことは、元気なやつら。
「はあはあ……こんなことしてる場合じゃない。早くダンジョンに行かねば」
「そうですよー。ったくおこりっぽいんだからー」
「あんなことされりゃだれだっておこるわ!」
とにかく、朝食をとった二人は街道沿いに北に向かった。
そのに
昼前。彼らは突然小モンスターの群れに出会った。
「どわはー! 何じゃこの量は!」
「これが冒険時代に載ってた小モンスター多発地帯ですねー。パステル・G・キングの小
説のー。いやー、感動だなー」
「のんきなことをいっとらんと手伝え! くそっ、ブリザードリィ!」
一部は氷づけ。でも、この量じゃ焼け石に水。
「くそー! だめだ! 逃げるぞ!」
「はいー! こっちですー!」
ショートソードを振り回しながらフロストが指差した。小さな獣道が続いている。
走ること数分。やっと振りほどいたようだ。泉がある。調べていたフロストが、
「やっぱり予想どおりだー。これー。様見の泉ですよー」
「ほう。過去か未来が見えるという、あれだな」
「はいー。キングの小説に載ってたやつですー」
マーリンはさっそくのぞきこんでいる。
「ぐげ……」
「どうしたんですー?」
「こ、このわたしが……吹雪にやられる?」
マーリンは寒さにはわりと強い。それはフロストも同じこと。かわりに二人とも熱が苦
手。
「えー?どうしてですー?」
「わからん……ただ、吹雪にやられてぼろぼろだった……」
マーリンは何か釈然としない思いで泉の台座を見ている。
「今度は僕ですねー」
続いてフロストがのぞきこむ。
「どうだ?」
「やー、彼女と一緒でしたー」
あーそうかいそうかい……マーリンはちょっとむっとした。
「……まあ、不気味ではあるが、いつのことかはわからんわけだし、気にするのはよそう。
ところで、そろそろ昼飯にしないか?」
二人はスープを作り、たき火でパンを温めた。しかし……。
「……」
「……」
二人は様子を見ている。二人は強度の猫舌なのだ。そのうち十分冷めたのか、どちらか
らともなく食事が始まった。
「さて、あとどれくらいだ?」
「えーっとー、今ここだからー、目的地がここでー、もーすぐですねー。こっちのほうで
すー」
フロストは西側を指差した。
食事が終わり、ざっと周りを見て回った後(マーリン「見聞を広めるのだ」)、
「こっちだったな」
「マーリンさーん、そっちー、ヒールニント温泉ですよー」
「あ、あれ?」
マーリンは某マッパーを上回る方向音痴だ。
「いまさらですがー、しっかりしてくださいよー」
「うーん、周りがどうも同じように見えてな……」
とにもかくにも、二人はその日の午後、目的地のダンジョンに到着したのであった。
そのさん
ダンジョンの入り口。けっこう狭い。
「まあ、これだから今まで見つからなかったんだろうが……。厳しいな」
ちょうど人一人分くらいの幅しかないが、中から確かに冷気が漂ってくる。
「よし、フロスト君、ポータブルカンテラをつけて、君が先に入るのだ。マッピングも忘
れるなよ」
「はいー、承知しておりますー」
「あ、いい忘れたが……」
ばさばさばさっ
「うわー!」
「コウモリには注意しろよ」
「もー。もーちょっと早く言ってくださいよー」
マーリンも額に巻いているバンダナの中央の宝石(トパーズか?)にライトの魔法をか
ける。宝石は明るい黄色に光りだし、ちょうどヘッドランプのようになった。
そして二人はダンジョンの中へと入っていった。
中は完全に自然のダンジョン。ときどき枝分かれがあるもののそれはかなり狭い。宝箱
もあるはずがない。まああったところで、盗賊の心得がない二人にはどうすることもでき
ないが。あと変わっているといえば……。
「壁にも床にもー、一面に霜が降りてますよー。それにー、だんだん気温が下がってきま
したねー」
ポータブルカンテラに照らされて、壁や天井が黄色く光る。
「うむ。やはりこの中には氷晶石が眠っているはずだ。氷晶石は周りの温度を下げる働き
があるというからな」
少しずつ広くなってきて、二人並んで歩けるようになった。上では突然の光に驚いたコ
ウモリたちが舞っていて、ちょっと騒がしい。
霜もだんだん深くなってきた。歩くとさくさく音がする。
ここで二人は奇妙なものを見つけた。
「これー、コウモリの氷づけですよー。しかもー。わりと新しいですねー」
「うーん。ちょうど吹雪系の魔法にやられたような感じだな。どういうことだ?」
「そうですねー。凍死したにしては氷がやたらついてますしー」
マーリンはなんだかいやな予感がした。しかし、ここまで来て何もせず帰るというのは
彼のプライドが許さない。とりあえず先に進むことにした。
この辺りになるとさしものマーリンにも寒さが身にしみてきた。道はこの先で大きく右
に曲がっている。周りは霜というより氷で覆われている。二人は慎重に先に進んだ。
突然、
「うわ!」
すんでのところで躱したが、マーリンのすぐ上を吹雪が通り過ぎ、髪の毛が少し凍って
しまった。
「あ……あれはー?」
フロストがかすれた声で(でも語尾を延ばすから緊張感はまるでないぞ)言う。
「アイス・ゴーレム……いや、アイス・サーバントか?」
それは全身氷のようなものでできた、一見ゴーレムのような人型のものであった。
そのよん
「それ」は少しずつ近づいてくる。二人は動けない。
そのとき、コウモリか一匹迷い込んできた。次の瞬間。
しゅぱー☆
「それ」は口にあたるところから吹雪を噴き出した。
コウモリに当たり、コウモリは氷づけになる。
「あ……あれがさっきの……あれか……」
「そーみたいですねー……」
しかしそこは洞窟の一番奥。氷もこの辺りが一番多い。氷晶石が眠っているのもここだ
ろう。
「行くしか……ないか……」
「そーみたい……ですねー!」
「よし……行くぞ!」
二人はいっせいに攻撃を開始した。フロストはショートソードを振りかざす。マーリン
は小手調べに……。
「チルトウェイト・コールド!」
全く効かない。
「やはり……なら……これはどうだ!」
マーリンは呪文を唱える。フロストの攻撃が命中した。しかし、
「だめですー! 全く効きませーん!」
「下がってろ! ナイト・オヴ・ダイヤモンドダスト!」
マーリンの杖の先のアクアマリンからすさまじい量の細かい氷が噴き出す。一面真っ白
になり、さらに寒くなったようだ。「それ」もさすがにその圧力には耐えられなかったか
数歩後退した。しかし、ダメージを受けた様子はまるでない。
「それ」は吹雪を吹いた。二人とも何とかこれを躱す。「それ」は動きはそんなに素早
くない。
「でもこれー、どうやって倒すんでしょー? 氷には炎ってよく言いますがー……。でも
僕ー、マーリンさんが炎系呪文を使ってるとこ見たことないんですけどー」
「……」
マーリンは答えない。吹雪攻撃は絶え間無く続く。そしてとうとう……。
「うわはひゃー!」
フロストが吹雪を避け切れず、もろにくらってしまった。フロストは全身を霜に覆われ
て倒れた。
「フロスト君!」
「うーんー……見事な攻撃だあー……ダイスが回りましたねー……がくっ」
「……ばかなことを言ってるようじゃ死なないな……。ちょっとある意味やばい気もする
が……」
その時。
「しまった……おわはー!」
フロストに気を取られていたマーリンを吹雪が襲う。かろうじて倒れはしなかったもの
の、全身霜と氷に覆われてぼろぼろだ。
「くっ……ここで倒れるわけにはいかん……。氷晶石を目の前に……」
ふとマーリンはフロストの言葉を思い出した。
『氷には炎ってよく言いますがー……』
「いちかばちか……やってみるしかないか……」
マーリンは何とか杖を構えた。そして呪文を唱え出す。
「ドゥルミィルファイルゥンエセンパサンガイラァ……」
「それ」は目の前に立つものを倒そうと、近づいてくる。吹雪を吹こうと、口を開けた
瞬間。
「デス・マス・ファイヤー!」
アクアマリンが耐え切れずに砕け散る。出てきた炎を見て、マーリンは愕然とした。某
小説家の表現を借りれば、『バーベキューかなんかをするんだったら便利ね』という炎。
「だからわたしは炎系は苦手なんだー!」
声には出さないで叫ぶ。マーリンはほとんど絶望した。
その炎がヘロヘロォっと「それ」に届く。
パキーン……
パキパキーン……
パキパキパキパキパキパキ……
マーリンは呆然としてしまった。「それ」に炎が当たった瞬間そこにひびが入り、そし
てひびは「それ」の全身に広がってゆく。そして、
ガゴーン……ガラガラガラ……
「ほんとかよ……」
「それ」はあっさりと粉々になってしまった。よみがえってくる様子もない。
キンキンに冷えたガラスのコップに熱湯を注ぐとコップが割れることがある。それと同
じことが、全身氷製の魔法生物に起こったのだ。
マーリンはその残骸を横目に見ながら、奥へと進んで行った。
そこには、白いが周りの氷とは明らかに違う石があった。大きさこぶし大の角張った石。
「これが……そうなのか?」
予想以上に小さい。鉱物化する前に大部分が溶けたのか、それともこれに凝縮されたの
か。いずれにしてももっとたくさんあることを予想していたマーリンは、ちょっとがっか
りした。
その石に触れる。冷たくない。マーリンは手にとって、呪文を唱えてみた。
「チルトウェイト・コールド!」
とたん、すさまじい吹雪が石から噴き出る。
「すさまじい増幅効果だ……間違いない!氷晶石だ!」
そのご
倒れているフロストと自分にヒールの魔法をかけ、二人はダンジョンを後にした。外は
すっかり夜になっている。
「……そうだったんですかー」
気を失ってからのいきさつを聞いたフロストがつぶやく。
「だから炎系を使わなかったんですねー。あーあ。アクアマリンが砕けちゃってー……」
「まあ、研究所にストックはあるから、またはめ込めばいい。それより、やっぱり今度か
ら炎系のためにルビーの指輪でももって行かないとなあ……」
「でもー、何であんなところにクリーチャーがいたんですかねー?」
「さあ……誰か魔道士がいた様子はなかったし……。もしかして……自然発生か?」
「はー? そんなことがあるんですかー?」
「……おまえ、人のことばかにしてるだろ」
「そーんなつもりはないんですけどー」
「やっぱりばかにしてる……ま、それはとにかく。氷晶石は長い年月で魔力を帯びる。そ
の魔力がどんなふうに働くかは環境によるが、このダンジョンではサーバントを作るよう
に働いたんだろう」
「というとー……」
「あのダンジョンは地下水が豊富らしいから、それが関係しているのかもしれんな」
「はー……」
「ま、それはとにかく、今日はもうキャンプして、あした出発しよう。フロスト君、食事
の用意を頼む。わたしはしばらく寝て、魔力を回復させるから、できたら起こしてくれ」
「はいー、わかりましたー」
次の日。二人はダンジョンを後にした。
その数日後、氷が溶けたことによってダンジョンが崩れさったことを二人は知らない。
また、マーリンの背負い袋の中で氷晶石が魔力を発揮して……。
「おおっ! 中が氷だらけだ!」
……それはおいといて。二人はシルバーリーブへの帰途についた。
そのろく
二日後。南へ向かう森の中の街道。
「シルバーリーブに帰って、そこから乗合馬車でエベリン経由ストーンリバー……っての
が、妥当な線だろうな」
「砂漠を直接越えるってのはー?」
「……おまえ、そんなに体力に自信があるのか? それに、いくらわたしでもバジリスク
はいやだぞ」
「あーあ。ちょっとでも早く帰りたいのにー……」
「逆に遅くなると思うが」
そんな会話をしていたとき。
がさがさっ
がさがさがさがさっ
がさっ
「げ!」
突然目の前に現れたもの。それは、ゴブリンの大群。出合い頭になってしまった。
もちろん、戦闘になる。
「フロスト君! なんとか時間を稼げ! 氷晶石を出すまでだ!」
マーリンは言うと、後ろに下がって氷晶石を取り出そうとする。
「んな簡単にいわないでくださいよー」
フロストは文句を言いながらもショートソードを振り回す。でも多勢に無勢。だんだん
下がってくる。傷を負わなかっただけでもたいしたものだ。
「あった!」
マーリンは氷晶石をつかみ出すと、
「伏せろ! チルトウェイト・コールド! チルトウェイト・コールド! えーい、チル
トウェイト・コールドォー!」
コールドを連発する。ゴブリンどもはどんどん氷づけになって行く。さすが増幅されて
いるだけあって、その威力はすさまじい。また、魔力の消費も少ない。マーリンは調子に
乗ってコールドを連発した。すると……。
「うきゃきゃきゃきゃ!」
突然、吹雪の中から身長60センチくらいの小さいアイス・サーバントが現れて、笑い
ながらゴブリンを蹴散らし、一直線に南に走りだした。
「くぁっくぁっくぁっくぁっくぁ、かかかかかかか……」
「あれ、なんですかー? そんな呪文を唱えたんですかー?」
「し、知らん……。コールドしか唱えてないはずだが……」
ゴブリンどもはしばらく呆然としたあと、一目散に逃げて行く。
「あはははははははは……」
「なーにが楽しいんですかねー? それはとにかくー、このまま一直線だとー、真っすぐ
シルバーリーブですねー」
シルバーリーブまであと歩いて数時間。そいつは木をなぎ倒しながら一直線。走る速さ
はそんなでもないけど、パワーがすごい。
「い、いかん。それではシルバーリーブの皆さんに迷惑をかけてしまう。とりあえず、追
いかけよう!」
でも、街道は曲がっているけどそいつは真っすぐ進む。どうしても追いつけない。
とうとう、そいつはシルバーリーブに突入した。
「くーっくっくっくっく……」「うわー!」「きゃー!」「何じゃこりゃー!」村の人々
の悲鳴が聞こえだしたとき、やっと二人が村に到着したが、時すでに遅し。
壊れた柵
なぜかミケドリアには当たらず、小屋の人型の穴
そこから見通せる穴、穴、穴計18個
騒ぎで卵を生まなくなっためん鳥2羽
逃げ損ねてぎっくり腰1名
逃げる途中転んで軽傷を負った者4名
騒ぎで階段から落ちて気を失った者1名
その他、壊れた屋台、落とした食品、汚れた洗濯物など被害多数(シルバーリーブ駐
在所調べ)
直接的な人的被害がないのが不思議なくらいの大混乱になっていた。
そのアイス・サーバントは、シチューを出前に運ぶ途中のリタの近くを通ったとき、驚
いたリタが撒いたシチューをかぶって粉々になっていた。
二人はそーっと大混乱の村をまわる。
「こ……これはー……やばいんじゃないですかー」
フロストが小声でつぶやく。
「これは……どうしようもないな……」
たしかに、これは自分が原因だとは言い出せないし、言い出したら最後どんな目にあう
か。また、自分でも信じたくなかった。
「そーっと逃げましょーかー?」
「うむ。わたしもそれを考えていた……」
そして二人は、最終の乗合馬車に飛び乗り、さっさとエベリンへと去って行った……。
そろそろ夏のシルバーリーブに夕方のはだ寒い風が吹きわたっていった……。
END
1998年6月10日(水)13時01分53秒〜6月24日(水)17時00分49秒投稿になっている、わたしの初めての中編です。(規模的には短編といったほうがいいのか?)
助手のフロスト初登場作です。マーリン君も錬金術師をちゃんとしてますね。この性格、多分にわたしを反映してるような気が……。
「Merlin
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